10:15 〜 10:30
[HSC25-P05_PG] GISおよびサバメシを活用した防災・減災イベント-大分大学地理学教室の試み-
ポスター講演3分口頭発表枠
キーワード:GIS, サバメシ, 防災・減災イベント, 東北地方太平洋沖地震, 教員志望学生, 大分県
1.はじめに
近年大分県では,東海地震,東南海地震などの南海トラフで発生する地震による津波被害,豪雨による水害や土砂災害など,種々の災害が危惧されており,防災・減災対策に対する機運が高まっている。ところが,大規模な地震災害を経験したことがない多くの県民は,たとえば南海トラフにおける巨大地震の被害想定が公表されても,それに対する家庭・学校での対策は,未だ万全ではないと推察される。そこで,大分大学地理学教室では,大分市内の公立小学校に通う小学生親子を対象に,自然災害や防災・減災対策への意識付けを目的とした防災・減災イベントを実施した。
東北地方太平洋沖地震により,東日本の多くの学校および学校関係者が被災(あるいは災害時の対応)した現状に鑑みれば,このような防災・減災に関するイベントを大分県内で唯一の国立大学が主催し,さらに教員養成課程に在籍する教員志望学生が主体となって実施することは,大学が果たす役割も含めて大きな意義があると考えられる。さらに,近い将来,教員志望学生が防災教育やそれに関連したイベントに携わることを考えれば,本イベントの開催は教員志望学生に対しても大きな副次的効果が期待される。
2.イベントの概要と目的
本イベントは,「君はGISとサバメシを知っているか?-楽しく学ぶ地理学と防災-」というタイトルで,2013年11月3日に大分大学旦野原キャンパスにて開催した。イベント対象は,大分市内に通う小学校4~6年生とその保護者とし,当日は親子23組(総勢51人)が参加した。なお,本イベントでは,大分大学地理学教室の学生を中心に13名の学生が補助要員としてイベントの企画・準備・運営に携わり,イベント当日には小学生のパートナーとして各種作業を補助した。
本イベントの最たる目的は,参加者に各種作業を体験させることで,自然災害はもちろんのこと,家庭における防災・減災対策などに対して,「意識するきっかけ」を与えることである。さらに,そのような各種対策を含んだ防災意識が単発的な意識改革で終わることなく,イベント終了後も災害発生時まで持続・継続するよう,「防災・減災意識の持続性維持」をイベントの最終目標として掲げた。このような観点から本イベントは,次の二つの作業体験を軸に構成されている。①地理学の分野で一般に利用されている地理情報システム(以下,GIS)を使った地図作り体験,②アルミ缶と紙パックでごはんを炊く,通称「サバメシ」と呼ばれるサバイバル・メシタキ(以下,サバメシ)体験である。
3.イベントの効果
(1)参加者の効果
本イベントの効果を分析するために行ったアンケート調査の集計結果によると,イベント対象学年とその保護者に限ってみれば,イベント内で実施した各種作業は,概ね「楽しかった」,「分かりやすかった」という評価が得られた。さらに,「防災に対する意識が低かったが,これを機にもっと防災について家族と考えていきたい」,「防災について楽しく学べて大変良かった」という保護者からの肯定的なコメントは,本イベントの効果が少なからず目的に沿った形で現れた結果であると推測できる。
(2)教員志望学生の効果(副次的効果)
平成24年度に導入された中学校社会,高等学校地理の学習指導要領では,地図の活用においてICTを利用する「GISの活用」を念頭においた内容の授業が求められている。つまり,小・中学校の教員あるいは高校地理の教員を目指す学生のGIS技術習得は,必須であると言って過言ではない。ところが,本学の教員養成課程には,教養科目も含めてGIS技術を習得できる講義やカリキュラムが存在しないため,学生らはそもそもGISに触れるきっかけがほとんど無いという問題があった。このことからも,本イベントの開催を通じて教員志望学生がGISに触れその技術を習得できたことは,イベントの副次的効果としてきわめて意義深い。
サバメシ体験の本質は,防災・減災に対する意識付けであるが,これらの効果は参加者を対象としたアンケート集計結果において示された。これを踏まえて考察すると,イベントを通じてサバメシを学んだ学生もまた,災害時にごはんを炊くという「サバイバル技術」に習熟しただけでなく,サバメシ体験を通じて防災・減災に対する意識がおのずと向上したとみなされる。さらに,サバメシの本質を考慮すれば,サバメシは防災教育の中で「体験型防災教育教材」に位置づけられると考えられる。したがって,教員志望学生は防災教育における教材として,サバメシという一つの手法に習熟したと判断できる。
