18:15 〜 19:30
[MIS22-P09] 日本海東縁メタン湧出海域における微化石層序研究及びUT13研究報告
キーワード:日本海東縁, メタンハイドレート, 微化石層序, 安定同位体比, 堆積速度, 絶滅種
1.はじめに
微化石層序に基づいた年代論や古環境解析は,海底資源エネルギーの分布を地質学的に解釈するうえで重要である.日本海上越沖の表層ガスハイドレート分布域においても,メタンハイドレートの大規模な分解が海底環境に与えたインパクトを明らかにすることに役立っている(Matsumoto et al., 2009).2010年のMD179航海により採取された大口径ピストンコアにより,過去13万年間の微化石層序が明らかになったことで,より明確に年代と環境を解釈することが可能となった.
本発表では,第四紀日本海における珪藻と有孔虫の微化石層序と安定同位体層序について紹介したのち,これらの結果を日本海におけるその他のハイドレート胚胎海域の結果に適用させて議論する.
2.上越沖における珪藻および有孔虫の微化石層序
日本海東縁,上越沖では,過去3万2千年間における12の有孔虫帯と過去13万年間における8つの珪藻化石帯が上越沖のピストンコアより確認され,それぞれ表層水や底層水の環境変化を示している(Nakagawa et al., 2009; Akiba et al., 2014).
3.UT13航海研究
2013年7月に,東京海洋大学が管理する海洋調査船「海鷹丸」航海が,隠岐トラフと最上トラフにおいて精密調査されているガスハイドレートマウンド海域において実施された.ピストンコアラーによりハイドレートマウンド上から6-8mが掘り進められ,いくつかの塊状メタンハイドレートと13のピストンコア堆積物が採取された.それらの堆積物から微化石層序と放射性炭素同位体年代測定を行い,各コアの堆積速度を先行研究と比較することで推定した.さらに,発表では安定同位体比測定結果から環境変動の議論も行う.
3-1.結果①-隠岐トラフにおける堆積速度
-概ねのコアにおいて,約3~4万年前から現在にかけての堆積物が約15 cm/kyrの一定の堆積速度で堆積している.
-PC1302は融氷期~後氷期の堆積物が削剥されており,全体の堆積速度が比較的速い.
-コア最下部にメタンハイドレートが産出するPC1305は他のコアに比べ平均堆積速度が遅く,崩壊(削剥)層準がある可能性が高い.メタンハイドレート上部の堆積物は約4万年前と推定される.
3-2.結果②-最上トラフコアで認められた微化石層序の特徴
-古い14Cデータ結果より,最上トラフの5コアのうち3コアにおいて,最終氷期前後の堆積物が欠如している.
-PC1311では絶滅種のEpistominella pulchellaの連続産出や保存状態の悪い個体の産出がコア下部から上部まで特徴的に認められる.その一方で,保存状態の良い暖流性浮遊性種も含まれ,年代の異なる群集が混在していると推定される.
-こうした堆積物の欠落現象は,メタンハイドレートの分解に伴う崩壊活動や深部からの水や堆積物の上昇活動などを示唆しているかもしれない.
謝辞
本研究は松本(明治大学)科研費により実施された.松本先生ほか,航海関係者一同の皆様に感謝いたします.
微化石層序に基づいた年代論や古環境解析は,海底資源エネルギーの分布を地質学的に解釈するうえで重要である.日本海上越沖の表層ガスハイドレート分布域においても,メタンハイドレートの大規模な分解が海底環境に与えたインパクトを明らかにすることに役立っている(Matsumoto et al., 2009).2010年のMD179航海により採取された大口径ピストンコアにより,過去13万年間の微化石層序が明らかになったことで,より明確に年代と環境を解釈することが可能となった.
本発表では,第四紀日本海における珪藻と有孔虫の微化石層序と安定同位体層序について紹介したのち,これらの結果を日本海におけるその他のハイドレート胚胎海域の結果に適用させて議論する.
2.上越沖における珪藻および有孔虫の微化石層序
日本海東縁,上越沖では,過去3万2千年間における12の有孔虫帯と過去13万年間における8つの珪藻化石帯が上越沖のピストンコアより確認され,それぞれ表層水や底層水の環境変化を示している(Nakagawa et al., 2009; Akiba et al., 2014).
3.UT13航海研究
2013年7月に,東京海洋大学が管理する海洋調査船「海鷹丸」航海が,隠岐トラフと最上トラフにおいて精密調査されているガスハイドレートマウンド海域において実施された.ピストンコアラーによりハイドレートマウンド上から6-8mが掘り進められ,いくつかの塊状メタンハイドレートと13のピストンコア堆積物が採取された.それらの堆積物から微化石層序と放射性炭素同位体年代測定を行い,各コアの堆積速度を先行研究と比較することで推定した.さらに,発表では安定同位体比測定結果から環境変動の議論も行う.
3-1.結果①-隠岐トラフにおける堆積速度
-概ねのコアにおいて,約3~4万年前から現在にかけての堆積物が約15 cm/kyrの一定の堆積速度で堆積している.
-PC1302は融氷期~後氷期の堆積物が削剥されており,全体の堆積速度が比較的速い.
-コア最下部にメタンハイドレートが産出するPC1305は他のコアに比べ平均堆積速度が遅く,崩壊(削剥)層準がある可能性が高い.メタンハイドレート上部の堆積物は約4万年前と推定される.
3-2.結果②-最上トラフコアで認められた微化石層序の特徴
-古い14Cデータ結果より,最上トラフの5コアのうち3コアにおいて,最終氷期前後の堆積物が欠如している.
-PC1311では絶滅種のEpistominella pulchellaの連続産出や保存状態の悪い個体の産出がコア下部から上部まで特徴的に認められる.その一方で,保存状態の良い暖流性浮遊性種も含まれ,年代の異なる群集が混在していると推定される.
-こうした堆積物の欠落現象は,メタンハイドレートの分解に伴う崩壊活動や深部からの水や堆積物の上昇活動などを示唆しているかもしれない.
謝辞
本研究は松本(明治大学)科研費により実施された.松本先生ほか,航海関係者一同の皆様に感謝いたします.