日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-RE 応用地質学・資源エネルギー利用

[H-RE31_2AM2] 地球温暖化防止と地学(CO2貯留・利用,CO2-EOR,地球工学)

2014年5月2日(金) 11:00 〜 12:30 419 (4F)

コンビーナ:*小出 仁(産業技術総合研究所)、鹿園 直建(慶應義塾大学理工学部応用化学科)、當舎 利行(産業技術総合研究所)、薛 自求(財団法人 地球環境産業技術研究機構)、座長:薛 自求(財団法人 地球環境産業技術研究機構)

11:00 〜 11:15

[HRE31-06] 大規模CO2地中貯留サイトにおける微小振動観測(その3) ―なぜCranfieldサイトで微小振動が観測されていないのか?―

*高岸 万紀子1橋本 励1堀川 滋雄2楠瀬 勤一郎3薛 自求1 (1.公益財団法人 地球環境産業技術研究機構、2.サンコーコンサルタント株式会社、3.独立行政法人 産業技術総合研究所)

キーワード:CO2地中貯留, 微小振動観測, 流体圧入

CO2地中貯留に起因する微小振動発生の可能性が議論されている。圧入によって生じる微小振動は、海外のCO2圧入サイトによるモニタリング事例を踏まえてもマグニチュードが小さな無感のイベントであると報告されている。しかしながら、CCSの実施においては、特に世界有数の地震発生国である日本でCCS実施を考えた場合、安全性評価や社会的受容性の観点から圧入サイトにおける微小振動モニタリングが必須である。 RITEでは、米国のローレンス・バークレー国立研究所(LBNL), テキサス大学地質研究所(BEG)連携して米国大規模CO2圧入サイトで長期間に及ぶ微小振動観測を行い、CO2圧入と微小振動発生の関係性について調査研究を行っている。この観測で得られる知見を用いて将来の国内のCCS実証試験や、CCSの実用化の段階で必要な微小振動観測手法について検討・構築することを目的としている。 観測サイトは米国ミシシッピ州のCranfield油田である。この油田ではCO2-EORにより原油の増進回収を実施している。2008年から年間100万tの大規模CO2圧入を実施しており、現在までに400万トン以上のCO2が深度約3.1kmに位置する白亜紀の砂岩層(孔隙率20~30%、浸透率10~200mD)に貯留されている。RITEではCranfield油田において微小振動観測網を構築し、2011年12月より連続観測を実施している。観測網は、半径約3kmの円周上6地点で深度100mに設置した3成分微小振動計から構成される。データ収録は24bitの分解能を有する速度計によってサンプリング周波数200Hzで実施されている。 観測開始から現在までに2年以上が経過しているが、Cranfieldサイトで微小振動は観測されていない。観測波形は観測開始以来コンピュータ処理と目視によって処理されているものの、トリガーされた波形は全て工事や車両の通行などによる人工ノイズ、落雷や突風などの気象の変化に伴うノイズ、自然地震に分類されている。 本報告では、この観測結果を踏まえて、なぜCranfieldサイトで微小振動が観測されなかったのかについて数値計算とサイトの圧力変動などの情報を元に考察を行う。まずは、我々が構築した観測網の検知能力を調べるために、本観測網で観測できる最小マグニチュードを推定した。具体的には、特定のマグニチュードを与えた場合の波形を合成し、その波形を観測網のノイズレベルと比較した。この結果、震源距離3.2km(水平距離1km、貯留層深度3.1km)において、鉛直方向でMw0.7以上、水平方向でMw0.4以上のマグニチュードを持つイベントが観測可能であることが明らかとなった。また、観測能力以上の微小振動がサイトで発生していない理由について、Cranfieldにおける過去の石油生産活動や既往の研究等を元に考察を行う。謝辞:本研究は経済産業省委託事業「二酸化炭素回収・貯蔵安全性評価技術開発事業」の一環として行われた。