日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS21_28PO1] 生物地球化学

2014年4月28日(月) 18:15 〜 19:30 3階ポスター会場 (3F)

コンビーナ:*楊 宗興(東京農工大学)、柴田 英昭(北海道大学北方生物圏フィールド科学センター)、大河内 直彦(海洋研究開発機構)、山下 洋平(北海道大学 大学院地球環境科学研究院)

18:15 〜 19:30

[MIS21-P08] スギ林内での斜面に沿った土壌中の無機化・硝化の空間的変動

*加藤 宏有1大手 信人1磯部 一夫1小田 智基1村林 翔2浦川 梨恵子1妹尾 啓史1 (1.東京大学大学院農学生命科学研究科、2.東京大学農学部)

【はじめに】森林や河川生態系を保全していく上で、窒素循環メカニズムの理解は最も重要な課題のうちの一つである。特に窒素の形態変化の過程で、中心的な役割を担っている無機化や硝化の生起条件や環境変化に対する応答の仕組みを理解することは今日でも、大きな課題といえる。森林では土壌中の窒素の無機化や硝化の反応は空間的に変動することが知られており、地形にディペンドした環境条件によって、その空間的配置が制御されているという報告がなされている。本研究は、山地斜面において土壌中の無機化速度および硝化速度の空間的な配置と変動を把握し、それが生じているメカニズムを明らかにすることを目的としている。

【方法】千葉県南部に位置する東京大学千葉演習林、袋山沢試験流域(流域面積0.8ha)のスギ人工林内斜面(斜面長:100m)において,林床の有機物層と鉱質土層 (0-10cm)の試料を採取した。土壌試料の含水率、pHを測定した後、NO3-態,NH4+態窒素の現存量を測定した。実験室における培養条件で、純無機化,硝化速度を測定し、15Nトレーサーを用いた同位体希釈法を用いて総無機化,硝化速度を測定した。

【結果】 重量含水率は斜面上部で低く,斜面下部で高かった。pHは斜面上部では低く,斜面下部では高かった。NO3-の現存量は斜面上部では極めて小さく、斜面下部に向かって増加した。他方、NH4+の現存量は斜面位置による相違はみられなかった。さらに斜面上下で、純無機化・総無機化速度に明瞭な違いは見られないのに対して、純硝化速度・総硝化速度は斜面下部で顕著に増加した。

【考察】観測結果は、有機態窒素の無機化と、NH4+態窒素現存量に斜面上下の顕著な差が見られないのに対して、硝化とNO3-の現存量に明らかな偏在が見られ、硝化が斜面下部のみで生じていることを示していた。この無機化と硝化の斜面での空間配置の違いは、硝化が無機化よりも、斜面位置で異なる物理的な環境条件に対してよりセンシティブである事を示唆している。
今後、両反応の環境に対する偏在性を、微生物群集の環境応答の側面から明らかにする調査を進める予定である。