[M-IS25_28AM2] 遠洋域の進化

[MIS25-P04_PG] オマーンオフィオライトWadi Jizzi地域Lasailセクションにおけるザビアト層の層序と放散虫化石年代

ポスター講演3分口頭発表枠

林 里奈¹、原 康祐²、*栗原 敏之² (1.新潟大学理学部地質科学科、2.新潟大学大学院自然科学研究科)

キーワード：オマーンオフィオライト, 遠洋性堆積物

オマーンオフィオライトは，下位からマントルかんらん岩，斑れい岩，シート状岩脈群および噴出溶岩から構成されている．このうち噴出溶岩は，V1溶岩，V2溶岩およびV3溶岩に区分され，また，溶岩層上に重なる遠洋性堆積物はスヘイラ層と呼ばれている（Ernewein et al., 1988；Fleet and Robertson, 1980）．スヘイラ層の上位には，海洋地殻の崩壊堆積物の礫岩からなるザビアト層（Woodcock and Robertson， 1982）が重なる．ザビアト層については，Robertson and Woodcock (1983)が礫岩を中心とする層序について研究を行い，本層をオマーンオフィオライトの衝上初期に形成されたものとした．しかしザビアト層は礫岩のみではなく，礫岩層が薄く，細粒な遠洋性堆積物が厚く発達するところもある．これらの堆積物について微化石の検討を行うことにより，ザビアト層の堆積年代およびオマーンオフィオライト衝上初期の年代について明らかにすることができる．本講演では，Waji Jizzi地域のLasailセクションにおけるザビアト層の礫岩－細粒な遠洋性堆積物の岩相層序と放散虫化石の検討結果について報告する．
Lasailセクションにおけるザビアト層の層序は，下位よりカンラン岩からなる礫岩，堆積岩等を含む礫岩，赤色泥岩・ミクライト質石灰岩を挟む礫岩，赤色泥岩および珪質泥岩からなる．ここでは岩相に基づき，下部（かんらん岩を含む礫岩，堆積岩等を含む礫岩，赤色泥岩・ミクライト質石灰岩を挟む礫岩）と上部（赤色泥岩，珪質泥岩）に区分した．ザビアト層下部のミクライト質石灰岩からは，Alievium superbum，Rhopalosyringium scissumが産出し，その年代はTuronianと考えられる（O'Dogtherty, 1994）．ザビアト層上部の赤色泥岩からは，Pseudoaulophacus lenticulartus，Pseudoaulophacus praefloresensisおよびTheocampe salillumが産出した．Pessagno (1976)によれば，P. lenticulartusの出現はConiacian前期，P. praefloresensisの出現はConiacianとされる．また，Bandini et al. (2008)によれば，T. salillumの出現はConiacianである．したがって，これらの放散虫化石はConiacianを示すと考えられる．
以上より，ザビアト層の堆積年代はTuronian～Coniacianと考えられる．V1溶岩直上の遠洋性堆積物の年代はCenomanian最後期であり，今回の報告と合わせると，中央海嶺から沈み込み帯，そして衝上初期までのテクトニックセッティングの変化は，約400万年間という短期間で起こったといえる．