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[HQR24-08] 2011年東北地方太平洋沖地震時の液状化-流動化現象解明のための地層断面調査 -人工地層の地質構造とメカニズム
キーワード:液状化-流動化, 2011年東北地方太平洋沖地震, 東京湾岸埋立地, 人工地層, 地層断面調査, メカニズム
2011 年3 月11 日に発生した東北地方太平洋沖地震(Mj.9.0)とその余震では,東京湾岸埋立地北部において,局所的に著しい液状化-流動化現象が発生し,最大で約1mの地表面の沈下が発生した.このような大きな沈下は,幅10~50m,長さ20~100mの局所的な範囲で発生し,大量の噴砂・噴水を伴うものの,その周囲は大きな沈下がみられず,あっても数cm程度で噴砂・噴水もほとんどない.このような局所的な液状化-流動化現象が埋立地内にコントラストを持って斑状に分布した(千葉県環境研究センター地質環境研究室,2011).このような局所的な沈下を伴う斑状分布をする液状化-流動化現象は,少なくとも1983年日本海中部地震以降に国内で発生した強震時の液状化-流動化現象ではみられていない.このため,このような現象がどのような地質環境条件のどのような部分で発生したのかを明らかにすることは,同様な工法で広範囲に埋立てられた東京湾岸埋立地における今後の持続的な土地利用を行うにあたり,液状化-流動化現象の予測・予防方法の考え方,あるいは液状化-流動化現象の利用・新たな土地の利用方法の検討を考える上で,まず最初に必要なことである.今回の調査は,千葉市美浜区の公立高校内において液状化-流動化現象に伴い局所的に沈下した部分において,沈下がわずかしかない部分から,大きく沈下部分にかけて3~5m間隔に深度4.5~7mまで地層を乱さず採取し,沈下様式と人工地層の地質構成の側方変化および液状化-流動化部分の関係を検討した.本調査にあたり,事前に斜面調査用簡易貫入試験を2側線において1~2m間隔で行い(亀山ほか,2014),地層採取地点を決定し,この結果を考慮して地層採取方法を検討し(重野ほか,2014),採取試料を現地にて地層剥ぎ取り転写を行い,液状化-流動化部分の認定を行った.剥ぎ取り転写法は奈良国立文化財研究所埋蔵文化財センター(1980)を改良して行った.現段階で明らかになってきたことは以下のとおりである.1.人工地層の厚さは5~7mで,沈下部分で厚い傾向がある.これは,事前の貫入試験の予想とは異なっていた.2.人工地層は大きく地表付近の盛土層アソシエーション*とこの下位のサンドポンプ工法による埋立上部層アソシエーション・埋立下部層アソシエーションから構成され,埋立上部層アソシエーションは最上部・上部・下部・最下部のバンドル*に分かれる.各層の層相と液状化-流動化部分は以下のとおりである.盛土層アソシエーション:厚さ1.5~2.2mで,シルト礫や硬質礫を含む砂混じりシルト層~シルト質細粒砂層である.黄褐色および灰色の噴砂脈がみられる.表層部は厚さ5cmのアスファルト・25~30cmの砕石層が重なる.埋立上部層アソシエーション最上部バンドル:厚さ0.2~0.8mで,ラミナの発達する黄褐色細粒砂~中粒砂層である.基底の0.1~0.3mは粗粒砂から極粗粒砂混じりの貝殻片密集層である.上部にラミナ消失部がみられる.埋立上部層アソシエーション上部バンドル:厚さ0.4~1.8mで,灰色の中粒砂中に貝殻片密集層が頻繁に挟まれる.中粒砂層はラミナが消失し緩い.埋立上部層アソシエーション下部バンドル:厚さ0~1.8mで,灰色シルトからなる.下部にスランプ構造がみられ,これを覆って成層したシルト層が重なる.埋立上部層アソシエーション最下部バンドル:厚さ0.7~1.8mで,灰色の貝殻片質な中粒砂中に貝殻片密集層が頻繁に挟まれる.頂部の厚さ20cmはラミナが消失し,この直上のシルト層中に砂脈として貫入している.埋立下部層アソシエーション:厚さ0.5~3.5mで,人自不整合の凹部を埋めるように分布する.黄褐色細粒砂~中粒砂層からなり,淘汰は非常によく,ラミナが発達し,比較的しまっている.京葉線以北の干潟部分を埋立てた際に,埋立層の一部が沿岸流などにより運ばれ堆積した人自層の可能性がある. 上記状況から液状化-流動化現象に係ることとしては以下の点があげられる.1.上部層最上部・上部層上部・上部層最下部の頂部において部分的に液状化-流動化が発生した.2.上部層下部の泥層が薄くなり,上部層上部の厚くなる部分において大きな沈下がみられることから,上部層上部の液状化-流動化現象が沈下に大きくかかわっている可能性がある.*アソシエーション・バンドルは人工地層記載用語(Nirei et al., 2013: Episode)による.