日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS25_28AM1] 遠洋域の進化

2014年4月28日(月) 09:15 〜 10:45 411 (4F)

コンビーナ:*松岡 篤(新潟大学理学部地質科学科)、栗原 敏之(新潟大学大学院自然科学研究科)、加藤 泰浩(東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻)、尾上 哲治(鹿児島大学理学部地球環境科学科)、木元 克典(独立行政法人海洋研究開発機構)、野崎 達生(海洋研究開発機構地球内部ダイナミクス領域)、植田 勇人(弘前大学教育学部)、小林 健太(新潟大学理学部地質科学科)、長谷川 卓(金沢大学自然システム学系)、座長:栗原 敏之(新潟大学大学院自然科学研究科)、長谷川 卓(金沢大学自然システム学系)

10:15 〜 10:30

[MIS25-05] 更新統足柄層群の変形礫岩からみたフィリピン海プレートの運動

*小林 健太1 (1.新潟大学理学部地質科学科)

キーワード:神奈川県, 足柄層群, 塩沢累層, カタクレーサイト, 断層ガウジ, フィリピン海プレート

海洋域のプレート配置や運動を復元する手法として,沈み込み帯で形成された付加体の構造解析がしばしば用いられる.しかし付加体の形成が行われなかったり,形成されても未だ地表に現れていない場合には,別途過去の変形を記録している地質体の解析が必要となる.フィリピン海プレート北縁の収束境界では,更新統足柄層群(1.6-0.5Ma)が当時のトラフを充填して堆積した.その北側には中新統丹沢層群が分布し,両者は神縄断層系で境される.神縄断層系は,断層の走向・傾斜,断層岩の構造解析から求めた運動センス,切断関係に基づき,狭義の神縄断層(東西走向,右横ずれ),尺里断層系(北東-南西走向,左横ずれ正断層),中津川断層系(北西-南東走向,右横ずれ逆断層),塩沢断層系(北東-南西走向,逆断層成分を伴う左横ずれ),河内川東方の断層(南北走向)に区分される(大川・小林,2007).塩沢断層の南東側には,足柄層群の最上位層である塩沢累層が分布する.礫岩層を主体とし,厚さ数10cm~2mの砂岩層を挟む.礫種は主に花崗岩類,緑色岩,緑色片岩からなり,平均礫径は5cm~20cm,最大径は50cmである.北東-南西走向・65-75°北西傾斜を示す.礫岩は一部で著しく変形し,断層岩を伴う変形帯が形成されている.これらの変形帯を,断層岩の種類と性状,剪断センス,切断関係に基づき,古いものから順に,A,B,C,Dr,Dg,Db型の六つに区分した.A,B,C型はP-R1ファブリックが発達したカタクレーサイト帯であり,新期のものほど狭長になる.Drは赤色,Dgは青緑色,Dbは黒色を呈する断層ガウジ帯である.カタクレーサイト帯は塩沢断層から0.6km,断層ガウジ帯は1.5km以上の範囲に渡り分布する.ほとんどは鉛直-高角北西傾斜であるが,B,C,Dr型の一部は南東傾斜となる.また塩沢断層から離れるほど,中-低角傾斜が増加する.剪断センスは主に逆断層だが,BおよびDb型の一部では左横ずれを示す.特にB型カタクレーサイトの鏡下観察から,石英の割合や, 有色鉱物中の黒雲母の割合が高い花崗岩礫ほどマトリックスの割合が増加する傾向が認められ,変形度は礫の鉱物組成に左右されることが明らかとなった.石英が破砕により細粒化しており,黒雲母が底面すべりをしていることから, このカタクレーサイトは常識的には150-300℃の環境下で形成されたと考えられる.島弧地殻における通常の地温勾配を仮定すると,カタクレーサイトの形成深度は5-10kmであり,足柄層群塩沢累層は少なくともこの深度まで埋没したことになってしまう.更新統として分不相応な深さであり,沈み込むフィリピン海プレートの影響が加わったのかもしれない.またその運動方向は一定ではなく,更新世においても北西と北が混在していた可能性がある.