18:15 〜 19:30
[MIS21-P11] 土壌の凍結融解が根リターの変化 を通して土壌の窒素動態におよぼす影響
土壌の凍結融解は、 土壌の物理的な撹乱、樹木リターの質的変化、微生物による窒素不動化の抑制などによって土壌中の窒素循環を変化させると考えられているが、そのメカニズムは十分には明らかになっていない。植物リターは土壌微生物による窒素無機化の基質として重要であり、森林生態系における根リターは、葉リターに匹敵する量であることが報告されている。冬季における 土壌の凍結-融解条件下では、細根リターが物理的に破砕され、基質としての利用可能性変化を通じて土壌窒素動態にインパクトを与えることが示唆されている。そこで本研究では、細根リターが異なる土壌-凍結サイクルの条件下で、土壌窒素無機化・硝化速度にどのように影響を及ぼすのかを明らかにすることを目的とした。
北海道東部に位置する京都大学北海道研究林標茶区のミズナラ(Quercus crispula)の優占する広葉樹天然林を調査地とした。土壌は黒色火山性土であり、下層植生としてミヤコザサ(Sasa niponica)が多く自生している。2013年7月に、調査地内に50cm×50cmの方形枠を設置し 、0~10cmの鉱質土壌と直径2mm以下のミズナラ細根を採取した。採取した土壌は、2mmメッシュ篩を用いて、粗大有機物と礫を取り除いた。実験に用いたミズナラ細根は、篩で分けた土壌有機物から目視により分別した。土壌25gに対して、ミズナラ細根を湿重で0、5、15 mg g soil-1に相当する量を加えた。低温培養器を用い、+5℃~-5℃、0℃~-5℃、+5℃一定、-5℃一定の4種類の温度設定で7日間凍結-融解処理を加えた後、培養器内で+5℃で2日間の恒温培養を行った。また、+5℃~-5℃と-5℃一定の凍結処理を行ったサンプルは+5℃で7日間、+10℃で2日間と7日間の恒温培養を行った。それぞれ、反復は4回とした。培養前後の土壌を塩化カリウム溶液で抽出し、土壌に含まれるアンモニウム態窒素(NH4)と硝酸態窒素(NO3)を測定した。培養前後でのNH4とNO3の変化量から、それぞれの正味生成速度を算出した。また、各凍結-融解処理終了後に細根を水で抽出し、溶存有機態窒素(DON)の供給 量を測定した。
正味NH4生成速度 は、すべての凍結融解処理後において、5℃で2日間恒温培養すると、細根添加によって有意に上昇し(15 mg添加>0 mg添加) 、その速度は -5℃~0℃の凍結処理で最も大きく、次に-5℃一定処理で大きかった。 しかし、それらの影響は培養温度を高めたり(10℃)、培養期間を長くしたりする(7日間培養)と認められなくなり、むしろ土壌微生物による、正味NH4不動化が卓越する傾向があった。正味NO3生成速度(硝化速度)も同様に、すべての凍結-融解処理において5℃で2日間培養後に、細根添加によって速度が高まる傾向が認められた(15 mg添加>0 mg添加)。硝化速度に対する凍結融解処理の影響については、+5℃~-5℃が最も大きかった。正味NH4生成速度と同様に、10℃培養や5℃で7日間培養を行うと、根量や凍結融解処理の硝化速度への影響が見られなくなった。また、水抽出による根からのDON供給量は、-5℃~0℃培養で最も大きい傾向が認められた。
以上のことから、土壌凍結-融解サイクルの増幅と細根添加によって、土壌微生物によるNH4とNO3の正味生成速度が高まることが示され、それには凍結-融解による樹木細根からの溶存有機窒素の供給が関与していることが示唆された。また、その影響は短期間(2日間)、低温条件下(5℃培養)でより顕著である と考えられた。土壌凍結-融解サイクルの変化規模やパターンの影響については、最も温度変化が大きい処理(+5℃~-5℃)よりも、0℃~-5℃処理において正味NH4およびNH4+NO3生成速度、細根からのDON供給量が最も大きかった。この結果は、土壌微生物のNH4生成・硝化活性に対する凍結-融解サイクルの影響程度は、単に温度振幅の大きさのみでは説明できない可能性を示唆するものであった。
北海道東部に位置する京都大学北海道研究林標茶区のミズナラ(Quercus crispula)の優占する広葉樹天然林を調査地とした。土壌は黒色火山性土であり、下層植生としてミヤコザサ(Sasa niponica)が多く自生している。2013年7月に、調査地内に50cm×50cmの方形枠を設置し 、0~10cmの鉱質土壌と直径2mm以下のミズナラ細根を採取した。採取した土壌は、2mmメッシュ篩を用いて、粗大有機物と礫を取り除いた。実験に用いたミズナラ細根は、篩で分けた土壌有機物から目視により分別した。土壌25gに対して、ミズナラ細根を湿重で0、5、15 mg g soil-1に相当する量を加えた。低温培養器を用い、+5℃~-5℃、0℃~-5℃、+5℃一定、-5℃一定の4種類の温度設定で7日間凍結-融解処理を加えた後、培養器内で+5℃で2日間の恒温培養を行った。また、+5℃~-5℃と-5℃一定の凍結処理を行ったサンプルは+5℃で7日間、+10℃で2日間と7日間の恒温培養を行った。それぞれ、反復は4回とした。培養前後の土壌を塩化カリウム溶液で抽出し、土壌に含まれるアンモニウム態窒素(NH4)と硝酸態窒素(NO3)を測定した。培養前後でのNH4とNO3の変化量から、それぞれの正味生成速度を算出した。また、各凍結-融解処理終了後に細根を水で抽出し、溶存有機態窒素(DON)の供給 量を測定した。
正味NH4生成速度 は、すべての凍結融解処理後において、5℃で2日間恒温培養すると、細根添加によって有意に上昇し(15 mg添加>0 mg添加) 、その速度は -5℃~0℃の凍結処理で最も大きく、次に-5℃一定処理で大きかった。 しかし、それらの影響は培養温度を高めたり(10℃)、培養期間を長くしたりする(7日間培養)と認められなくなり、むしろ土壌微生物による、正味NH4不動化が卓越する傾向があった。正味NO3生成速度(硝化速度)も同様に、すべての凍結-融解処理において5℃で2日間培養後に、細根添加によって速度が高まる傾向が認められた(15 mg添加>0 mg添加)。硝化速度に対する凍結融解処理の影響については、+5℃~-5℃が最も大きかった。正味NH4生成速度と同様に、10℃培養や5℃で7日間培養を行うと、根量や凍結融解処理の硝化速度への影響が見られなくなった。また、水抽出による根からのDON供給量は、-5℃~0℃培養で最も大きい傾向が認められた。
以上のことから、土壌凍結-融解サイクルの増幅と細根添加によって、土壌微生物によるNH4とNO3の正味生成速度が高まることが示され、それには凍結-融解による樹木細根からの溶存有機窒素の供給が関与していることが示唆された。また、その影響は短期間(2日間)、低温条件下(5℃培養)でより顕著である と考えられた。土壌凍結-融解サイクルの変化規模やパターンの影響については、最も温度変化が大きい処理(+5℃~-5℃)よりも、0℃~-5℃処理において正味NH4およびNH4+NO3生成速度、細根からのDON供給量が最も大きかった。この結果は、土壌微生物のNH4生成・硝化活性に対する凍結-融解サイクルの影響程度は、単に温度振幅の大きさのみでは説明できない可能性を示唆するものであった。