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[HSC25-P02] 災害発生時における災害事例データベースの利活用‐2013(平成25)年台風第26号における伊豆大島災害における事例
キーワード:災害事例データベース, 利活用, 平成25年台風第26号, 伊豆大島
地域における過去の自然災害実績は、将来における災害対策を検討する際に必須の情報である。このことから、防災科学技術研究所では、歴史時代を含む日本全国の自然災害事例のデータベースを構築している。このデータベースはWeb APIで配信しており、対応するWebアプリ等において地図上で災害事例を閲覧できる。本稿では、災害事例データベースの利活用の一事例として、災害事例データベースから被災地域の災害履歴をとりまとめ、即時的に情報公開を行った事例を紹介する。
伊豆大島における2013(平成25)年台風第26号の影響は次のとおりである。2013(平成25)年10月16日未明の1時間降水量は122.5 mm、10月14日から16日の総降水量824.0 mmであった。さらに、10月16日未明、元町地区において大規模な斜面災害が発生し、39名の死者、行方不明者を出した。
災害事例データベースから過去の災害事例を抽出する際のキーワードは、地域名称を「大島町」、災害種別を「風水害」および「斜面災害」とした。また、現在の大島町の旧市町村には昭和30年に併合した元村、岡田村、差木地村、波浮港村、泉津村、野増村(以降、旧六ヶ村)と、明治初期に元村に改称した新島村があり、検索の際にはこれらの情報も活用した。
災害事例の検索の結果、伊豆大島全島における1997(平成9)年までの風水害の事例として7件が抽出された。風水害の記録は1930年代以降に限られ、昭和時代以前の事例は抽出されなかった。発生場所は、旧六ヶ村の単位で抽出され、うち2事例は大字単位で場所が特定された。災害発生時期については、月および日の情報は不明であった。また、いずれの事例でも災害の規模、詳細な発生場所や発生範囲の記録は確認できなかった。
大規模な風水害としては昭和初期の「おなみ時化(しけ)」、1932(昭和7)年の大暴風雨、1958(昭和33)年9月の狩野川台風の事例があげられる。昭和初期のおなみ時化では、泉津村松之平において土石流による人的被害が生じた。1932(昭和7)年の事例は、大雨、強風により全壊149戸、船舶被害と人的被害が確認された。なお、東京都大島町誌(2000)では「おなみ時化」と先述の1932(昭和7)年の災害は同一のものとして示されている。1958(昭和33)年9月狩野川台風では、総雨量419.2 mmを観測し、元町地区で大規模な土石流が発生した。被害は、全半壊約100戸以上、死者、行方不明者2名、重軽傷53名が確認された。本事例は、大規模な斜面災害が発生しているにも関わらず、人的被害が極めて少ないことが特徴的である。また、1958(昭和33)年5月には同じく元町地区において、誘因は不明だが大規模な土石流が発生し、人的被害18名を生じた事例が確認された。
今回の災害事例データベースからの情報抽出プロセス、および上記の検索結果のレビューから、以下の2点を今後の課題とした。1) 昭和以前の風水害の情報が存在しないこと。これは、伊豆大島に限らず国内他地域でも同様の傾向にある。2) 発生日時および地理空間的情報が少ないこと。将来の災害をシミュレートするにあたり、過去の災害実績、特に範囲に関する情報は重要だが、現状では十分ではない。
現地の博物館等にはこれらの情報を補完する資料が存在する場合が多い。すべての資料をデータベース化することは困難だが、資料の多くはOPAC等で書誌情報が公開されている。今後は、これらの資料の所在や資料の内容に関する情報も含めて、地域における過去の災害事例に関する情報提供ができる体制を目指す。
伊豆大島における2013(平成25)年台風第26号の影響は次のとおりである。2013(平成25)年10月16日未明の1時間降水量は122.5 mm、10月14日から16日の総降水量824.0 mmであった。さらに、10月16日未明、元町地区において大規模な斜面災害が発生し、39名の死者、行方不明者を出した。
災害事例データベースから過去の災害事例を抽出する際のキーワードは、地域名称を「大島町」、災害種別を「風水害」および「斜面災害」とした。また、現在の大島町の旧市町村には昭和30年に併合した元村、岡田村、差木地村、波浮港村、泉津村、野増村(以降、旧六ヶ村)と、明治初期に元村に改称した新島村があり、検索の際にはこれらの情報も活用した。
災害事例の検索の結果、伊豆大島全島における1997(平成9)年までの風水害の事例として7件が抽出された。風水害の記録は1930年代以降に限られ、昭和時代以前の事例は抽出されなかった。発生場所は、旧六ヶ村の単位で抽出され、うち2事例は大字単位で場所が特定された。災害発生時期については、月および日の情報は不明であった。また、いずれの事例でも災害の規模、詳細な発生場所や発生範囲の記録は確認できなかった。
大規模な風水害としては昭和初期の「おなみ時化(しけ)」、1932(昭和7)年の大暴風雨、1958(昭和33)年9月の狩野川台風の事例があげられる。昭和初期のおなみ時化では、泉津村松之平において土石流による人的被害が生じた。1932(昭和7)年の事例は、大雨、強風により全壊149戸、船舶被害と人的被害が確認された。なお、東京都大島町誌(2000)では「おなみ時化」と先述の1932(昭和7)年の災害は同一のものとして示されている。1958(昭和33)年9月狩野川台風では、総雨量419.2 mmを観測し、元町地区で大規模な土石流が発生した。被害は、全半壊約100戸以上、死者、行方不明者2名、重軽傷53名が確認された。本事例は、大規模な斜面災害が発生しているにも関わらず、人的被害が極めて少ないことが特徴的である。また、1958(昭和33)年5月には同じく元町地区において、誘因は不明だが大規模な土石流が発生し、人的被害18名を生じた事例が確認された。
今回の災害事例データベースからの情報抽出プロセス、および上記の検索結果のレビューから、以下の2点を今後の課題とした。1) 昭和以前の風水害の情報が存在しないこと。これは、伊豆大島に限らず国内他地域でも同様の傾向にある。2) 発生日時および地理空間的情報が少ないこと。将来の災害をシミュレートするにあたり、過去の災害実績、特に範囲に関する情報は重要だが、現状では十分ではない。
現地の博物館等にはこれらの情報を補完する資料が存在する場合が多い。すべての資料をデータベース化することは困難だが、資料の多くはOPAC等で書誌情報が公開されている。今後は、これらの資料の所在や資料の内容に関する情報も含めて、地域における過去の災害事例に関する情報提供ができる体制を目指す。