日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS24_28PM1] 地球流体力学:地球惑星現象への分野横断的アプローチ

2014年4月28日(月) 14:15 〜 16:00 313 (3F)

コンビーナ:*伊賀 啓太(東京大学大気海洋研究所)、中島 健介(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、吉田 茂生(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、柳澤 孝寿(海洋研究開発機構 地球内部ダイナミクス領域)、相木 秀則(海洋研究開発機構)、座長:中島 健介(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)

15:45 〜 16:00

[MIS24-10] 固体地球と海洋の重力・弾性結合系としての遠地津波の波形分散異常

*綿田 辰吾1 (1.東京大学地震研究所)

キーワード:津波伝播遅延, 津波位相速度測定, 津波波形分散, 位相反転した初期津波位相, 津波先行波, 2010年チリ地震2011年東北沖地震DART津波記録

2010年チリ地震(M8.8)や2011年東北沖地震(M9.0)で発生した巨大津波は、約1日をかけて太平洋を渡り、対岸の来襲直前の深海域でその波形が観測された。その走時と波形はこれまで培われた遠地津波伝播予測から大きくずれていたため、多くの津波学者を悩ませた。津波発生域近傍での津波観測により津波発生域を囲む観測点での津波波形は良く説明される。一方、太平洋を横断した津波は、これまでの津波伝播で使われた長波近似や、有限水平波長を考慮した線形重力表面波の分散関係から予測される伝播時間や波形とは大きく異なるものであり、伝播速度は1.2%低下(到達時間換算で最大15分程度の遅れ)していた。海底摩擦や有限振幅効果などの非線形効果は、深海域での数値計算によると遠地の伝播時間に観測可能な影響を与えない。伝播遅延の要因として海底地形データの誤差(水深が系統的に浅い)や、海洋諸島・海嶺などの浅い水深での津波散乱の影響などが挙げられていた。また、遠地津波の波形には共通して、近地津波波形には見られない、主要到達波形とは逆転した振幅極性を持つ微弱な初期位相がみられた。初期反転位相の要因としては、主要津波発生前の初期破壊や、震源域周辺部での震源域とは逆転する地殻変動が挙られていた。今回、津波の水深変化による加重により弾性変形する固体地球の効果や、海水圧縮性の効果、津波や弾性変形する固体地球そのものが引き起す地球重力場の摂動が津波伝播に与える影響を考慮した津波波形を計算する手法を開発した。その結果、観測との走時差が5分以内に解消し、遠地津波のみにみられた初期反転位相を含む主要津波波形は、長周期帯域で固体地球と重力・弾性結合した津波の逆分散(波長が長いほど位相速度が低下)で良く説明できた。太平洋を横断する津波の予想外の伝播遅延と逆分散は、固体地球と海洋が重力・弾性結合した力学系における波動の振舞いとしてよく理解される。