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[MIS23-P05] 津波起源浸食地形の特徴 -唐丹湾および越喜来湾の例-
キーワード:津波起源浸食地形, 唐丹湾, 越喜来湾, 流痕
唐丹湾は釜石市の南端に位置し東側に開けた湾である。唐丹湾は2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震時の津波(以下、3.11津波と記す)により、高さ約12mの防潮堤が転倒し背後の集落が押し流される被害を受けた。また、唐丹湾においては引き波により海底面が露出した映像が記録されている。越喜来湾は大船渡市三陸町に位置し東側に開けた湾である。越喜来湾では最大で15m以上の高さの津波が押し寄せ、周辺地域は甚大な被害を受けた。以上のことから両湾の海底には、津波による痕跡が残されている可能性が考えられ、東海大学では2012年より両湾の海底地形地質調査を開始した。
初年度の調査により、両湾において3.11津波後における湾全体の海底地形図を作成した。その結果、唐丹湾では水深20~25m付近、越喜来湾では水深15~20m付近で起伏に富んだ地形が確認された。この起伏に富んだ地形を横断する高分解能地層探査記録では、最上部層に白く抜ける反射を呈する厚さ数十cmの無層理層が認められ、その基底部は明瞭な反射面として下位層と隔たられる。唐丹湾において、バイブロコアラーによる柱状試料採取及び観察により、この最上部層は級化構造が卓越した砂質堆積物で構成され、基底部には下位層を削剥した痕跡が確認された。以上のことから、起伏に富んだ地形は3.11津波により形成された津波起源の凹凸地形であると推定される。2013年度の調査では、初年度で確認された上記の地形を中心により細かな調査測線を設け詳細な地形図を作成したため、湾ごとにその特徴をまとめる。
【唐丹湾】
本調査範囲の地形は、①水深15~22mまでの傾斜約0.9°(16/1000)の緩斜面、②水深22~24m付近の平坦面、③水深25m以深の緩斜面の3つに区分される。①~③の海底面上には多数の物体が散在している。物体の周囲には沖側へ伸長し、扇状もしくは三角形状を呈する流痕が確認された。これらはいずれも物体の大きさに比例し大きくなり、南東方向へ開口し、とくに②に集中して発達する。①~②では、長さ35~72m、幅1.5~2.4m、深さ5~12cm程度の細長い溝状の地形が確認された。これは物体が水流により運搬される時に形成したグルーブマークと推定される。
また、唐丹湾では3.11時に引き波により水深20m付近までの海底面が露出し、この水深20m付近で第一波の引き波と第二波の押し波が衝突したことが映像により明らかになっている。そのことから、海底面上に散在する多数の物体は津波により運搬されたガレキだと推定される。
【越喜来湾】
本調査範囲の地形においても、①水深8.5~17.5mまでの傾斜約1°(18/1000)の緩斜面、②水深17.5~19m付近の平坦面、③水深19.5m以深の緩斜面の3つに区分される。
①の海底面には多数の物体が集中して存在している。これら物体の分布は、唐丹湾が平坦面上に多数分布していたのに対し、緩斜面上への分布となっている。①~②にかけて、南東方向へ開口する扇状もしくは三角形状の流痕が確認された。これらは、唐丹湾と同様に物体があることによる物痕が一部認められるが、水流自体による浸食で形成された削痕が大半を占めている。
以上、凹凸地形周辺における精査の結果、唐丹湾および越喜来湾の海底面上には、ガレキ及びその周囲に発達し、沖側へ開口する流痕により形成された津波起源凹凸地形が認められた。両湾において凹凸地形の発達する深度及び地形は類似している。しかし、唐丹湾はガレキの形状などにより流痕の幅や深さが異なり、ガレキに形状を規制されたと考えら
れる。しかし、越喜来湾の場合はガレキに規制されず水流自体により浸食を受けたと推察され、両湾には流痕の形成過程に明らかな違いがあったと示唆される
初年度の調査により、両湾において3.11津波後における湾全体の海底地形図を作成した。その結果、唐丹湾では水深20~25m付近、越喜来湾では水深15~20m付近で起伏に富んだ地形が確認された。この起伏に富んだ地形を横断する高分解能地層探査記録では、最上部層に白く抜ける反射を呈する厚さ数十cmの無層理層が認められ、その基底部は明瞭な反射面として下位層と隔たられる。唐丹湾において、バイブロコアラーによる柱状試料採取及び観察により、この最上部層は級化構造が卓越した砂質堆積物で構成され、基底部には下位層を削剥した痕跡が確認された。以上のことから、起伏に富んだ地形は3.11津波により形成された津波起源の凹凸地形であると推定される。2013年度の調査では、初年度で確認された上記の地形を中心により細かな調査測線を設け詳細な地形図を作成したため、湾ごとにその特徴をまとめる。
【唐丹湾】
本調査範囲の地形は、①水深15~22mまでの傾斜約0.9°(16/1000)の緩斜面、②水深22~24m付近の平坦面、③水深25m以深の緩斜面の3つに区分される。①~③の海底面上には多数の物体が散在している。物体の周囲には沖側へ伸長し、扇状もしくは三角形状を呈する流痕が確認された。これらはいずれも物体の大きさに比例し大きくなり、南東方向へ開口し、とくに②に集中して発達する。①~②では、長さ35~72m、幅1.5~2.4m、深さ5~12cm程度の細長い溝状の地形が確認された。これは物体が水流により運搬される時に形成したグルーブマークと推定される。
また、唐丹湾では3.11時に引き波により水深20m付近までの海底面が露出し、この水深20m付近で第一波の引き波と第二波の押し波が衝突したことが映像により明らかになっている。そのことから、海底面上に散在する多数の物体は津波により運搬されたガレキだと推定される。
【越喜来湾】
本調査範囲の地形においても、①水深8.5~17.5mまでの傾斜約1°(18/1000)の緩斜面、②水深17.5~19m付近の平坦面、③水深19.5m以深の緩斜面の3つに区分される。
①の海底面には多数の物体が集中して存在している。これら物体の分布は、唐丹湾が平坦面上に多数分布していたのに対し、緩斜面上への分布となっている。①~②にかけて、南東方向へ開口する扇状もしくは三角形状の流痕が確認された。これらは、唐丹湾と同様に物体があることによる物痕が一部認められるが、水流自体による浸食で形成された削痕が大半を占めている。
以上、凹凸地形周辺における精査の結果、唐丹湾および越喜来湾の海底面上には、ガレキ及びその周囲に発達し、沖側へ開口する流痕により形成された津波起源凹凸地形が認められた。両湾において凹凸地形の発達する深度及び地形は類似している。しかし、唐丹湾はガレキの形状などにより流痕の幅や深さが異なり、ガレキに形状を規制されたと考えら
れる。しかし、越喜来湾の場合はガレキに規制されず水流自体により浸食を受けたと推察され、両湾には流痕の形成過程に明らかな違いがあったと示唆される