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[MIS21-13] 安定同位体比によって測定された栄養構造が示す生物多様性指標について
キーワード:安定同位体比, 食物網, 栄養段階
「生物多様性」は、遺伝子レベル、種レベル、生態系レベルの多層的な多様性と考えられている。しかし、任意のレベルの多様性を記述するのは困難であり、通常は種レベルの多様性評価が行われる。種レベルの多様性は、生態系機能とのつながりがそのままでは評価できないため、たとえば河川生態学では「摂食機能群(FFG)」などの取りまとめ方で機能の評価が行われてきた。われわれは、環境研究総合推進費プロジェクト研究(4D-1102)において、安定同位体比を基にして、特に集水域河川の生物多様性の機能的側面を評価する手法の検討を行った。安定同位体手法は、森林、河川、湖、沿岸帯生態系を含む集水域の生態学における栄養塩循環や食物網構造の研究に用いられてきた。近年、アミノ酸窒素同位体比が動物の栄養段階推定に用いられてきている。しかし、本手法は水域生産と陸域生産の混合があるような複雑な淡水生態系においては用いられてこなかった。本研究において、バルク同位体比が適用できないような系でも本手法を用いることができることを確かめた。これらの手法は、生物標本を用いた生態系の長期変化にも用いることができる。また、放射性炭素を用いることにより、淡水生態系における炭素起源を推定することもできる。これらの安定同位体比によって測定された栄養構造を、個々の分類群の定量バイオマス調査とともに用いることにより、集水域河川の新たな生物多様性指標について提案する。