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[HRE31-02] スレショルド圧評価に対する計測方法の影響について
キーワード:スレショルド圧力, 遮蔽層, シール能力
温暖化ガス等の地中貯留のサイト選定段階において,遮蔽層のシール性能としてスレッショルド圧力の評価が必要である。スレッショルド圧力は,ガスを圧入した際に,遮蔽層に連続的なガスの流れが生じるための最低の圧力値を意味している。スレッショルド圧力を評価するためには,圧入するガスの種類や原位置の応力,間隙水圧,温度条件などを厳密に再現した実験を行う場合と,これと対極的に間隙径分布などから表面張力等を介して毛管圧曲線を推定することにより簡易的に評価する場合もある。前者の方がより厳密なスレショルド圧力の評価が可能であるが,特殊な試験装置を使用することが制約となってくる。そのため,各種の手法を併用してそれらの精度を確認する試みが行われている。CO2地中貯留では,①.超臨界CO2を使用したスレッショルド圧力試験,②.N2ガスを使用したスレッショルド圧力試験,③.水銀圧入試験から推定したスレッショルド圧力,が対比される場合が多い。海外の事例でみると,使用した流体系の表面張力を考慮すれば一致しているとする場合もあれば,試料の不均質性や準備方法の違いにより,一致しなかったという報告もある。また,国内の研究事例はあるものの,その数はまだあまり多くはない。筆者らは国内外の泥岩,砂岩に対してこの3種類の試験を実施し,結果の差について検討を行った。超臨界CO2およびN2ガスを使用した試験を比較すると,両者のスレショルド圧力の差は流体系の表面張力の違いで説明出来る場合が多い。ただし,やや年代の若い泥岩の場合は,試料の固結状態が弱く同じ試料で繰返し試験を行うことが難しいため,状態の違いにより結果の差が生じる場合がある。一方,水銀圧入試験から推定されるスレショルド圧力はN2ガスから求められる値とほぼ同等か,それ以下になる場合が多い。これらは試料の異方性や不均質性の影響,および試料準備段階で生じる乾燥収縮による影響が考えられる。日本国内で,遮蔽層の候補となる堆積層はかならずしも厚い,均質な泥岩層ではなく,細かな互層状となる場合も多い。このような場合,限られた数量の厳密な試験だけでなく,精度は低くても多数の試験結果を併用して評価を行うことが必要になることが想定される。従って,本研究で実施した検討は今後実際の貯留地点を選定する際にも重要と考えられる。