日本地球惑星科学連合2014年大会

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ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-AG 応用地球科学

[M-AG39_1PO1] 都市の脆弱性が引き起こす激甚災害の軽減化プロジェクト

2014年5月1日(木) 18:15 〜 19:30 3階ポスター会場 (3F)

コンビーナ:*平田 直(東京大学地震研究所)、佐藤 比呂志(東京大学地震研究所地震予知研究センター)、佐竹 健治(東京大学地震研究所)、鶴岡 弘(東京大学地震研究所)、堀 宗朗(東京大学地震研究所)、酒井 慎一(東京大学地震研究所)

18:15 〜 19:30

[MAG39-P01] メガスラスト直下のスラブ構成岩石:伊豆衝突帯

*石川 正弘1 (1.横浜国立大学環境情報研究院)

キーワード:衝突帯, スラブ

フィリピン海プレートは本州の下に沈み込む.しかし,フィリピン海プレートの東縁には伊豆小笠原マリアナ弧が存在するために,フィリピン海プレートの沈み込みに伴う関東周辺のテクトニクスは複雑になっている.南関東の東部(房総半島や三浦半島周辺)では付加体が発達する一方,南関東の西部(丹沢山地等)では伊豆小笠原弧の地殻物質が大規模に衝突付加している(伊豆衝突帯).フィリピン海スラブ上面は関東地震震源断層に相当する可能性が高く(Sato et al., 2005),伊豆衝突帯は大正関東地震の震源域であったと推測されている.したがって,フィリピン海プレートと陸側プレートの接合部周辺の地殻の構成物質と物性を推測することは, 首都直下地震を考察する上でも重要である.今回の発表では,岩石の弾性波速度実験と岩石の鉱物組み合わせの相平衡計算の結果に基づき,伊豆衝突帯直下のスラブ構成岩石を検討した.
 フィリピン海プレート東縁に分布する伊豆小笠原弧の地殻構成は伊豆衝突帯の地殻構造を理解する上で重要な鍵となる.本研究では最初に弾性波速度測定実験から得られた丹沢山地等に産する深成岩類のP波速度とSuyehiro et al. (1996)の北部伊豆小笠原弧のP波速度構造を比較した.その結果,トーナル岩のP波速度は伊豆小笠原弧中部地殻のP波速度と同程度であり,トーナル岩が伊豆小笠原弧中部地殻の主要構成岩石であると推測した.また,角閃石はんれい岩とガブロノーライトのP波速度と伊豆小笠原弧で得られたP波速度を比較すると,下部地殻上層の主要構成岩石として角閃石はんれい岩を,また,下部地殻の主要構成岩石として角閃石輝石はんれい岩やガブロノーライトが推測された.伊豆小笠原弧の構成岩石モデルとSato et al.(2005)の伊豆衝突帯の地殻構造を総合的に解釈すると,伊豆小笠原弧の下部地殻(角閃石はんれい岩等の苦鉄質岩石)は熱いスラブ(熱い下部地殻)として沈み込んでいると推測される.丹沢山地のはんれい岩の化学組成を用いて岩石の鉱物組み合わせの相平衡計算をTheriak-Dominoを用いて計算した結果,熱いスラブの沈み込みに伴い含水鉱物である角閃石の脱水は30km以浅で脱水してしまうと考えられる.スラブの脱水によって脱水脆性化を引き起こすと期待されるが,実際に丹沢山地下では微小地震が沈み込むスラブ内で発生している.一方,丹沢山地北部や関東山地ではスラブ内の微小地震がほとんど発生していないことも,脱水反応によってグラニュライトに相転移した非震性スラブとして解釈できる.