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[HSC25-04] 地域を対象とした詳細な津波ハザード評価への取り組み
キーワード:津波, ハザード評価, 遡上, 確率, 地域詳細版, 利活用
防災科研は、東北地方太平洋沖地震によって東日本にもたらされた甚大な津波被害を踏まえ、今後発生する可能性がある地震津波に対する事前の備え・対策に資することを目的とし、平成24年度から日本全国を対象とした津波ハザード評価の研究開発への取り組みを開始した(藤原・他、2013、連合大会)。本取り組みは2通りの研究課題からなる;1つ目は日本全国の海岸および陸上に影響を与える可能性があるすべての地震津波を考慮する「確率論的津波ハザード評価」の研究、2つ目は特定の地震を対象におこなうシナリオ型の津波予測の研究である。「確率論的津波ハザード評価」として、(1)全国を概観した確率論的津波ハザード評価と(2)地域詳細版の確率論的津波ハザード評価の研究に着手している。(1)は最小50mメッシュを用いて日本全国沿岸の津波高さを確率論的に評価するものであり、その概要と進捗状況について平田・他(2014、本大会)で報告する。ここでは、(2)の概要について紹介する。地域詳細版の確率論的津波ハザード評価では、上記(1)の全国を概観した確率論的津波ハザード評価での検討を受けて、地域の津波ハザードをより詳細に評価し、確率論的な評価を地域防災での具体的な利活用に結び付けることを目的としている。そのため地域詳細版では、評価地域を限定したうえで、最小10mメッシュの地形データに基づき津波伝播・遡上計算をおこない、遡上津波に関する各種のハザード評価をおこなうことを予定している。地域詳細版の確率論的津波ハザードの評価対象は主に浸水ハザードであり、評価結果の出力形態としては対象地域の各地点で求められる浸水深さについてのハザード曲線、それらから作成される確率論的な浸水深分布図(例えば、浸水深の超過確率分布図や超過確率ごとの浸水深分布図などの地図など)があるが、そのほか、津波の破壊力に関連しリスク評価にも有効に利用できると考えられる流速にかかわる確率分布図などについて検討する予定である。さらに避難等にかかわるものとして浸水開始時間や最大浸水深出現時間などについても確率論的な評価が可能か検討を加える予定である。地域詳細版の確率論的津波ハザード評価作業の一環として、手始めに、特定地域を対象に浸水深に関するハザード曲線を計算し、確率論的な浸水深分布を評価する方法を検討中である(斉藤・他、2014、本大会)。津波の遡上計算をおこない浸水現象を精度よく再現するためには、沿岸部の堤防等の構造物データや、10 m以下のメッシュサイズの地形データが必要とされている。地域詳細版の検討においては、堤防等の施設データの収集作業、ラインデータ化作業、さらに浸水遡上時の堤防等施設の破壊/不破壊などの取り扱い条件の検討などが今後の検討課題である。また、陸域の地形データは国土交通大臣等による航空レーザー測量の結果等を活用することが基本とされている(国交省、津波浸水想定の設定の手引き、2012)。現状でもっとも測定精度が高いと考えられる航空レーザー測量の結果の活用を基本としているのは、地形データの精度が津波の遡上計算に大きな影響を与えるためである。国土地理院等では日本全国の沿岸において順次航空レーザー測量を実施、東北地方太平洋沖地震以降も拡充してきており、地域詳細版の確率論的津波ハザード評価作業で用いられる予定の津波遡上計算は国土地理院が整備・公開する詳細地形データを変換加工して作成された津波計算用の地形データに基づき実施される予定である。