10:00 〜 10:15
[MAG39-05] 反射法地震探査・重力異常からみた首都圏の伏在断層の分布と構造
近年増加しつつある深部構造探査データによって、首都圏にはいくつかの伏在断層が分布することが分かってきた。これらの中には、地形的な表現は微弱であり、これまで存在そのものが知られていなかったか、活断層として扱われてこなかったものもある。これらの構造は、活動的なものであっても長期的なすべり速度は非常に小さいと考えられるが、ひとたび活動すれば甚大な被害を首都圏にもたらす可能性がある。このようないわゆる活動度C級以下の低活動度の断層については、活動性に関するデータを得ること自体が容易ではないため、過去の活動履歴などに基づく地震発生予測を行うことが困難である。したがって、従来の地形地質学的な手法からは第四紀後期の活動性に関する証拠に乏しい構造についても、可能な限りその分布や過去の活動に関する情報をまとめることは、首都圏の直下型地震に関するテールリスクを考える上では有用であろう。Ishiyama et al. (2013)では、反射断面と周辺地域の新生代層序の対比の結果に基づき、大宮台地や武蔵野台地縁辺部に分布する伏在断層の深部形状について検討を行った。本研究では、深部構造探査データに加えて、重力異常等のデータに基づき、より詳細な関東平野南部に分布する伏在断層の深部形状について検討を行った。大大特・北関東測線の深部構造探査の結果(佐藤ほか,2010)によると,北関東測線が延びる青梅から春日部にかけての区間では,地下に半地溝構造(ハーフ・グラーベン)がいくつか認められる.これらは,既往の反射断面で見出された,前期-中期中新世の半地溝構造と同時期に形成されたと考えられる。このうち,綾瀬川断層については、東傾斜と西傾斜の正断層2条が大宮台地の地下に存在し,このうち西傾斜の正断層が最近の地質時代に逆断層として再活動したものとみられる。また、野田隆起帯(貝塚,1987)と大宮台地の西側にあたる武蔵野台地北東縁部の地下にも半地溝構造が認められ(Ishiyama et al., 2013)、いずれも鮮新世から更新世にかけて反転した可能性がある。これに対応して、深層ボーリング等に基づく武蔵野台地?東京低地の断面から地下に上総層群上部の撓曲構造が伏在するとされる(遠藤・中村,2000)。一方、より最近の変動については、武蔵野台地の段丘地形が北東向きの傾動を受けているとする考え(貝塚,1957)がある。貝塚(1957)は武蔵野台地の傾動をその北東縁部全体に認めているが、ブーゲー重力異常の一次微分を見る限り、ハーフグラーベンは武蔵野台地北東縁部全体には連続せず、長さ20kmほどに限られる。したがって、武蔵野台地北東縁部の傾動がこのような正断層の反転によって形成されているとしても、複数の雁行する伏在断層の活動による可能性が高い。これらの結果は、関東平野南部においては中新世に形成されたハーフグラーベンの再活動が広汎に認められることを示しており、地球物理学的手法により平野下に伏在するハーフグラーベンの分布や構造を把握することが、伏在断層の検出する上で一つの鍵となると考えられる。ただし、ハーフグラーベンが全て再活動しているわけではなく、再活動の証拠やその地質時代の検討をあわせて行う必要がある。このほか、活動的な証拠には乏しいものの、地下構造データによってその存在が推定される首都圏の伏在断層の構造的な特徴についても紹介する。