16:15 〜 17:30
[HTT33-P05] 小型ヘリおよびUAVによる植生・土地被覆図と空間線量率マップの作成
キーワード:原子力災害, 空間線量率計測, UAV, ハイパースペクトルカメラ, 山木屋地区, 福島
原子力災害により放射能汚染を被った地域の環境回復、帰還、復興のために最も重要かつ最初に必要な情報は土地被覆現況図と放射能汚染マップである。この二つの地理情報に基づき、除染も含む放射能対策を策定する必要がある。千葉大学では東電福島第一原発の事故後、直ちに飯舘村、川俣町を中心に阿武隈山地の広範囲にわたる空間線量率分布の把握を試みた。その後、重点調査地域を川俣町山木屋地区(旧計画的避難区域)に設定し、空間線量率マップの作成を試みてきた。
その基本的な目標は航空機モニタリングや幹線道路沿いの走行サーベイでは明らかにすることができない里山流域単位の詳細な空間線量率マップを作成することである。山村における暮らしは里山における水・物質循環に依存しており、暮らしと関わりを持つ範囲が里山流域だからである。そこで、空間線量率計とGPSを同期させて、山林斜面を歩く歩行サーベイの手法を確立させ、山木屋地区北部の山地斜面で空間線量率の詳細な分布を計測した。
その結果、山木屋地区北部の山地斜面の空間線量率は、①高標高域で高い、②東電福島第一原発方向(東南方向)の斜面が高い、③常緑針葉樹林の空間線量率が高い、といった規則性も明らかになったが、空間的な不均質性も大きく、対象地域ごとに調査を行う必要性が生じてきた。
山林斜面の歩行サーベイは詳細な空間密度分布を得る効率的な手法であるが、現場ではクマザサや有刺木本のため歩行が困難な場所も多い。田畑においても避難実施後繁茂した雑草群落の中の歩行は困難を極める。そこで、飛翔体による空間線量率の測定を試みた。
使用した飛翔体は、①有人小型ヘリコプター:ロビンソン社R44、②ガソリンエンジン搭載ラジコンヘリコプター:YAMAHA/RMAX、③電動マルチコプター:ミニサーベイヤーMS-06L、である。MS-06Lは千葉大学野波研究室が開発した6ローター、自律制御可能なマルチコプターであり、ペイロードは5kgである。②、③はラジコンで制御するUAV(Unmanned Areal Vehicle)である。
使用した計測機器は、①ビデオカメラ:民生用デジタルビデオカメラ、②ハイパースペクトルカメラ:エバ・ジャパン製NH-7、③空間線量率計測システム:ホットスポットファインダーHSF、である。HSFはHSF1(製造:SQR株式会社、販売:ポニー工業株式会社)をベースとし、UAV計測のために改良した機器である。改良点は装置の設置制約への対応と、ソフトウエアの変更(データ自動取得プログラム)である。
有人ヘリコプターにはビデオカメラ、ハイパースペクトルカメラを専用ジンバルを用いて据え付け、鉛直下方の撮影を行った。ハイパースペクトルカメラは静止画像撮影とプッシュブルーム方式による撮影を行い、高空間分解能オルソ空中写真の作成および土地被覆分類のためのハイパースペクトル画像の取得を行った。
2013年8月から11月の間に、山木屋地区において実施したフィールドキャンペーンではHSFをYAMAHA/RMAXとMS-06Lに搭載し、様々な土地利用、土地被覆を対象にして空間線量率の測定を行った。YAMAHA/RMAXではその積載能力を活かし、ウィンチに接続したケーブルに2個のシンチレータを3m間隔で搭載し、その間の空間線量率を計測することにより、高度に伴う空間線量率減衰の理論値からのずれを確認することが可能となった。YAMAHA/RMAXは空間線量率の三次元分布と、その場所による違いの計測、および森林の樹冠上の空間線量率の計測も行った。ミニサーベイヤーはその機動性を活かして、広大な平地の連続測定、建物の屋根、河岸等における計測も行った。
有人ヘリコプターで取得したビデオ画像は1秒ごとに自動キャプチャーし、約1000シーンごとに写真計測ソフトウエアであるAgisoft Photoscanを用いてモザイク処理、オルソフォト化を行った。今回は撮影に有人ヘリを用いたが、UAVによる撮影画像の利用が可能である。ハイパースペクトルカメラによる画像は教師なし分類手法による判別により、樹種、屋根、道路等の材質、等を区分することが可能であることを確認した。
