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[HSC25-P07_PG] 小中学校の学校防災マニュアルにおける災害安全上の課題 ー石川県の事例
ポスター講演3分口頭発表枠
キーワード:小中学校, 学校防災マニュアル, ハザードマップ, 避難
東日本大震災の発生を契機に、学校現場における災害安全計画の重要性が再認識され、各県で見直しが進みつつある。石川県も例外ではなく、県教育委員会主導のもと、学校防災マニュアル、避難訓練および防災教育の在り方についての見直しが行われつつある。筆者らは、県教育委員会の依頼を受けて、学校防災アドバイザーとして2012・13年度の2年間で県内20市町の42校(高等学校2校含む)の学校防災マニュアルの点検を行った。その中で、いくつかの共通した大きな課題が見いだされたので報告する。
①対策の対象となる災害の設定の不完全性
マニュアルの策定にあたって最も大きな課題と考えられるのが、対策の対象となる災害が適切に設定されていないことである。本来、学校の立地環境に応じて、対策が必要とされる災害種や、その優先順位は異なる。しかしながら、多くの学校ではハザードマップを活用した立地環境の考慮などが行われておらず、画一的な対応にとどまっていた。対策の立案には「敵を知る」ことが不可欠だが、被災リスクの検討を行っていないことは大きな問題である。
各学校のマニュアルでは、地震を想定したマニュアルはすべての学校で策定されており、東日本大震災を受けての改定作業であることから、津波への対応も追加されていた。しかし、活断層の直上に位置していながらその存在を理解していない、内陸であり津波の心配が全くない地域であっても、画一的に津波対応マニュアルが存在するなどの例もある。また、洪水浸水想定区域や土砂災害の想定区域内でありながら、その対策が組み込まれていない例も散見された。
②時系列的認識の欠如
災害種によって、自然現象の発生と災害状況の進行の時系列変化は異なる。災害対応は、その時系列に沿って行う必要があるが、一様に災害の原因となる現象の発生を対応の起点としていることや、現象自体に継続時間のある災害種に関しても、対応計画の時系列上では瞬間的な現象として位置づけられている。また、児童生徒を学校内で長時間確保する可能性についての意識、さらに学校の再開に至るまでの「事業継続計画」に対する意識も多くのケースで認められなかった。
③教員間の災害イメージの未共有
上記の項目とも連動するが、立地環境の分析を行っている場合においても、一部教員(管理職・防災担当・社会・理科教員など)のみが理解するにとどまっており、すべての教員で災害・被災イメージを共有する作業が行われていなかった。災害イメージの共有は、マニュアルの相互確認の際に不可欠であるほか、避難訓練時のマニュアルの実行可能性の検証にあたっても不可欠である。
④「正常性バイアス」の存在
ほとんどの学校の避難計画において、災害発生時に児童・生徒、教員が怪我をする事が想定されていなかった。避難誘導計画においても、全教職員が全力で対応することで成立するように立案され、柔軟性のない計画となっていた。被災時の状況を客観的にイメージすることが行われていないため、正常性バイアスを回避できていないものと捉えられる。
⑤登下校中の被災への未対応
児童生徒が在校時の対応に主眼が置かれており、安全確保の主体が不明瞭である登下校時の対策が不十分となっている。スクールバスなど、登下校が学校の管理下にある場合でも災害対応計画が立案されていないケースも多かった。
⑥避難所設置への未対応
小中学校の多くは、地域自治体の指定避難所となっているが、児童生徒の被災時の行動と、地域住民が避難所へ入ってくる行動との整合性が考慮されておらず、動線やスペースが競合することが明白なケースも多い。また、これまでの事例から、学校における避難所の開設の初期段階においては教員の関与が不可欠であることが指摘されているが、学校教員側でのその認識は低いものとなっている。
⑦地域・保護者との連携不足
登下校時の対応、避難所の開設などにおいて、校外避難が必要な学校では特に、学校と地域の連携が不可欠である。また、防災教育上でも地域の協力は大きな要素となる。一方で、少子高齢化が進行している地域においては、中学校の生徒は地域の共助の担い手として位置づけられる。しかしながら、学校と地域が継続的に防災に関する意思疎通をしているケースは限られていた。学校と地域の連携強化は諸課題の解決のブレイクスルーとなる可能性を有していると考える。
