17:15 〜 17:30
[MIS22-P07_PG] 日本海東縁海底下堆積物の堆積環境と孔隙特性
ポスター講演3分口頭発表枠
キーワード:ハイドレート, 日本海, 孔隙
日本列島の太平洋側に北東から南西方向に走る南海トラフ地域では,震探反射記録からBSR も広く分布することが報告されてきている。それらの調査結果から,この地域には世界屈指のガスハイドレート胚胎堆積層が広域に分布することが確認されている。この地域の東域に実施されてきた高分解能地震探査によりガスハイドレートの分布が明瞭に示唆されているほか,2000 および2004 年に掘削された基礎試錐「南海トラフ」および「東海沖~熊野灘」によっても海底下に高い濃集度のガスハイドレート分布が確認され,2012 および2013 年には第2渥美海丘周辺において世界初の海洋生産試験の実施が予定されている。また,1998 年と2002 年にカナダ北極地域マッケンジーデルタにおいて掘削されたマリック坑井によって,永久凍土層下の深度890-1110 m付近にガスハイドレートの卓越する砂層が確認され,ガスハイドレート含有砂層の地下状態での特性が明らかにされた。現場における掘削作業では連続的なLWD や物理検層データをはじめ,多くのガスハイドレート含有砂試料が回収され分析に供されたほか,2007 年と2008 年には深度1000m 付近のガスハイドレート胚胎砂層からメタンガスの生産テストが実施され,大きな成功を収めた。
新潟県上越沖に位置する上越海盆は,その南縁には陸棚に連なる急斜面があり海鷹海脚が伸びる。さらに,海鷹海脚の北西部には上越海丘が南西-北東方向に分布する。日本海東縁深海底下の堆積物は泥質岩を主体とするものの,少量の砂層を伴うことが多い。これらの粗粒堆積物(砂層および凝灰質砂層)および泥質堆積物の堆積年代,堆積環境および初期埋没続成過程を調べるため,粒度分析,孔径分布/孔隙率/浸透率測定,X 線回折分析(XRD),岩石薄片観察,走査型電子顕微鏡(SEM観察などを実施した。これらの測定や観察から,粗粒堆積物粒子間孔隙の炭化水素ガスの移動への貢献度を検討することによって,チムニーやフラクチャーだけではなく砂堆積層中も移動経路となっていたことを示唆する。また,初期続成作用における泥質堆積物の孔隙特性の変化を把握することによって,メタンの移動経路や流動挙動に関する知見が得られると考えられる。メタンハイドレートがチムニーやフラクチャーを充填する産状およびマウンドやノジュールなどの塊状の産状のみならず,南海トラフやマッケンジーデルタ地域と同様な粗粒堆積物の粒子間孔隙を充填する産状の可能性を検討することは重要である。
昨年度,日本海東縁の上越地域の海鷹海脚(# 3296),上越チャネル(# 3308),上越海丘北(# 3320),富山トラフ(# 3325),西津軽沖(# 3326),日本海盆(# 3327),奥尻海嶺(# 3329) のサイトから得られた最長40m 程度のコア試料を対象として観察と諸分析を実施した。今年度は,上越沖の海鷹海脚,上越チャネル,上越海盆,上越チャネルおよび富山トラフ海域から得られた,#3296,3299,3304,3313,3312および3317コアについて同様の分析と観察を実施した。堆積物はいずれのサイトでもシルト~粘土サイズの泥質細粒砕屑物を主体とし,少量の極細粒~中粒サイズの砂層を伴うことが多い。厚い軟質の泥質層中には1mm 単位の細かなラミナの発達が認められ,わずかに厚さ数mm~数cm 程度の薄い未固結の砂質ラミナやテフラが夾在する部分がある。また,しばしば砂質バローや泥質ペレットなどの生痕のほか生物擾乱が顕著な部分が認められ,ラミナが消失している。ところにより,Ice-rafetd debris(IRD)や硫化物が認められる。