以上のように,教員志望学生が本イベントに携わることで習得できた技術や手法は,将来的に教育現場において十分に活かせるものである。よって,本イベントの副次的効果はきわめて大きかったと判断できると共に,本イベントを継続的に実施する有為性も示された。
近年大分県では,東海地震,東南海地震などの南海トラフで発生する地震による津波被害,豪雨による水害や土砂災害など,種々の災害が危惧されており,防災・減災対策に対する機運が高まっている。ところが,大規模な地震災害を経験したことがない多くの県民は,たとえば南海トラフにおける巨大地震の被害想定が公表されても,それに対する家庭・学校での対策は,未だ万全ではないと推察される。そこで,大分大学地理学教室では,大分市内の公立小学校に通う小学生親子を対象に,自然災害や防災・減災対策への意識付けを目的とした防災・減災イベントを実施した。
東北地方太平洋沖地震により,東日本の多くの学校および学校関係者が被災(あるいは災害時の対応)した現状に鑑みれば,このような防災・減災に関するイベントを大分県内で唯一の国立大学が主催し,さらに教員養成課程に在籍する教員志望学生が主体となって実施することは,大学が果たす役割も含めて大きな意義があると考えられる。さらに,近い将来,教員志望学生が防災教育やそれに関連したイベントに携わることを考えれば,本イベントの開催は教員志望学生に対しても大きな副次的効果が期待される。
2.イベントの概要と目的
本イベントは,「君はGISとサバメシを知っているか?-楽しく学ぶ地理学と防災-」というタイトルで,2013年11月3日に大分大学旦野原キャンパスにて開催した。イベント対象は,大分市内に通う小学校4~6年生とその保護者とし,当日は親子23組(総勢51人)が参加した。なお,本イベントでは,大分大学地理学教室の学生を中心に13名の学生が補助要員としてイベントの企画・準備・運営に携わり,イベント当日には小学生のパートナーとして各種作業を補助した。
本イベントの最たる目的は,参加者に各種作業を体験させることで,自然災害はもちろんのこと,家庭における防災・減災対策などに対して,「意識するきっかけ」を与えることである。さらに,そのような各種対策を含んだ防災意識が単発的な意識改革で終わることなく,イベント終了後も災害発生時まで持続・継続するよう,「防災・減災意識の持続性維持」をイベントの最終目標として掲げた。このような観点から本イベントは,次の二つの作業体験を軸に構成されている。①地理学の分野で一般に利用されている地理情報システム(以下,GIS)を使った地図作り体験,②アルミ缶と紙パックでごはんを炊く,通称「サバメシ」と呼ばれるサバイバル・メシタキ(以下,サバメシ)体験である。
3.イベントの効果
(1)参加者の効果
本イベントの効果を分析するために行ったアンケート調査の集計結果によると,イベント対象学年とその保護者に限ってみれば,イベント内で実施した各種作業は,概ね「楽しかった」,「分かりやすかった」という評価が得られた。さらに,「防災に対する意識が低かったが,これを機にもっと防災について家族と考えていきたい」,「防災について楽しく学べて大変良かった」という保護者からの肯定的なコメントは,本イベントの効果が少なからず目的に沿った形で現れた結果であると推測できる。
(2)教員志望学生の効果(副次的効果)
平成24年度に導入された中学校社会,高等学校地理の学習指導要領では,地図の活用においてICTを利用する「GISの活用」を念頭においた内容の授業が求められている。つまり,小・中学校の教員あるいは高校地理の教員を目指す学生のGIS技術習得は,必須であると言って過言ではない。ところが,本学の教員養成課程には,教養科目も含めてGIS技術を習得できる講義やカリキュラムが存在しないため,学生らはそもそもGISに触れるきっかけがほとんど無いという問題があった。このことからも,本イベントの開催を通じて教員志望学生がGISに触れその技術を習得できたことは,イベントの副次的効果としてきわめて意義深い。
サバメシ体験の本質は,防災・減災に対する意識付けであるが,これらの効果は参加者を対象としたアンケート集計結果において示された。これを踏まえて考察すると,イベントを通じてサバメシを学んだ学生もまた,災害時にごはんを炊くという「サバイバル技術」に習熟しただけでなく,サバメシ体験を通じて防災・減災に対する意識がおのずと向上したとみなされる。さらに,サバメシの本質を考慮すれば,サバメシは防災教育の中で「体験型防災教育教材」に位置づけられると考えられる。したがって,教員志望学生は防災教育における教材として,サバメシという一つの手法に習熟したと判断できる。
以上のように,教員志望学生が本イベントに携わることで習得できた技術や手法は,将来的に教育現場において十分に活かせるものである。よって,本イベントの副次的効果はきわめて大きかったと判断できると共に,本イベントを継続的に実施する有為性も示された。