保護者との連携に関しては、引き渡し計画の立案と訓練の実施によって強化が進みつつあると評価できる。児童生徒を通じて学校から保護者に働きかけることは、保護者の防災意識の向上を通じて間接的に地域防災力の向上にも寄与する。更なる連携強化が進むことを期待したい。
①対策の対象となる災害の設定の不完全性
マニュアルの策定にあたって最も大きな課題と考えられるのが、対策の対象となる災害が適切に設定されていないことである。本来、学校の立地環境に応じて、対策が必要とされる災害種や、その優先順位は異なる。しかしながら、多くの学校ではハザードマップを活用した立地環境の考慮などが行われておらず、画一的な対応にとどまっていた。対策の立案には「敵を知る」ことが不可欠だが、被災リスクの検討を行っていないことは大きな問題である。
各学校のマニュアルでは、地震を想定したマニュアルはすべての学校で策定されており、東日本大震災を受けての改定作業であることから、津波への対応も追加されていた。しかし、活断層の直上に位置していながらその存在を理解していない、内陸であり津波の心配が全くない地域であっても、画一的に津波対応マニュアルが存在するなどの例もある。また、洪水浸水想定区域や土砂災害の想定区域内でありながら、その対策が組み込まれていない例も散見された。
②時系列的認識の欠如
災害種によって、自然現象の発生と災害状況の進行の時系列変化は異なる。災害対応は、その時系列に沿って行う必要があるが、一様に災害の原因となる現象の発生を対応の起点としていることや、現象自体に継続時間のある災害種に関しても、対応計画の時系列上では瞬間的な現象として位置づけられている。また、児童生徒を学校内で長時間確保する可能性についての意識、さらに学校の再開に至るまでの「事業継続計画」に対する意識も多くのケースで認められなかった。
③教員間の災害イメージの未共有
上記の項目とも連動するが、立地環境の分析を行っている場合においても、一部教員(管理職・防災担当・社会・理科教員など)のみが理解するにとどまっており、すべての教員で災害・被災イメージを共有する作業が行われていなかった。災害イメージの共有は、マニュアルの相互確認の際に不可欠であるほか、避難訓練時のマニュアルの実行可能性の検証にあたっても不可欠である。
④「正常性バイアス」の存在
ほとんどの学校の避難計画において、災害発生時に児童・生徒、教員が怪我をする事が想定されていなかった。避難誘導計画においても、全教職員が全力で対応することで成立するように立案され、柔軟性のない計画となっていた。被災時の状況を客観的にイメージすることが行われていないため、正常性バイアスを回避できていないものと捉えられる。
⑤登下校中の被災への未対応
児童生徒が在校時の対応に主眼が置かれており、安全確保の主体が不明瞭である登下校時の対策が不十分となっている。スクールバスなど、登下校が学校の管理下にある場合でも災害対応計画が立案されていないケースも多かった。
⑥避難所設置への未対応
小中学校の多くは、地域自治体の指定避難所となっているが、児童生徒の被災時の行動と、地域住民が避難所へ入ってくる行動との整合性が考慮されておらず、動線やスペースが競合することが明白なケースも多い。また、これまでの事例から、学校における避難所の開設の初期段階においては教員の関与が不可欠であることが指摘されているが、学校教員側でのその認識は低いものとなっている。
⑦地域・保護者との連携不足
登下校時の対応、避難所の開設などにおいて、校外避難が必要な学校では特に、学校と地域の連携が不可欠である。また、防災教育上でも地域の協力は大きな要素となる。一方で、少子高齢化が進行している地域においては、中学校の生徒は地域の共助の担い手として位置づけられる。しかしながら、学校と地域が継続的に防災に関する意思疎通をしているケースは限られていた。学校と地域の連携強化は諸課題の解決のブレイクスルーとなる可能性を有していると考える。
保護者との連携に関しては、引き渡し計画の立案と訓練の実施によって強化が進みつつあると評価できる。児童生徒を通じて学校から保護者に働きかけることは、保護者の防災意識の向上を通じて間接的に地域防災力の向上にも寄与する。更なる連携強化が進むことを期待したい。