堆積物の孔隙率と孔径分布は,孔隙の毛管圧分布を測定し,それらのデータから変換して求めた。孔隙率は深度が増すに従い概ね減少傾向にあり,値は50%前後が多く,35?67%の範囲で変化する。孔径分布曲線も同様に深度が増すに従って概ね孔径減少の傾向がみられる。平均孔径はほとんどのサイトで数100nm 程度であり,一部西津軽沖では淘汰が悪く1000nm を超える。これは初期続成作用における圧密作用によって泥質粒子の再配列が進んでいることを示唆する。孔隙率や孔径分布にばらつきが認められことから,粒度組成に差異があるか圧密作用が一様に起こっていないことが考えられる。全般に凝灰質であり続成作用初期段階であるため,X 線回折結果から,すべての試料はopal-A を多く含み,石英および長石粒子のほかイライトおよびスメクタイトが随所に検出され,深度毎に大きな変化はみられなかった。偏光顕微鏡および電子顕微鏡による観察では,いずれのサイトでも珪藻が多数観察され,有孔虫やフランボイダル黄鉄鉱などの特徴的な粒子も観察される。珪藻は破片であることが普通であり,形が良く保存されているものもあり形状は様々であった。
本発表は,MH21の研究成果の一部である。
新潟県上越沖に位置する上越海盆は,その南縁には陸棚に連なる急斜面があり海鷹海脚が伸びる。さらに,海鷹海脚の北西部には上越海丘が南西-北東方向に分布する。日本海東縁深海底下の堆積物は泥質岩を主体とするものの,少量の砂層を伴うことが多い。これらの粗粒堆積物(砂層および凝灰質砂層)および泥質堆積物の堆積年代,堆積環境および初期埋没続成過程を調べるため,粒度分析,孔径分布/孔隙率/浸透率測定,X 線回折分析(XRD),岩石薄片観察,走査型電子顕微鏡(SEM観察などを実施した。これらの測定や観察から,粗粒堆積物粒子間孔隙の炭化水素ガスの移動への貢献度を検討することによって,チムニーやフラクチャーだけではなく砂堆積層中も移動経路となっていたことを示唆する。また,初期続成作用における泥質堆積物の孔隙特性の変化を把握することによって,メタンの移動経路や流動挙動に関する知見が得られると考えられる。メタンハイドレートがチムニーやフラクチャーを充填する産状およびマウンドやノジュールなどの塊状の産状のみならず,南海トラフやマッケンジーデルタ地域と同様な粗粒堆積物の粒子間孔隙を充填する産状の可能性を検討することは重要である。
昨年度,日本海東縁の上越地域の海鷹海脚(# 3296),上越チャネル(# 3308),上越海丘北(# 3320),富山トラフ(# 3325),西津軽沖(# 3326),日本海盆(# 3327),奥尻海嶺(# 3329) のサイトから得られた最長40m 程度のコア試料を対象として観察と諸分析を実施した。今年度は,上越沖の海鷹海脚,上越チャネル,上越海盆,上越チャネルおよび富山トラフ海域から得られた,#3296,3299,3304,3313,3312および3317コアについて同様の分析と観察を実施した。堆積物はいずれのサイトでもシルト~粘土サイズの泥質細粒砕屑物を主体とし,少量の極細粒~中粒サイズの砂層を伴うことが多い。厚い軟質の泥質層中には1mm 単位の細かなラミナの発達が認められ,わずかに厚さ数mm~数cm 程度の薄い未固結の砂質ラミナやテフラが夾在する部分がある。また,しばしば砂質バローや泥質ペレットなどの生痕のほか生物擾乱が顕著な部分が認められ,ラミナが消失している。ところにより,Ice-rafetd debris(IRD)や硫化物が認められる。
堆積物の孔隙率と孔径分布は,孔隙の毛管圧分布を測定し,それらのデータから変換して求めた。孔隙率は深度が増すに従い概ね減少傾向にあり,値は50%前後が多く,35?67%の範囲で変化する。孔径分布曲線も同様に深度が増すに従って概ね孔径減少の傾向がみられる。平均孔径はほとんどのサイトで数100nm 程度であり,一部西津軽沖では淘汰が悪く1000nm を超える。これは初期続成作用における圧密作用によって泥質粒子の再配列が進んでいることを示唆する。孔隙率や孔径分布にばらつきが認められことから,粒度組成に差異があるか圧密作用が一様に起こっていないことが考えられる。全般に凝灰質であり続成作用初期段階であるため,X 線回折結果から,すべての試料はopal-A を多く含み,石英および長石粒子のほかイライトおよびスメクタイトが随所に検出され,深度毎に大きな変化はみられなかった。偏光顕微鏡および電子顕微鏡による観察では,いずれのサイトでも珪藻が多数観察され,有孔虫やフランボイダル黄鉄鉱などの特徴的な粒子も観察される。珪藻は破片であることが普通であり,形が良く保存されているものもあり形状は様々であった。
本発表は,MH21の研究成果の一部である。