日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT34_28PM1] 地理情報システム

2014年4月28日(月) 14:15 〜 16:00 422 (4F)

コンビーナ:*小口 高(東京大学空間情報科学研究センター)、村山 祐司(筑波大学大学院生命環境科学研究科地球環境科学専攻)、柴崎 亮介(東京大学空間情報科学研究センター)、吉川 眞(大阪工業大学工学部)、座長:吉川 眞(大阪工業大学工学部)、村山 祐司(筑波大学大学院生命環境科学研究科地球環境科学専攻)

15:45 〜 16:00

[HTT34-07] 近代大阪の歩みと変遷景観

*西本 貴洋1吉川 眞2田中 一成2 (1.株式会社ニュージェック、2.大阪工業大学工学部)

キーワード:近代化, 変遷景観, 梅田, 旧淀川

現代日本における大都市の多くは明治期以降の近代化で目覚ましい成長を遂げた.とくに第二次大戦後の戦災復興や高度経済成長を経て,都市の空間構造は劇的に変化している.そのため,近代化の過程で築き上げられた往時の景観を現代都市空間においてうかがい知ることが困難となりつつある.このような背景のもと,都市基盤整備が沈静化した近年,わずかに現存する歴史環境を活用したまちづくりや観光事業が数多く展開されており,歴史に対する関心が少しずつ高まりをみせている.つまり,都市の資産として歴史環境を保全・復元することが今後ますます重要になるといえる.一方,高度情報化社会の真っ只中にある近年では空間情報技術も急速に普及し,GISの利用がより身近になっている.とくに,変遷分析のような長期的な時空間情報の処理を可能とすることから,歴史研究の分野においてGISが有効なツールとして活用されている.研究の対象地となる大阪は江戸期より水辺を活用することで水都として栄えたが,今では関西圏の公共交通機関の結節点が集積し,高層ビルが林立する近代都市へと変化している.そこで,本研究ではGISやCAD/CGといった空間情報技術を活用することで,近代化をはじめる明治期以降の大阪の歴史的変遷を明らかにする.くわえて,近代化の過程で発生・消失した都市空間を再認識するとともに歴史環境として復元することを目指している.都市変遷を把握するにあたって,その長期にわたる変化を効率良く整理することが必要となる.そこで,近代化の兆候が見られはじめる明治中期,後期,大正期,昭和初期,戦後復興期,高度成長期の6期を本研究で用いることにした.これら地形図より市街地と湿地を読み取り,空間データを作成した.このデータと過去に作成された河川・鉄道データベースを用いることで都市変遷データベースを構築した.本データベースを用いて変遷を示した結果,現在,大阪市内で最大流域を誇る淀川は明治後期に形成された河川であることが把握できた.そして,明治初期から戦前までは梅田に堂島掘割が形成されており,現代とは異なる特徴的な空間が形成されていたことが考えられる.さらに,市街地に着目すると,梅田を中心とする旧淀川右岸地域はほか地域と比べてもいち早く市街化している.それと同時に,既成市街地内では近代化にともない頻繁に市街地の更新が起きており,旧淀川流域周辺では景観的にも変化が生じている可能性があると推測された.これらの結果から,本研究では梅田,旧淀川流域に着目し,3次元都市モデルを構築することで変遷景観シミュレーションを行うことにした.都市モデルの構築にあたって,まず,地形モデルを作成した.作成範囲は先行研究の知見である大阪の最大視認距離を考慮した140km四方を参考に,数値地図250m(標高)と数値地図50m(標高)を併用して作成した.地物モデルは,CAD/CGにより代表的地物と町家モデルを作成している.なお,代表的地物として梅田では大阪駅,旧淀川流域では造幣局を選定し,史料をもとに詳細に復元した.シミュレーションを行った結果,近代化にともなう梅田と旧淀川流域の変遷景観を可視化させることができた.本研究では空間情報技術を用いたことで近代化にともなう大阪の変遷を明らかにし,3次元景観シミュレーションによって近代化にともなう歴史的変遷を視覚化した.くわえて,大阪の歴史環境として3次元都市モデルを構築し,デジタルアーカイブとして復元した.今後の課題として,把握した大阪の変遷過程をアニメーションに展開し,表現力豊かな意思伝達ツールを構築することが必要である.また,歴史環境としてストックした3次元モデルの精度向上の必要性が挙げられる.