日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS23_2PO1] 津波堆積物

2014年5月2日(金) 16:15 〜 17:30 3階ポスター会場 (3F)

コンビーナ:*後藤 和久(東北大学災害科学国際研究所)、宍倉 正展(産業技術総合研究所 活断層・地震研究センター)、西村 裕一(北海道大学大学院理学研究院)

16:15 〜 17:30

[MIS23-P01] 東北地方太平洋沖地震津波堆積物の露光状態:OSL年代測定法による正確な津波堆積物の堆積年代推定を目指して

*林崎 涼1白井 正明1 (1.首都大学東京)

キーワード:津波堆積物, OSL 年代測定, pIRIR 年代測定, カリ長石, 堆積構造, 福島

光ルミネッセンス (OSL) 年代測定法は,津波堆積物自体から堆積年代を得ることができる測定法であり,津波堆積物にも有用と期待される.しかし,OSL 年代測定において,鉱物粒子が堆積するまでにどの程度露光しているのかが重要であるが,津波による運搬・堆積過程における露光状態は明らかでない.実際にOSL年代測定法を津波堆積物に適用するには,まず運搬・堆積過程における露光状態を明らかにする必要がある.本研究では,2011年の東北地方太平洋沖地震津波の津波堆積物中に含まれるカリ長石粒子を対象として,津波による運搬・堆積時における露光状態を明らかにし,その結果を踏まえて,単粒子年代測定による有効性と,試料採取地点や層相により得られる堆積年代について検討する.
まず,post-IR IRSL (pIRIR) 年代測定法 (Reimann and Tsukamoto 2012) を適用することにより,太陽光への露光時間に対する発光強度の減衰率が異なる IRSL と pIRIR それぞれの等価線量を比較した結果,津波堆積物に含まれる砂質の鉱物粒子は津波による運搬・堆積過程でほとんど露光していないことが明らかになった.このような露光状態は OSL 年代測定に不適であるが,単粒子年代測定ではごく最近露光した鉱物粒子を確認することができた.これは津波前の堆積環境でよく露光していた鉱物粒子を測定したものと考えられる.つまり,このような粒子について単粒子年代測定をすることにより,正確な堆積年代を得ることができると考えられる.また,津波堆積物の試料採取地点により,正確な堆積年代を示す鉱物粒子が増減するという変化傾向は認められなかった.一方,津波堆積物の層相や層位では,1 つの押し波堆積物のユニットの上位ほど正確な堆積年代を示す鉱物粒子が多くなるという傾向が見出された.
従って,現時点では押し波堆積物のユニットの上位のサンプルを用いて,単粒子で OSL 年代測定をすることで,より正確な堆積年代を得ることができると考えられる.