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★ [HTT08-01] 多時期の航空レーザ計測地形データを用いた数値地形画像マッチングによる地表変動量計測
キーワード:DEM, 航空機レーザ計測, DEM差分解析, 画像マッチング解析
演者らは先行研究において、2時期の高解像度DEMを用いて小規模な地表面の移動量を面的に3次元的にかつ簡易に定量計測する手法を開発し、地すべりや活断層による地表変位の計測に適用できることを示した(向山ほか, 2009、Mukoyama, 2011)。本研究では、その後4年間に、地震による地殻変動や液状化に伴う地表流動に適用した事例、さらにGPS現地観測との比較結果を示し、実用的な手法として適用が可能であることを示す。レーザ計測のような高密度点群地形計測を時系列的に行い、面的な領域の変位量を求める手法には、2通りのアプローチがある。一つのアプローチは、小領域内の点群の座標値を用いた3次元マッチングを行う方法であり、ICPと呼ばれる。もう一つのアプローチは点群から作成したラスター型の地表面モデルを画像として扱い、画像マッチングを行う方法である。これらの手法の共通点は、変位に伴う検索ウィンドウ内の地形量の差異を最小にするような位置を検索領域内で探索するというアルゴリズムを用いることである。演者らの開発した手法は、点群データから作成した地形量画像を用いて画像マッチングを行い、2次元の変位量を求めた後、移動領域に対応する点群の鉛直変位量を算出して3次元変位量を求める手法である。演者らの手法は、画像マッチング手法として既存のPIV手法を用いる。そして地形画像として傾斜量図を用いる。PIVは本来は流体の計測手法として開発されたものであるが、グレースケール化した傾斜量画像は、粒子がランダムに分布する画像と同様に、解析手法によく適合する。本研究では,同じ手法を平成23年東北地方太平洋沖地震(M9.0)で液状化が発生した地域に適用し,地表面変位の抽出を試みた.その結果、水平移動が10㎝~50㎝程度の一定の移動方向を持つ小領域がいくつか認められた。また場所によっては移動方向を連続的に変化させながら流動したと推定される領域も認められた。さらに海岸では、護岸の一部が海面にむけてはらみ出す傾向が認められる箇所があった。それぞれの移動領域の動きは,地下浅所における地盤の流動化を示唆していると考えられ、軟弱層の厚さや埋没谷などの地質構造を反映していると考えられる。2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴い,日本列島の東部は東側に大きく移動した.変位は牡鹿半島付近では約5.3m,東京付近でも約0.2mが観測されている.本研究では,東北日本のいくつかの地点において、地震発生前後の2時期の詳細地形計測モデルから算出した地形画像変位量と電子基準点などの既存の基準点の地震前後の計測結果を比較した。さらに2008年岩手宮城内陸地震による変位の事例も参照して、様々な変位量の帯域における3D-GIV解析結果を比較検証した。調査対象とした10地点の水平変位量は、約0.2m~約7mの範囲である。その結果、変位量の全帯域にわたる両者の一致度には高い相関が得られた。いずれの地点においても,3D-GIV解析で計測した変位量と電子基準点等によって計測された変位量とは良く一致した。その較差はどの地点においても約10 cm程度以内であった.さらに、地すべり地において、複数時期のレーザ計測による地形画像変位量と継続的なGPS観測結果とを比較検討した結果、観測期間の違いを考慮すれば、両者の計測値はよく一致した。高密度点群計測地形データを用いた地形画像マッチングによる変位計測手法は、1/10画素程度以上の変位量を抽出することができ、地すべりや地震時の地盤変位計測手法として実用的であると考えられる。参考文献向山 栄,西村智博,浅田典親 (2009) JpGU Meeting 2009予稿集, Y167-004Mukoyama, S. (2011) Journal of Mountain Science, Vol. 8, No. 2, pp. 239-245