日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS24_28PM1] 地球流体力学:地球惑星現象への分野横断的アプローチ

2014年4月28日(月) 14:15 〜 16:00 313 (3F)

コンビーナ:*伊賀 啓太(東京大学大気海洋研究所)、中島 健介(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、吉田 茂生(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、柳澤 孝寿(海洋研究開発機構 地球内部ダイナミクス領域)、相木 秀則(海洋研究開発機構)、座長:中島 健介(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)

15:15 〜 15:30

[MIS24-08] 二重拡散対流による貫入の簡単化モデル

*野口 尚史1 (1.京都大学大学院工学研究科)

キーワード:海洋, 二重拡散対流, 水平混合

1. はじめに温度・塩分が異なる水塊が接する熱塩前線は、力学的に安定であっても二重拡散対流に対して不安定で運動が生じ、薄い層に分かれて相互に貫入が生じる。この貫入運動は前線面を通した熱・塩分・運動量の輸送を担っているため、水塊の混合を考える上で重要な過程である。この貫入運動は、微細な規模の二重拡散対流(フィンガー対流・拡散型対流)の集合的な密度輸送により駆動されており、逆に二重拡散対流は貫入による水平流によって維持される塩分・温度の鉛直勾配によって駆動されている。2. 設定鉛直の仕切り板により 2つの溶質 T, S を含む溶液が中央で2つに分けられている。溶質 T, S は拡散係数が 100 倍異なっている。(海洋では T, S は温度(熱)と塩分に相当する。) 仕切りの左右で、それぞれの溶質による密度の鉛直勾配は等しいが、左右でそれぞれ一定値 ±Δずつ異なっているとする。したがって全密度は左右で等しく、拡散が無ければ運動は生じない。また、初期の仕切り板の左右の流体の成層は、いずれも二重拡散対流について絶対安定であるため、拡散があっても(仕切りを取り除くまでは)運動は生じない。3. 数値シミュレーション無限に深い鉛直スロット内の2成分の Boussinesq 流体の2次元運動を分子拡散・分子粘性を陽に計算して解く数値モデルを用いて、貫入層を再現した。 初期に前線面で生じた擾乱は発達して層状の構造を形成した。生じた層状構造は傾いていた。Δ を大きくすると層の傾きが反転し、内部の構造も変化した。 Δ が大きいときについて、層の内部構造を拡大したものを図 a に示す。4. 簡単化モデル数値シミュレーションで見られた貫入層の力学的な仕組み、とくに輸送のバランスを理解するため、層内の微細スケールの対流運動のパラメータ化表現と、貫入層スケールのT, S 分布・運動とを結び付けた簡単モデルを作成する。 同一の構造をもつ層が鉛直方向に周期的に重なっていると考える(図 b)。層の構造は準定常状態に保たれているとする。層の境界(拡散境界面)は層厚に比べ非常に薄いとし、この境界面での T, S の跳び、層の勾配 α 、層内の水平シア u 、層の上端と下端(フィンガー層の上下)での T, S の差を用いて層構造の状態を表わす。 フィンガー対流による輸送は Stern による 4/3 乗則で表わす。 拡散型対流による輸送は大きくないが、T については同様に 4/3 乗則 に基づいて表現し、S による輸送は小さいので無視する。 せん断が対流輸送の効率に与える影響は、せん断流の中でのフィンガー対流の安定性の理論(Kunze)より、せん断安定性の臨界状態に保たれていると仮定して求める。このときのフィンガーの幅・鉛直流速は、いずれも別の理論より層内の状態を用いて表現することができる。 これらの対流による輸送と層内での水平輸送との釣り合い式を解くことで準定常状態での層内の輸送が分かる。 その結果、輸送の表現、とくにソルトフィンガーのそれに大きく影響を受けるため定量的な比較は困難であるが、定性的には直接数値シミュレーションと整合的な結果を得た。謝辞: この研究は科学研究費助成事業 若手研究 (B) 23740354 の助成を受けた。