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[MAG39-10] 首都圏における過去の大地震―将来の発生確率や被害の予測へ向けての課題―
キーワード:首都圏, 歴史地震, 関東地震, 長期予測
首都圏で過去に発生し,将来も発生する地震のタイプとしては,相模トラフ沿いのプレート間地震(M8クラス)と南関東直下の地震(M7クラス)が挙げられる.1923(大正十二年)年9月1日の大正関東地震(M 7.9),1703年12月31日(元禄十六年十一月二十三日)関東地震(M 8.2程度)は前者の例であり, 1855年11月11日(安政二年十月二日)安政江戸地震(M7.0程度)が後者の例である.相模トラフ沿いのプレート間地震については,最近,内閣府や地震調査委員会によって震源域が見直され,最大規模はM 8.6程度に達し,1703年元禄関東地震がほぼこれに匹敵するとされた.元禄関東地震の前の関東地震についてはよく知られていなかったが,津波堆積物調査などから1293年5月20日(ユリウス暦)正応六・永仁元年四月十三日の地震が関東地震であったとされている(Shimazaki et al., 2011, JGR).さらに,これまで明応七年(1498年)の南海トラフの地震の誤記とされてきた1495年9月3日(明応四年八月十五日)の地震が相模トラフの地震であった可能性も指摘されている(金子,2012, 伊東市研究).歴史資料や津波堆積物の研究によって関東地震の履歴が明らかになりつつあるが,それぞれの地震の震源域や国府津―松田断層の地震との連動性など,繰り返すプレート間地震の多様性を調べる必要がある. 首都圏直下の地震として,以前はフィリピン海プレートの上面における「東京湾北部地震」が想定されていたが,2013年の内閣府の想定では,フィリピン海プレート内部に震源を持ち,安政江戸地震と同じような震度分布をもたらすものが想定地震として使われた.安政江戸地震の震源については歴史資料に基づく被害・震度分布から検討され,地殻内地震から深さ100 km程度の太平洋プレート内部の地震まで,様々な可能性が指摘されている.関東地域における震度分布は地下構造・地盤構造の影響を強く受けるため,安政江戸地震の正確な地震像の解明には,最近の地震との比較や最新の3次元地下構造モデルによるシミュレーションなどが必要であろう. 南関東のM7クラス地震について地震調査委員会(2004)は,1885年以降に発生した5個のM7クラスの地震(1894年6月20日明治東京地震,1895年1月18日茨城県南部の地震,1921年12月8日茨城県南部の地震,1922年4月26日浦賀水道付近の地震,ならびに1987年千葉県東方沖の地震)に基づき,今後30年間におけるM7クラスの地震の発生確率をポアソン過程に基づいて70%程度と推定した.これら5地震のうち,少なくとも3個(1921年,1922年, 1987年の地震)はフィリピン海プレート内で発生した地震,1895年の地震は太平洋プレート内で発生した地震であることが明らかとなった(石辺・他,2012,予知連会報).長期評価の高度化のためには,さらに長期間の地震について,歴史資料などに基づく調査を実施して,これらの震源・深さ・タイプを解明する必要がある.