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[MIS24-07] 慣性重力波によるエネルギーフラックスの位相独立表現
キーワード:慣性重力波, エネルギーフラックス, 位相依存性
海洋中の波動の診断には時間平均がよく使われる。時間平均をとるには、波の位相変化にくらべて波の統計量がゆっ くりと変化することを前提としている。実際の海洋の波動の診断では、この前提からはずれることがしばしばある。 時間平均を積極的にとりにくい場合として、(i)波の位相変 化が非常に遅い(定在波)、(ii)波の統計量の変化が突発的である(台風などによって励起された慣性重力波)、(iii)観測や数値実験の制約上、細かい時間間隔でサンプリングできない等があげられる。このような状況に対処するために Takaya and Nakamura (1997, 2001) は「ロスビー波による 疑運動量フラックスの位相独立表現」を導いた。この表現は大気波動の診断の研究でよく使われ実用性に定評がある。ところが (a)ロスビー波によるエネルギーフラックスの位 相独立表現、(b) 慣性重力波によるエネルギーフラックスの位相独立表現(本研究)、(c) 慣性重力波による疑運動量フラックスの位相独立表現(本研究)は過去の研究では導かれていない。本研究では慣性重力波の支配方程式から出発して位相依存性のない新しいエネルギー方程式を導出した。この新しいエネルギー方程式の副産物として擬運動量の式の位相独立表現も得られた。台風の通過にともなって海洋内部に慣性重力波が励起される様子を理想化した数値実験を行った。一様成層して初期に静止した海に、局所的な時計回りの風応力を与えてx軸の方向に一定の速度で移動させる。10日間の数値積分を行い、8.5日目の(一回の)スナップショットを用いて、新旧のエネルギー方程式の比較を行った。図a,cは従 来の位相依存性のある表現u′p′、図b,dは新しい位相独立 表現(詳細は省略)に基づくx軸方向のエネルギーフラックスの鉛直断面である。両方とも x 軸の方向に波のエネルギーが伝達している。従来の表現だと位相変化が残るので、十分に細かい時間間隔(例えば30分毎) でモデルのスナップショットを出力した後にエネルギーフラックスを計算してその時間平均をとらなければならない。本研究の位相独立表現を使うとモデルの出力間隔が粗くても(例えば3時間毎でも)構わないので予報システムなどのオペレーションに向いている。