日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS21_28PO1] 生物地球化学

2014年4月28日(月) 18:15 〜 19:30 3階ポスター会場 (3F)

コンビーナ:*楊 宗興(東京農工大学)、柴田 英昭(北海道大学北方生物圏フィールド科学センター)、大河内 直彦(海洋研究開発機構)、山下 洋平(北海道大学 大学院地球環境科学研究院)

18:15 〜 19:30

[MIS21-P12] 多層モデルを用いた富士山麓森林内部における微量気体フラックスの推定

*新島 宏平1飛弾 勇輝1和田 龍一1望月 智貴2谷 晃2中井 裕一郎3高梨 聡3中野 隆志4高橋 善幸5宮崎 雄三6植山 雅仁7 (1.帝京科学大学、2.静岡県立大学、3.森林総合研究所、4.山梨県環境科学研究所、5.国立環境研究所、6.北海道大学、7.大阪府立大学)

キーワード:森林, 大気, 窒素酸化物, オゾン, VOC, 鉛直分布

大気中に微量存在する微量気体の発生および吸収・沈着は,対流圏における化学反応と放射強制力の変動を通して地球環境に影響を及ぼす。しかしながら微量気体の発生および吸収・沈着過程について十分なデータが蓄積されておらず,なかでも不確定な要素が大きい森林生態系における微量気体の発生・吸収量の時間変動とその要因解明が求められている。2012年夏季に富士山麓二箇所の植生の異なる富士吉田森林気象試験地(森林総合研究所・山梨県環境科学研究所,アカマツ林,樹高22 m)および富士北麓フラックスサイト(国立環境研究所,カラマツ林,樹高22 m)の微気象観測タワーを用いて,約1週間,オゾン(O3),窒素酸化物(NOX),揮発性有機化合物(VOC)の森林内部における高度毎(2 m,10 m,16 m,26 m)の観測を実施した。微量気体の鉛直分布は,物質によって特徴的であり,各物質の森林内部での放出・吸収沈着・反応の特性を反映していると考えられた。
本研究ではこれら物質の鉛直分布の解釈を試みるべく,群落内の微気象を考慮した多層モデル(Inverse MLM: 大阪府立大学 植山雅仁)を用いて,微量気体の鉛直分布から,各部位(樹冠部,枝下,表層部)における放出吸収量を推定した。当モデルでは観測点数に応じた複数の層に分ける必要があり,各部位における放出吸収の特性が分かっているCO2の鉛直分布を用いて,それぞれの層の高さに対応する境界条件を決定した。多層モデルをオゾンに適用した結果,O3の観測期間11日間の夏季9:00-18:00におけるフラックスの平均値を,「+」を放出として,-11.1 ± 4.2 nmol m-2 s-1と推定した。この値は,文献値(観測値:-10.4 ± 0.3 nmol m-2 s-1, Fares et al., 2012)とばらつきの範囲で一致した。森林内部6:00-18:00における樹冠部,枝下,表層部におけるO3の放出・吸収量をそれぞれ,-2.6 ± 3.2 nmol m-2 s-1,0.2 ± 2.9 nmol m-2 s-1,-8.7 ± 5.2 nmol m-2 s-1と推定した。観測期間が短いためばらつきが大きいが,富士北麓カラマツ林では、樹冠部に比べ、表層部におけるO3の吸収・沈着の大きい傾向があることが明らかとなった。これは林床付近に背丈の低い植物が生い茂っていることが原因である可能性が考えられる。

参考文献
S. Fares, R. Weber, J. Park, D. Gentner, J. Karlik, A. Goldstein, 2012. Ozone deposition to an orange orchard: Partitioning between stomatal and non-stomatal sinks. Environmental Pollution 169, 258-266.