09:00 〜 09:15
[HTT33-P04_PG] マルチコプター空撮による2013年フィリピン・ボホール地震の建物被害調査
ポスター講演3分口頭発表枠
マルチコプター空撮技術が低・中層の建物や構造物の地震被害記録に有用であることを示す。2013年10月15日にフィリピン中部のボホール島でM7.2の直下型地震が発生し、島の西部を中心に多数の建物が倒壊して200名を超える死者が発生した。フィリピン火山地震研究所による被害調査に基づく震度は震源に近い州都のタグビララン市でフィリピン震度階VII(気象庁震度VI相当)であった。我々は地震発生から約3週間後に現地を訪れ、マルチコプターを用いて教会を中心に建物被害の空撮調査を行った。また同じくマルチコプターを用いて、表層に現れた地震断層と海岸隆起の写真測量調査(中田・他:本学会)およびチョコレートヒルと呼ばれる多数の特徴的な丘陵地形の地すべり被害調査を行った。
フィリピン各地には16世紀のスペイン統治時代に創建された石造の教会が多数存在するが、今回の地震ではボホール島西部各地に建つそれらの教会が特に大きな被害を受けた。同島南西部バクラヨン市の海岸に建つ現在のバクラヨン教会は1727年に建設されたフィリピン最古の教会として知られるが、その鐘楼の上半部と聖堂の前壁がほぼ完全に倒壊した。また南部のロボック市のロボック教会は隣接する博物館も含めて周囲の壁が下部を残して大きく倒壊した。南西部のマリボホック市のマリボホック教会や北西部クラリン市のクラリン教会はほぼ完全に倒壊した。今回の地震では教会の他、サグバヤン市庁舎やトゥビゴン市庁舎などの公共的建物の被害も大きく、特にコンクリート造の柱・梁に囲まれた組積造帳壁の崩落が目立った。
撮影機材はマルチコプターには小型で操縦も容易なDJI 社製Phantom、カメラには軽量で高解像度のGoProHero 3 Black Editionを用いた。カメラを前方斜め下向きに取り付けた機体をGPSモードで手動操縦で飛行させた。撮影アングルの確認のためにリアルタイムで画像転送を行うFPV(FirstPerson'sView)システムのFatShark社製TeleporterV3を用いた。撮影は2秒に1回のインターバルモードとし、被写体の周囲を飛行しながら連続撮影を行った。一回の飛行時間は安全を見て5分前後とした。周囲には顕著な被害がなく通常の生活が営まれている場合が多かったため、機体には万一の衝突時の衝撃吸収のためのプロペラガードを装着し、飛行には細心の注意を払った。幸い墜落事故の発生は一回もなかった。一般に地上からの手動操縦では機体の距離感がつかみにくいが、FPVシステムを用いると撮影アングルを飛行中に確認できるのはもちろんのこと、被害調査のような被写体に接近する必要のある調査における衝突事故防止の手段として有用である。
図左にこうして撮影したバクラヨン教会の鐘楼の空撮写真の例を示す。地上からでは観察することのできない鐘楼の上部とその内部の破壊面を観察することができる。マルチコプターによる地震直後の空撮は建物の周囲への立ち入りが困難な場合でも被害の全容を容易にとらえることができ、災害概況を迅速に把握するツールとして極めて有用である。さらにこうして得られた約50枚の空撮写真をSfM(Structure from Motion)ソフトウェアのPhotoScanを用いて処理し、鐘楼の3次元モデルを再構築した(図右)。この手法により建物の破壊のモデリングと解析が可能となる。被災構造物の3次元モデルはデジタル災害遺構としての活用価値も大きい。従来から行われているレーザースキャナーによる3次元測量に比較してマルチコプター空撮とSfMによる写真測量は簡便であり、3次元プリンターで模型を作成すれば被災建物の修理計画や事前の耐震対策の検討作業等にも役立つことが期待される。
フィリピン各地には16世紀のスペイン統治時代に創建された石造の教会が多数存在するが、今回の地震ではボホール島西部各地に建つそれらの教会が特に大きな被害を受けた。同島南西部バクラヨン市の海岸に建つ現在のバクラヨン教会は1727年に建設されたフィリピン最古の教会として知られるが、その鐘楼の上半部と聖堂の前壁がほぼ完全に倒壊した。また南部のロボック市のロボック教会は隣接する博物館も含めて周囲の壁が下部を残して大きく倒壊した。南西部のマリボホック市のマリボホック教会や北西部クラリン市のクラリン教会はほぼ完全に倒壊した。今回の地震では教会の他、サグバヤン市庁舎やトゥビゴン市庁舎などの公共的建物の被害も大きく、特にコンクリート造の柱・梁に囲まれた組積造帳壁の崩落が目立った。
撮影機材はマルチコプターには小型で操縦も容易なDJI 社製Phantom、カメラには軽量で高解像度のGoProHero 3 Black Editionを用いた。カメラを前方斜め下向きに取り付けた機体をGPSモードで手動操縦で飛行させた。撮影アングルの確認のためにリアルタイムで画像転送を行うFPV(FirstPerson'sView)システムのFatShark社製TeleporterV3を用いた。撮影は2秒に1回のインターバルモードとし、被写体の周囲を飛行しながら連続撮影を行った。一回の飛行時間は安全を見て5分前後とした。周囲には顕著な被害がなく通常の生活が営まれている場合が多かったため、機体には万一の衝突時の衝撃吸収のためのプロペラガードを装着し、飛行には細心の注意を払った。幸い墜落事故の発生は一回もなかった。一般に地上からの手動操縦では機体の距離感がつかみにくいが、FPVシステムを用いると撮影アングルを飛行中に確認できるのはもちろんのこと、被害調査のような被写体に接近する必要のある調査における衝突事故防止の手段として有用である。
図左にこうして撮影したバクラヨン教会の鐘楼の空撮写真の例を示す。地上からでは観察することのできない鐘楼の上部とその内部の破壊面を観察することができる。マルチコプターによる地震直後の空撮は建物の周囲への立ち入りが困難な場合でも被害の全容を容易にとらえることができ、災害概況を迅速に把握するツールとして極めて有用である。さらにこうして得られた約50枚の空撮写真をSfM(Structure from Motion)ソフトウェアのPhotoScanを用いて処理し、鐘楼の3次元モデルを再構築した(図右)。この手法により建物の破壊のモデリングと解析が可能となる。被災構造物の3次元モデルはデジタル災害遺構としての活用価値も大きい。従来から行われているレーザースキャナーによる3次元測量に比較してマルチコプター空撮とSfMによる写真測量は簡便であり、3次元プリンターで模型を作成すれば被災建物の修理計画や事前の耐震対策の検討作業等にも役立つことが期待される。