今回のキャンペーンにより、低コストかつオンデマンドによる地域の画像撮影、空間線量率計測が可能であることが明らかとなった。今後の課題は現場への実装である。引き続き、川俣町山木屋地区において地域と協働で計測を継続し、環境回復、帰還、復興の目的を共有した枠組みの中でリモートセンシングの役割を果たしていきたいと考えている。
その基本的な目標は航空機モニタリングや幹線道路沿いの走行サーベイでは明らかにすることができない里山流域単位の詳細な空間線量率マップを作成することである。山村における暮らしは里山における水・物質循環に依存しており、暮らしと関わりを持つ範囲が里山流域だからである。そこで、空間線量率計とGPSを同期させて、山林斜面を歩く歩行サーベイの手法を確立させ、山木屋地区北部の山地斜面で空間線量率の詳細な分布を計測した。
その結果、山木屋地区北部の山地斜面の空間線量率は、①高標高域で高い、②東電福島第一原発方向(東南方向)の斜面が高い、③常緑針葉樹林の空間線量率が高い、といった規則性も明らかになったが、空間的な不均質性も大きく、対象地域ごとに調査を行う必要性が生じてきた。
山林斜面の歩行サーベイは詳細な空間密度分布を得る効率的な手法であるが、現場ではクマザサや有刺木本のため歩行が困難な場所も多い。田畑においても避難実施後繁茂した雑草群落の中の歩行は困難を極める。そこで、飛翔体による空間線量率の測定を試みた。
使用した飛翔体は、①有人小型ヘリコプター:ロビンソン社R44、②ガソリンエンジン搭載ラジコンヘリコプター:YAMAHA/RMAX、③電動マルチコプター:ミニサーベイヤーMS-06L、である。MS-06Lは千葉大学野波研究室が開発した6ローター、自律制御可能なマルチコプターであり、ペイロードは5kgである。②、③はラジコンで制御するUAV(Unmanned Areal Vehicle)である。
使用した計測機器は、①ビデオカメラ:民生用デジタルビデオカメラ、②ハイパースペクトルカメラ:エバ・ジャパン製NH-7、③空間線量率計測システム:ホットスポットファインダーHSF、である。HSFはHSF1(製造:SQR株式会社、販売:ポニー工業株式会社)をベースとし、UAV計測のために改良した機器である。改良点は装置の設置制約への対応と、ソフトウエアの変更(データ自動取得プログラム)である。
有人ヘリコプターにはビデオカメラ、ハイパースペクトルカメラを専用ジンバルを用いて据え付け、鉛直下方の撮影を行った。ハイパースペクトルカメラは静止画像撮影とプッシュブルーム方式による撮影を行い、高空間分解能オルソ空中写真の作成および土地被覆分類のためのハイパースペクトル画像の取得を行った。
2013年8月から11月の間に、山木屋地区において実施したフィールドキャンペーンではHSFをYAMAHA/RMAXとMS-06Lに搭載し、様々な土地利用、土地被覆を対象にして空間線量率の測定を行った。YAMAHA/RMAXではその積載能力を活かし、ウィンチに接続したケーブルに2個のシンチレータを3m間隔で搭載し、その間の空間線量率を計測することにより、高度に伴う空間線量率減衰の理論値からのずれを確認することが可能となった。YAMAHA/RMAXは空間線量率の三次元分布と、その場所による違いの計測、および森林の樹冠上の空間線量率の計測も行った。ミニサーベイヤーはその機動性を活かして、広大な平地の連続測定、建物の屋根、河岸等における計測も行った。
有人ヘリコプターで取得したビデオ画像は1秒ごとに自動キャプチャーし、約1000シーンごとに写真計測ソフトウエアであるAgisoft Photoscanを用いてモザイク処理、オルソフォト化を行った。今回は撮影に有人ヘリを用いたが、UAVによる撮影画像の利用が可能である。ハイパースペクトルカメラによる画像は教師なし分類手法による判別により、樹種、屋根、道路等の材質、等を区分することが可能であることを確認した。
今回のキャンペーンにより、低コストかつオンデマンドによる地域の画像撮影、空間線量率計測が可能であることが明らかとなった。今後の課題は現場への実装である。引き続き、川俣町山木屋地区において地域と協働で計測を継続し、環境回復、帰還、復興の目的を共有した枠組みの中でリモートセンシングの役割を果たしていきたいと考えている。