日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS22_29PM2] ガスハイドレートと地球環境・資源科学

2014年4月29日(火) 16:15 〜 17:30 213 (2F)

コンビーナ:*戸丸 仁(千葉大学理学部地球科学科)、八久保 晶弘(北見工業大学環境・エネルギー研究推進センター)、森田 澄人(独立行政法人 産業技術総合研究所 地圏資源環境研究部門)、座長:森 大器(九州大学大学院比較社会文化学府)

17:00 〜 17:15

[MIS22-11] バイオマーカーによって明らかにする日本海の環境変動

*荻原 成騎1 (1.東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)

キーワード:日本海, バイオマーカー, 暗灰色層, 硫黄同位体組成, 還元環境, 炭素/硫黄比

MD179 航海3312 コア表層6.0 mの堆積物試料を用いて、暗灰色層(TL-1 から3)を中心に、有機地球化学(biomarker)分析、有機炭素、硫黄分析、硫黄同位体組成、微量組成分析により、日本海の古環境変動を推定した。その結果、TL-2上部における強い還元環境と、突発的なメタン湧出の可能性を見出した。 無機指標:TOC分析については、TL-2,3で0.8%程度であるのに対して、TL-1層では2%近い高い値を示した。C/S比について、TL-2の中部から上部では全ての試料が1以下であり、ここでの強い還元環境を示唆している。TL-1層は、層厚わずか28cmと薄層であるにもかかわらず、C/S比は層内で急激に変化し、最上部では一般的海洋底の値である3.0まで上昇している。C/S-δ34Sの関係について、TL-2,3層の強い還元が推定される層準では、δ34S値が-27から-34 permil、C/S比は0.8から1.0で一定であった。これに対してTL-1層では、C/Sとδ34Sがそれぞれ変化し、両者に弱い比例関係が認められた。 バイオマーカー:酸化還元指標として伝統的に用いられてきたPristane/Phytane比(Pr/Ph 比)は、ほとんどの試料において<3.0 であり、還元的環境であったことが推定された。メタン酸化古細菌(ANME)の膜脂質起源であるPentamethylicosane(PMI)、冷湧水炭酸塩岩に特徴的に検出されるC18-isoprenoid ketone、さらに起源は明らかでないがメタン湧出地点に特徴的に見出されるhop-22(29)ene (diploptene)の深度分布を調べた。PMI は、TL-2 層の一部とTL-1 の中央部に高い値が見られた。C18-isoprenoid ketone は、TL-1 中部から上部で高い値をした。Diploptene は、TL-1 で相対的に高く、TL- 2,3の一部で相対的に低い値を示した。今回分析した暗色層中でのAMNE マーカーの分布は不均質であり、TL-1,2 の堆積時の一時期に突発的メタン湧出の可能性が認められた。この他、n-C29,31 alkane及びC26, 28 fatty acidを用いて、陸源物質量の変化を明らかにした。本研究はMH21 メタンハイドレート・プロジェクトの一部として実施されたものである。