日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS21_28PM2] 生物地球化学

2014年4月28日(月) 16:15 〜 18:00 511 (5F)

コンビーナ:*楊 宗興(東京農工大学)、柴田 英昭(北海道大学北方生物圏フィールド科学センター)、大河内 直彦(海洋研究開発機構)、山下 洋平(北海道大学 大学院地球環境科学研究院)、座長:和穎 朗太(農業環境技術研究所 物質循環研究領域)、仁科 一哉(国立環境研究所)、稲垣 善之(森林総合研究所)、藤井 一至(森林総合研究所)

16:45 〜 17:00

[MIS21-21] 炭化板を用いた大気中水銀用パッシブサンプラーの開発

*大熊 明大1佐竹 研一1 (1.立正大学 地球環境科学部)

キーワード:水銀, 炭化板, 簡易パッシブサンプラー, 大気汚染モニタリング

[はじめに] 水銀は有害物質である事からUNEPやWHOなどの機関で水銀の使用量や放出量の削減を求めている。その結果、世界的には減少傾向にあるが、東南アジアや中国などの経済発展の著しい国ではライフラインの確保のために火力発電所の増設、金の採掘や精錬に水銀の需要が高まり水銀の放出量が増加していることが報告されている。大気中に放出された水銀の95%以上がガス状水銀(Hg0)であり、溶解度が低いため大気中での滞留時間が1~2年と長い。そのため、発生源から遠く離れた地域においても影響を及ぼす事が指摘されている。また、大気から地表面へ降下した水銀は毒性のより強い有機水銀となり、食物連鎖によって生物濃縮され、生態系や人体に影響を与えることが懸念されており、そのため大気中水銀のモニタリングは重要である。現在の大気中水銀のサンプリング方法は500mL min-1で吸引し金アマルガム粒子充填管に吸着させるアクティブサンプラーである。しかし、高価で維持管理が難しく、設置スペースや電源の制約もあり、広範囲にわたる調査が難しい事が多い。本研究では、炭の吸着能に着目し、大気中水銀用の簡易パッシブサンプラーを作成し、試験した。[研究方法]2.5cm×4.5cm×1.5cmに杉心材を加工し、電気炉を用いて300℃で2時間加熱し炭化板を作成し、両面テープを直径5.5cmのアクリル製シャーレに貼り付け北海道大学雨龍研究林、北海道大学札幌キャンパス、立正大学熊谷キャンパス、群馬県六合入山、金沢大学、鳥取大学、広島大学東広島キャンパス、タイのChiang Mai大学に設置し、1ヶ月間毎に回収し合計3ヶ月間分の測定を行った。また、埼玉県環境科学国際センターでは1ヶ月間毎に回収し合計5ヶ月間分の測定し並行して、また並行して金アマルガム捕集管に吸引捕集し、設置期間中の大気中水銀濃度を測定した。[結果] 全ての設置地点において月日の経過と伴に水銀沈着量が増加した。埼玉県環境科学国際センターで行った結果、炭化板中の水銀沈着量は0.39(33日間)、0.44(64日間)、0.63(95日間)、0.86(127日間)、0.91(158日間)ng Hg cm-2であり、相関係数が0.95であった。設置期間中の大気中水銀濃度は2.0~2.6ng Hg m-3と略安定していた事から、大気中水銀濃度が安定している大気では、安定した沈着速度で炭化板に沈着する事がわかった。実際の大気中水銀濃度に対する応答性を調べた結果y=14.7x、相関係数0.95と良好な相関が認められた。これらの結果から、炭化板は大気中水銀用パッシブサンプラーとなる可能性があり、アクティブサンプラーでは困難な場所での調査にも使用可能である事がわかった。