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[MAG38-05] 土壌および森林からの放射性セシウムの再飛散
平成23年3月の東京電力福島第一原子力発電所事故によって、環境中に放出された放射性セシウムなど放射性物質は、土壌、植生、海洋に沈着するとともに、今も様々に形を変えつつ環境中を移動=移行している。大気による移行は、風によってすばやく広域に輸送・拡散させるという特徴をもつ。放射性セシウムの大気再飛散は、その刊行中の以降において無視できない役割を果たしていると考えられる。 我々のグループでは、福島県川俣町および浪江町といった比較的放射性セシウム沈着量が多い地区で、この再飛散の重要性、再飛散のメカニズムおよび再飛散量を明らかにすべく研究調査を行っている。放射性セシウムが土壌中の粘土鉱物に強く固定されていることから、当初は土壌粒子が風で舞い上がることにより再飛散が引き起こされているのではないかと予想された。しかし、大気放射能濃度の変動が土壌粒子の飛散とは異なることから、そう単純ではないことが明らかになった。ようやく最近、季節により再飛散の担い手もメカニズムも違っていることがわかってきた。浪江町でサンプルされた大気浮遊粒子の粒径別のセシウム137の放射能濃度を調べると、福島県で積雪がある12-2月(降雪期)、梅雨入り前の3-5月(春季)、梅雨入り以降の6-9月(夏季)で異なる様相を示すことがわかった。降雪期には粒径1μm以下の微小粒子に放射性セシウムが集中し、春季には微小粒子の他に粒径4μm以上の粗大粒子にも放射性セシウムが分布し、夏季には粗大粒子に集中していることがわかる。粗大粒子を電子顕微鏡で観察すると、春季は土壌粒子がほとんどを占め、夏季には有機物粒子が主であり起源が異なることがわかった。春季には、比較的乾燥した地表から放射性セシウムを含む土壌粒子が飛散しているのに対し、夏季には森林から植物破片や花粉、胞子などの形で放出される粒子に、放射性セシウムが付着していると思われる。現在、冬季から春季の微小粒子について放射性セシウムの担体を明らかにすること、また季節毎に再飛散量を定量化するための研究を進めている。土壌および森林からの放射性セシウムの再飛散について、最新の結果を講演会時に報告したい。