日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS21_28AM2] 生物地球化学

2014年4月28日(月) 11:00 〜 12:45 511 (5F)

コンビーナ:*楊 宗興(東京農工大学)、柴田 英昭(北海道大学北方生物圏フィールド科学センター)、大河内 直彦(海洋研究開発機構)、山下 洋平(北海道大学 大学院地球環境科学研究院)、座長:高野 淑識(海洋研究開発機構)、長尾 誠也(金沢大学環日本海域環境研究センター)、陀安 一郎(京都大学生態学研究センター)、岩田 智也(山梨大学生命環境学部)

12:00 〜 12:15

[MIS21-P06_PG] 微生物起源物質は分解産物の生化学的共通性をもたらす

ポスター講演3分口頭発表枠

*保原 達1阿江 教治1長谷川 裕己1小川 浩史2佐藤 貴之3今井 章雄3Benner Ronald4 (1.酪農学園大学、2.東京大学、3.国立環境研究所、4.サウスカロライナ大学)

キーワード:有機物分解, 土壌, 海洋, アミノ酸, アミノ糖, 分子量分布

様々な自然環境において、生物体などの天然有機物は分解を受け、その結果幾分かの有機物は残り続ける。こうした有機物残渣は、海洋や土壌などでは主要な有機物の存在形態となっており、生態系の様々な機能や役割を担っている。有機物残渣は、由来が様々な生物種、組織、細胞器官など、非常に多岐に渡ることに加え、それらが様々な分解段階にあるものが混在する。それゆえ、その化学的組成の全容を解明することは非常に難しい。そのため、これまでこうした有機物の組成は、起源となる有機物が破砕されてゆく段階でどのような修飾的変化が生じるかに主に関心が注がれてきた。近年、陸上でも海洋でも、起源となる有機物は分解後の非常に短い期間に少なくなくなり、その実質的な部分が微生物に取って代わることが明らかとなってきた。しかしながら、そうした微生物の生成物やその生成過程に焦点を当てた研究は未だ非常に限られている。本研究では、陸域や水域において、分解残渣有機物や有機物の分解に伴う生化学的変化を元に、分解とともに生成する有機物の特徴を明らかにしてゆく。生物体有機物中の主要構成生体分子を調べたところ、アミノ酸のグリシン/リシン比(Gly/Lys)や、アミノ糖のグルコサミン/ガラクトサミン比(GlcN/GalN)などは、生物の種類などにより幅広い値を取り得るのに対し、その分解有機物ではその値が比較的狭い範囲にとどまっていた。陸上土壌においてリターバッグ実験により分解に伴うリターの質の変化をみると、Gly/Lys比は分解につれ増加、GlcN/GalN比は分解につれ減少する傾向が明らかであった。リター分解におけるこうした傾向は、陸上のみならず水域でもみとめられ、このことは、環境によらず分解過程では狭い値への生化学的方向性があることを示唆している。また、こうしたアミノ酸やアミノ糖は、リター分解に伴い純増した成分であり、微生物起源と考えられる。それゆえ、こうした方向性は、リター分解過程において微生物により生成されたものに共通する特徴なのではないかと考えられた。また、土壌や河川中にある溶存態有機物の分子量は、タンパク質ベースで8,000Da前後への一山型分布がみとめられるが、これは起源となる植物体などの抽出物にみとめられる分散型の分布とは明らかに異なる。植物体の分解とともに分子量分布の変化を調べたところ、分散型から一山型への明瞭な分子量分布変化がみとめられ、また8,000Da前後のピークは純増を示していた。このことは、分解とともにこの分子量域に微生物由来の有機物が生成されていることを示唆している。こうした分析結果は、様々な環境条件下において微生物によって生成される有機物には生化学的な共通性が存在することを示唆している。