日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-AG 応用地球科学

[M-AG39_1AM1] 都市の脆弱性が引き起こす激甚災害の軽減化プロジェクト

2014年5月1日(木) 09:00 〜 10:45 502 (5F)

コンビーナ:*平田 直(東京大学地震研究所)、佐藤 比呂志(東京大学地震研究所地震予知研究センター)、佐竹 健治(東京大学地震研究所)、鶴岡 弘(東京大学地震研究所)、堀 宗朗(東京大学地震研究所)、酒井 慎一(東京大学地震研究所)、座長:石辺 岳男(東京大学地震研究所)、橋間 昭徳(東京大学地震研究所)

10:30 〜 10:45

[MAG39-P03_PG] JUNEC初動メカニズム解カタログの公開

ポスター講演3分口頭発表枠

*石辺 岳男1鶴岡 弘1佐竹 健治1中谷 正生1 (1.東京大学地震研究所)

キーワード:初動メカニズム解, 国立大学観測網地震カタログ(JUNEC)

国立大学観測網地震カタログ(JUNEC)のP波初動ならびにHASH (Hardebeck and Shearer, 2002) に修正を加えたプログラムを用いて,1985年7月から1998年12月までに日本で発生した14,544個の地震のメカニズム解を推定し,JUNEC初動メカニズム解カタログ(JUNEC FM2)として公開した.JUNECは東京大学地震研究所によるftpサイト(ftp://ftp.eri.u-tokyo.ac.jp/pub/data/junec/hypo/)に,初動メカニズム解カタログは (ftp://ftp.eri.u-tokyo.ac.jp/pub/data/junec/mech/)にそれぞれ公開されている.東京大学地震研究所は,1985年7月から1998年12月まで国立大学により運営されてきた地震予知観測情報ネットワークで得られた検測データを統合処理し,JUNECを公開してきた.その地震数は約190,000個に及ぶ.
このカタログは稠密地震観測網・自動波形データ転送システムの発展前の期間に発生した微小地震(M2.0以上)に対するメカニズム解を豊富に含むため,当時の起震応力場の解明などに有効な情報となり,また近年の地震のメカニズム解と併せることで時空間的な起震応力場の不均質を議論することが可能になると考えられる.豊富な数から統計的な解析にも有用であろう.ただし,推定されたメカニズム解の分布は,観測網の展開ならびにそれぞれの観測点における初動報告率(初動報告数 / 検測数)を反映して,時空間的に不均質であることに留意する必要がある.本研究で推定されたメカニズム解は,防災科学技術研究所で決定されたF-netモーメントテンソル解や,気象庁による初動メカニズム解と大局的に調和的であるが,顕著に異なる地震も若干見られる.
日本では,1995年兵庫県南部地震(気象庁マグニチュード7.3)以降に高感度地震観測網(Hi-net)が展開され,豊富な初動メカニズム解が推定されるようになった.また1997年以降,広帯域地震観測網(F-net)の展開ならびにデータ転送システムの向上によって防災科学技術研究所によりモーメントテンソル解が決定・公開されている.これらのメカニズム解は断層構造や地域的な起震応力場の理解に活用されている.一方で,これらの地震観測網が展開される前に発生した地震に対するメカニズム解カタログは非常に限られる(例えばIchikawa, 1961, 1971).2011年東北地方太平洋沖地震(気象庁によるモーメントマグニチュード9.0)の発生後に,特に震源域およびその周辺においてメカニズム解分布が顕著に変化したことが報告されており,このことは起震応力場が時間的に変化した可能性を示唆する.したがって,可能な限り遡って地震のメカニズム解を決定し,カタログ化することは中長期的かつ時空間的なメカニズム解あるいは起震応力場の不均質を解明するうえで重要である.

謝辞:メカニズム解の推定にはHASH (Hardebeck and Shearer, 2002)に修正を加えたものを使用させて頂いた.また,北海道大学,弘前大学,東北大学,東京大学地震研究所,名古屋大学,京都大学防災研究所,高知大学,九州大学,鹿児島大学の観測網で観測された検測値,ならびに防災科学技術研究所,気象庁が決定したメカニズム解を使用させて頂いた.ここに記して感謝申し上げる.なお,本研究の一部は科学技術振興費「都市の脆弱性が引き起こす激甚災害の軽減化プロジェクト」の一環として実施された.