日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-RE 応用地質学・資源エネルギー利用

[H-RE31_2AM1] 地球温暖化防止と地学(CO2貯留・利用,CO2-EOR,地球工学)

2014年5月2日(金) 09:30 〜 10:45 419 (4F)

コンビーナ:*小出 仁(産業技術総合研究所)、鹿園 直建(慶應義塾大学理工学部応用化学科)、當舎 利行(産業技術総合研究所)、薛 自求(財団法人 地球環境産業技術研究機構)、座長:當舎 利行(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)

10:00 〜 10:15

[HRE31-03] 微視的内部構造からみた砂岩試料における剪断面近傍の透水性評価

*佐藤 稔1竹村 貴人2高橋 学3安間 了1 (1.筑波大学、2.日本大学、3.産業技術総合研究所)

キーワード:透水係数, 透水試験, 水銀ポロシメーター, 空隙系分布, せん断試験

断層周辺に形成されるダメージゾーンでは、断層面に近づくにつれて破砕作用が強くなることが知られている。断層面および断層近傍のダメージゾーンは、地下環境中での流体の移動に大きな影響を及ぼすため、石油開発やCO2貯留、メタンハイドレート開発などの地下環境利用プロジェクトにおいては重要な地質構造要素である。断層の透水性に関しては原位置および室内で透水試験が行われており、砂岩層中の膠結された断層や、ガウジやカタクレーサイトを挟在する断層の透水性は母岩よりも低下し(Zhang and Tullis. 1998)、周辺のダメージゾーンでは母岩亀裂を含まない試料(インタクト試料)よりも透水性が高くなることが示されている(Fowles and Burley. 1994)。本研究では室内透水試験でダメージゾーンと初期状態の岩石の透水性を比較するとともに、水銀ポロシメーターを利用して空隙率や空隙径分布の変化から透水性について考察した。 試料は宮崎県日南市で採取した砂岩を使用した。採取した砂岩を直径90mm、高さ180mmの円柱形に整形して一面剪断試験を行い、断層試料を作成した。さらにダメージゾーンの試料として断層面直交方向に直径50mm、高さ25mmの円柱試料を整形し、有効拘束圧5MPa、10MPaの条件でトランジェントパルス法(Brace et al. 1968)で透水試験を行った。透水試験では岩石内および試験機内の貯留性を考慮した厳密解(Hsieh et al. 1981)を求めた。また、剪断面直交方向に断層から遠ざかるように0-10mm、10-20mm、20-30mm、30-40mmとそれぞれ10mmのキューブを作成し、水銀ポロシメーターを用いて空隙径および空隙径分布を測定した。破壊させていない初期状態の試料も同様の形状に整形して試験を行った。 透水試験の結果、初期状態の試料では有効拘束圧5MPaのとき透水係数は9.49×10-9m/s、10MPaのとき2.52×10-9m/sであった。一方ダメージゾーンの試料では有効拘束圧5MPaのときの透水係数は1.41×10-8m/s、10MPaのときは2.70×10-9m/sと、初期状態の試料よりも透水係数が大きいという結果が得られた。水銀ポロシメーターでは、初期状態の試料では空隙率が7.9%であり、空隙径分布では0.1μm付近の空隙径が卓越していた。ダメージゾーンの試料の空隙率は5%前後で、剪断面からの距離と空隙率の間に明瞭な相関は見られなかったが、空隙径分布では剪断面に近づくほど、0.1μm付近の空隙径が減少し、0.5から10μmの比較的大きい空隙径が増加する傾向が見られた。初期状態のよりもダメージゾーンの空隙率は減少しているが、測定した試料の不均一性によるものの可能性もあるため、測定数を増やして考察する必要がある。一方で空隙率が比較的小さいのに関わらず、ダメージゾーンの試料のほうが透水係数は大きいという結果から、剪断により岩石内部に微小割れ目の形成されたことや、粒子が再配列して空隙構造が偏在化したと考えられる。