日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS24_28AM2] 地球流体力学:地球惑星現象への分野横断的アプローチ

2014年4月28日(月) 12:00 〜 12:45 313 (3F)

コンビーナ:*伊賀 啓太(東京大学大気海洋研究所)、中島 健介(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、吉田 茂生(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、柳澤 孝寿(海洋研究開発機構 地球内部ダイナミクス領域)、相木 秀則(海洋研究開発機構)、座長:相木 秀則(海洋研究開発機構)

12:15 〜 12:30

[MIS24-02] 暖かい金属円柱上での氷の自発的回転

*田中 雅士1波々伯部 広隆1吉田 茂生2中島 健介2 (1.九州大学 大学院理学府、2.九州大学 大学院理学研究院)

キーワード:気泡, 氷, 回転, 熱機関, 相変化, 自発運動

概要氷の塊を真鍮の円柱の上に載せると、融解とともに自発的にゆっくりとした回転をはじめ、それが持続することを発見した。発見された現象室温または暖めた直径8cm, 高さ16cm の真鍮製の円柱を上面が水平になるように置き、その上に直径10cm, 厚さ4cm程度の底面が平らな氷の塊(家庭用冷蔵庫で作成)を置くと、氷の融解とともに自発的に回転を始める。 回転方向は、途中に外力を加えない限り変わらないが、回転と逆方向に力を瞬間的に加えただけで即座に反転する。典型的な回転周期は20秒程度である。真鍮が冷めるか、あるいは、氷が融けて円柱の上面が露出すると、回転は停止する。氷と真鍮表面の間の気泡の重要性製氷業者が作成した気泡を含まない氷を用いたところ、回転は生じなかった。しかし、この氷の下面に貫通しない穴をあけ、融解とともに氷と真鍮表面の間に気泡が供給されるようにすると、回転が生じた。また、氷と真鍮表面の間の気泡の振る舞いを観察すると、氷が自発的回転を行なっている時と回転を強制的に停止させた場合とで異なることがわかった。すなわち、氷が回転しているときは、気泡は円柱の半径方向に伸びた細長い形状になる傾向があり、真鍮表面に対して殆ど静止している。氷の回転を停止させたときは、気泡は不規則に変形・運動しつつ外側に流出する。これらのことから、この現象の物理には、気泡が本質的に重要な役割を果たしていることが示唆される。熱供給の重要性円柱内部の温度の測定より、円柱内の上下の温度差と氷の回転角速度の間に強い正の相関があることがわかった。また、真鍮の代わりに熱伝導率の小さいステンレスの円柱を用いると、氷の回転周期は長くなる。これらの事から、熱伝導により供給される熱フラックスが、この現象の発現に本質的に重要であることが示唆される。今後の方向この現象の力学についてはまだ理解できていない。熱の供給と回転速度の強い関係から、この現象が一種の熱機関として解釈できる可能性もある。今後、より制御された実験を行い、その結果も踏まえて、多面的に考察を進める予定である。