日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT34_28PM2] 地理情報システム

2014年4月28日(月) 16:15 〜 17:06 422 (4F)

コンビーナ:*小口 高(東京大学空間情報科学研究センター)、村山 祐司(筑波大学大学院生命環境科学研究科地球環境科学専攻)、柴崎 亮介(東京大学空間情報科学研究センター)、吉川 眞(大阪工業大学工学部)、座長:吉川 眞(大阪工業大学工学部)、小口 高(東京大学空間情報科学研究センター)

17:00 〜 17:06

[HTT34-P01_PG] 中国・陝北および隴東黄土高原における土地利用変化とその特徴

ポスター講演3分口頭発表枠

*原 裕太1 (1.京都大学大学院地球環境学舎)

キーワード:黄土高原, 土地利用変化, Landsat, ArcGIS

中国西北部に位置し、黄河中流域の多くを占める黄土高原は、土壌侵食、砂漠化、両者にともなう経済的課題を抱えている。水食は農地の減少を招き(松永2013)、生態系を破壊し、農・林・牧業に深刻な打撃を与えている(斉藤2008a)。また、土砂の流入による黄河下流域の洪水危険性の増大や黄海沿岸の生態系への影響を生じさせている(福嶌・谷口編2008)。これらに対処すべく、1990年代末以降、急傾斜地での農牧業を停止して樹木を植栽する退耕還林が開始された。しかし、モデル地区では良い成果が得られている一方、実質的効果の薄い地域も多い(斉藤2008b)。これは、広大な黄土高原において、各地域の自然的・人文社会的背景が多様である(たとえば、黄1955;E. Derbyshire and X. Meng 2000;高山・木村2008;山中・安田2008)ためにほかならず、解決のためには空間的視点が必要である。
 2000年以降、黄土高原ではいくつかの土地利用研究がなされてきた(たとえば、張ほか2012;劉ほか2012;朱ほか2008)。これにより、退耕還林による緑化の進行を量的に示すことに成功した。一方で、対象地域は流域ごとに分かれ、比較時期も統一されていない。また、1980年代以降の2つの年度を比較することに止まっている。それは上記に代表される研究の主眼が主として退耕還林の評価に置かれているためであり、黄土高原全域で地表面の変化がどう推移してきたのかは、定量的にはあまり明らかになっていない。
 本研究では、リモートセンシング技術を用い、陝北・隴東地域全域を対象として、黄土高原における土地利用変化を明らかにするとともに、草地・森林変化を軸とした地域区分を試みた。使用した衛星画像はLandsat/MSS、TMである。各画像について最尤法による教師つき分類を行った後、ArcGISを用いて論理和結合演算を行い分析した。
 その結果、1. 子午嶺と黄龍山において森林の変化に相反する違いがあること、2. モウス(Mu Us)沙地との隣接地域内で砂漠化の程度に複数の差があること、3. 黄土丘陵ガリ区内では90年代以降陝西省・甘粛省の行政界を境として砂漠化に相反する変化が明瞭に存在することを明らかにした。さらに、SRTM等を用いて地域差に起因する第一ファクターを推定した。今後、これらの成果をメカニズム論へと移行させることによって、各地域においてネガティブな変化を構成する主要素を抽出し、土壌侵食、砂漠化の抑制へと繋げていくことが可能となる。