日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS21_28PO1] 生物地球化学

2014年4月28日(月) 18:15 〜 19:30 3階ポスター会場 (3F)

コンビーナ:*楊 宗興(東京農工大学)、柴田 英昭(北海道大学北方生物圏フィールド科学センター)、大河内 直彦(海洋研究開発機構)、山下 洋平(北海道大学 大学院地球環境科学研究院)

18:15 〜 19:30

[MIS21-P05] 北海道北部冷温帯林における皆伐が集水域からのイオン成分とDOCの流出に及ぼす影響

*福澤 加里部1柴田 英昭1高木 健太郎1野村 睦1 (1.北海道大学・北方生物圏FSC)

キーワード:硝酸, DOC, 陽イオン, ササ, 河川流量

森林伐採とその後のササ筋刈りが森林集水域での生物地球化学的プロセスに及ぼす影響を明らかにするため、北海道北部の天塩研究林において撹乱前後の河川水中のイオン各種と溶存有機炭素(DOC)濃度を調べた。2003年1-3月に8ha集水域を沢筋を残して皆伐した。2003年10月にササ筋刈りを行い、その直後にササを刈り取った列にカラマツ苗を植栽した。2002年-2013年に2週間または3週間ごとに河川水を採取した。皆伐後の生育期間には河川水のNO3-濃度の上昇はなかった。その後のササ筋刈りにより、有意な濃度上昇がみられ、最大で約15 μmol L-1となった。伐採区域では伐採後にササの細根が樹木の細根減少を補償して全体の細根量は維持されていることも明らかになっている。よってササによる窒素吸収は伐採後の窒素溶脱を緩和するために非常に重要であり、ササ刈り取り後のササの窒素吸収の減少が河川への窒素溶脱を引き起こしたことが示唆された。しかしその後河川水のNO3-濃度は季節や年により0.1以下から20 μmol L-1 以上の範囲で変動し、特に2007年には年間を通して高い値を維持した。河川水のNO3-濃度は処理前の濃度レベルには戻らなかった。陽イオン(K+, Na+, Ca2+, Mg2+)濃度やpHは河川流量の変化に起因する変動が大きく、伐採よる変化はなかった。一方NH4+はほとんど検出限界以下であったが、2007年に検出され、NO3-の濃度上昇と同調した。河川水中のDOC濃度は皆伐およびササ筋刈り後に変化せず、処理の前後とも夏後半にピークをもつ明瞭な季節変化があった。DOC濃度は、5月後半から8月にかけての流量が少ない生育期に上昇し、その後流量が増加する秋に低下したことから、夏後半以降の流出量の増加に伴う希釈効果により河川水のDOC濃度は低下したことが示唆された。しかし、DOC濃度は基底流量で安定している冬季に低かったことから、初夏の高温が土壌でのDOC生産を促進し、この時期のDOC濃度を高めていると考えられた。皆伐およびササ筋刈りがDOCの流出に影響しなかったのは、伐採区域でのDOCの土壌への吸着による可能性がある。これらの結果から、冷温帯域の傾斜が緩やかな集水域において、NO3- とDOC の伐採に対する応答が異なっていたのは、それぞれの排出源が異なることによると考えられた。