日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS26_29AM2] 大気電気学

2014年4月29日(火) 11:00 〜 12:45 422 (4F)

コンビーナ:*芳原 容英(電気通信大学 大学院情報理工学研究科)、牛尾 知雄(大阪大学大学院工学研究科情報通信工学部門)、座長:牛尾 知雄(大阪大学大学院工学研究科情報通信工学部門)

12:00 〜 12:15

[MIS26-12] 地上稠密観測POTEKAによるダウンバーストとガストフロントの識別

*野呂瀬 敬子1小林 文明1呉 宏堯2森田 敏明2 (1.防大地球、2.明星電気)

2013年8月11日18時から18時半頃にかけて群馬県高崎市・前橋市では激しい雷雨が発生し、突風被害が生じた.小型気象計POTEKAを用いた地域稠密気象観測網で突風発生時の地上気象変化を捉えた(野呂瀬ほか 2014).本報告では,地上気圧の時間変化からこの突風の成因を考察する.突風発生地点における地上の気象要素(気温・気圧・混合比・感雨)の時系列をみると,これらの気象要素の中でも特に気圧に顕著な変化がみられた。17:42~17:59JSTに1.3hPa,17:53~18:07JSTに1.9hPaの気圧上昇(pressure jump)、その直前に気圧低下(pressure dip)が観測された.突風周辺の他の地点でも同様の傾向が確認できた。この気圧の時間変化は,最も顕著な気圧の上昇(pressure jump;Peak2)に先行する形で,相対的に小さなpressure jump(Peak1)が特徴的であり,それらはガストフロントによるpressure jump(Peak1)とダウンバーストによるpressure jump(Peak2)と考えられる.さらに,それぞれの前後には局所的な低圧部によるpressure dipが観測された.他の気象要素をみると,Peak1と感雨及び気温の急降下が時間的に対応していた.また,本事例では混合比の変化は相対的に小さかった.Pressure jumpの空間分布をレーダーエコーと対応させてみると,Peak1は強エコー域の前面に位置しながら進行していた.その進行速度は約10m/sと見積もられ,エコーの平均移動速度と一致した.それに対し,Peak2はエコーコアに位置し,その移動速度は約9m/sと見積もられた.Peak2のpressure jumpは約20~30kmの水平スケールを有していた.18:19JST,前橋地方気象台では最大瞬間風速23.4m/sを記録し, 18:20JSTにおけるPeak2の位置は被害地域とも一致したことから,前橋市内にもたらされた被害はダウンバーストによるものであったと結論づけられた.