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[HSC25-10] 災害対策本部の災害情報共有システムにおけるクラウド型GISの役割
キーワード:地理情報システム, 危機対応システム(ICS), 状況認識の統一, 情報処理過程, 災害対策本部
東日本大震災で見られた情報共有機能の欠如は、避難所への救援物資の供給の遅れなどに留まらず、復興計画の遅れ、直接被災者である市民にも影響をもたらした。GISデータを含む災害情報の流通においても、広域的な複合災害であるがゆえ、様々なデータが必要であったにもかかわらず、官民のデータ流通の遅れが復興計画に影響を及ぼし、主題図の重複出力や重複データの入力事例が散見された。 我が国においては、ICS(Incident Command System)のような危機対応システムがなく、その導入を待つことは、省庁間の調整や法改正を伴うことから、発生が予定される関東直下型地震に対応するためには有効ではなく、災害に備えた現実的な対策が望まれる。 東日本大震災では岩手県がICSを導入し医療中心ではあるが、被災地支援を行ったほか、阪神淡路大震災以降の災害で経験を積んだNPOが、局所的ではあるものの中間支援組織の機能を果たした事例としてNPO 遠野まごころネットの事例がある。この動きは、管理面でICS的な運営方法をとっており、日本版ICSの可能性を示した。また、相馬市のGIS利用の事例では、統合型GISを導入していることが罹災証明の早期発効に寄与した報告がある。しかしながら平時にデータ流通の検討がないデータについては、その利用にあたっての調整に多くの時間を費やすため、平時からの調整の必要性が示唆されている。 本研究では、東日本大震災での災害情報後方支援における教訓を基に、日本版ICSが県レベルで導入されることを想定し、埼玉県をフィールドに日本版ICSの下で機能するクラウド型GISセンターの機能を整理し、それを実装して運用させることを目的とする。本研究では、この目的のため、以下の研究を行った。①データ管理や、基本システムのクラウド化の研究②電子成果のクラウド化による利活用の研究およびCOPへの適用③ICSを適用した協働型防災訓練における実証①では、東日本大震災時に無料で多くの自治体に導入されたWeb-GISソフトの多くは、javaをベースにしてTomcatを使うなど、サーバ側の処理が重く、クライアント側に多くのjavascriptを読み込ませていることでネット越しに地理情報をサーバ側と交換しているため、動作が非常に遅くなっている。基本システムとしてどこまでサーバ、ネットワーク、クライアントの負荷を下げつつ、実用的な仕組みが構築できるのか検討を行う。このため、「デスクトップGIS」「クラウド」の組む合わせで負荷を軽減する手法を採用した。②では、Geoserverでサーバからデータを送出し、OpenLayersで地図情報がWMS配信されているサイトから基盤地図情報や各種の地図情報を重ねあわせる。geoserverからは、全ての地図情報を画像としてクライアント側にデータを送信しているだけであり、それを閲覧するOpenLayersもクライアント側の座標値を取得して、それをサーバ側に送る役目と画像を切り替えることだけなので、負荷が非常に軽く設定することができることになる。また、直接サーバ上のPostGISをGeoserverの中からSQL文を実行させることができるなど、こうした継承の機能の組み合わせで、緊急時の背景図と復興期の地図情報の関連付けを行う。このようにして、クラウド型GISシステムを構築し、テーマ1で検討したGISセンターのICSの下でのCOPの役割を担わせる。③では、平成25年度国土交通省「広域的地域間共助」事業として2014年1月24-25日の中間支援組織の連携による中間支援組織主導のICSを取り込んだ協働型防災訓練などにおいて情報共有ツールとして利用し実証的に検証し、平時からのデータ流通の体制みと、それが災害時に証できるための訓練が必要であることを明らかにした。