11:15 〜 11:30
[MIS28-09] 誘導電流の考察-----地磁気急始変化(SC)の場合
キーワード:地磁気急始変化(SC), 誘導電流, 電離層電流, 磁気圏界面電流, DL/DP場
Siscoe et al. (1968) は,地磁気急始変化(SC)のH成分振幅ΔHと太陽風動圧Pdとの関係を,ΔH = fgkΔ(√Pd)と仮定し,実験的に比例係数kを求めた.ここで,fは,太陽風と磁気圏の相互作用に関わる係数(1-2の値を取る)で,gは地下誘導電流効果を表し,1.5と取られた. 力武先生は、「SCには、誘導電流が効く筈ですよ」と言っておられたが、その後も誘導電流効果の理解は進まなかった。ここでは、今のSCモデルの下での物理的考察を深めたい。SC(H成分)波形の汎世界的分布を眺めると,SCの擾乱場が,低緯度で卓越する階段状増加(DLと記す)と,高緯度で大きい2パルス構造(DPpi+DPmiと表す)の重畳になっていることが判る.piは,最初のパルス(preliminary impulse)を,miは,引き続く主パルス(main impulse)を表す.DL場の主たる源電流は、磁気圏圧縮時に強化される磁気圏界面電流(MC)であり、DP場は,圧縮に伴って生じる沿磁力線電流(FAC)と,それによる電離層電流(IC)によって作られる.したがって,SC時の誘導電流を作る源電流としては,MC. FAC. ICの3種を考えねばならない.FACは,ほぼ南北方向に流れるので,Hの変化に着目する時は無視できる. 電離層は海水と同程度の電気伝導度を持つから,MCの誘導電流は電離層と地球内部の両方に流れる.地上場は,地球内部誘導電流によって強められ,電離層誘導電流によって弱められるから,DL場に対する誘導電流効果は、大きくないとして良いであろう.DP場を作るICの誘導電流は,地球内部のみに流れるから,DP場はそれにより強化される. 日本付近の緯度でのHとDのSC振幅は,8hLT頃で、Hは最小に,Dは最大になる.一方,現実的電離層分布を与えて,極地方に出入りする一対のFACによるICの緯度LT分布を計算すると,中低緯度の8hLT頃では電流が南北方向に流れる事が判る.つまり、観測と計算の結果は一致して,8hLT付近で観測されるSC(H)は,ICにもFACにも影響されないDL場であり、かつ、これには誘導電流も大きな影響を与えないと考えられる。このように、SCの緯度LT分布と源電流の理解が、誘導電流効果の考察に必要になる。