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[HTT32-01] ポータブルパーティクルカウンタを使った東広島市のPM2.5の簡易観測技術開発
キーワード:PM2.5, 大気, モニタリング, パーティクルカウンター
近年, PM2.5による越境環境汚染が懸念されている.そこで,様々な測定・モニタリング方法の開発が求められている.広島県を例にとると,本格的な常時測定を始めたのは2012年からであり,県内にある39箇所の大気測定局のうちPM2.5を計測しているのは,2013年5月末の時点で10箇所のみである.また人口が増加し続ける東広島市では測定局がないため,PM2.5の状況がわからないという問題があった.そこで本研究では,比較的安価なポータブルパーティクルカウンタ(PPC)の値を元に,PM2.5を観測する技術について検討した.PPCからのPM2.5濃度推定を行うために,まず環境省大気汚染物質広域監視システムの観測所のひとつである井口小学校付近(北緯34.37268°,東経132.38475°)においてPPC機器(KR-12A,RION社)を使って大気中に含まれる各粒径(直径0.3,0.5,0.7,1.0,2.0,5.0μm以上の各粒子数)を測定された.測定日は2013年5月25日,6月8日,6月22日,8月3日で,全11データセットである.測定した各粒径と粒子累積数(Cumulative Particle Number: CPN)の両対数プロットを作成し,「2.5μm以下の粒子数を内挿して求めた値(C2.5)」が計算された.なお使用したPPCは,1回の測定で1Lの大気を吸引し,790nmの半導体レーザーの散乱強度から各粒径のCPNが測定される原理である.一方,東広島市のPM2.5の値を調べるために,2013年3月から2014年4月まで計195日間(平日のみ),CPNを測定した.パーティクルカウンタカウント値「CPN」(全粒径のカウント値)と「実測PM2.5」の関係は,相関係数0.94と極めて高かった.またPM2.5の測定限界と推定誤差はそれぞれ12.8μg/m3,4.1μg/m3であった.現在我が国におけるPM2.5の環境基準は「1日平均で35μg/m3」が設定されている.従って,今回の方法による測定限界はこれらの基準値よりかなり低い値であるため,この簡易手法は少なくともPM2.5の注意喚起を行う方法として十分利用できると判断される.またこの観測方法を使って,東広島市のPM2.5の時系列変化図を作成した結果,東広島市で環境基準を超過する割合は,約16%あった.また,最もPM2.5を超過する割合が高い月はは8月であった.