日本地球惑星科学連合2014年大会

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ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS29_29PO1] 地震・火山等の地殻活動に伴う地圏・大気圏・電離圏電磁現象

2014年4月29日(火) 18:15 〜 19:30 3階ポスター会場 (3F)

コンビーナ:*児玉 哲哉(宇宙航空研究開発機構宇宙利用ミッション本部地球観測研究センター)、井筒 潤(中部大学 工学部)、芳原 容英(電気通信大学 大学院情報理工学研究科)、長尾 年恭(東海大学地震予知研究センター)

18:15 〜 19:30

[MIS29-P01] 含水率制御を行った岩石の部分一軸圧縮実験による電流の発生実験

*長田 章良1山中 千博1 (1.大阪大学大学院理学研究科)

キーワード:地震電磁気現象, 流動電位, 正孔励起, 火成岩

地震に先行する電磁気的現象については, ギリシャのVAN法に見られる地電位差異常や, 電離層における電子密度異常など, 数多くの科学的観測の報告がある. これら電磁気的異常のメカニズムとして, 1.圧電補償電荷説, 2.石英などに含まれる過酸化架橋の正孔励起に伴った正孔の移動説, 3.間隙水の移動による流動電位説などが提唱されている. 正孔励起説は, Freund et al. (2006) によって示され, 火成岩の圧縮によって励起された正孔が圧縮部から非圧縮部を移動する説であり, 継続時間の長い電磁気異常や長距離間で観測される地電位差異常を説明できる点で注目されている.
本研究ではそのメカニズムの解明のために, 基準サイズ3cm×3cm×10cm火成岩(花崗岩, ハンレイ岩)の一部に圧力1.08MPa〜5.45MPaを加え圧力差を生じさせ, 圧縮部と非圧縮部の間の電流を測定する室内実験を行った. 真空中で水に浸し間隙に水が充填されている岩石では, まず水分蒸発に伴った電流変化が見られた. その変化の見られなくなった後, 圧力勾配を生じさせると, 圧力変化に伴い花崗岩では-20pA〜-40pA, ハンレイ岩では約-1.5nAの緩和時間が約3〜5分と十分長い電流変化が見られた. また, 面積2倍試料(3cm×6cm×10cm)の測定では, 同種, 同含水率, 同圧力で約2倍の電流変化が観測できた. また, 長さ2倍試料(3cm×3cm×20cm)でも同程度の結果が得られた. 一方で100℃加熱処理によって乾燥させた試料では, 種類によらずこの電流変化が全く見られなかった. これらの結果は, 間隙水の存在が電流変化に大きく関わっていることを示している. さらに, 得られた電流変化の絶対値は, Orihara et al. (2012)によって示された, 神津島近海における地震に先行して有意に観測された数μV/mの電場異常と, 地殻を構成する火成岩の抵抗率10〜1000Ω・mを考えると調和的と言える.

文献
1) F.T.Freund, A.Takeuchi, B.W.S.Lau, “Electric currents streaming out of stressed igneous rock – A step towards understanding pre-earthquake low frequency EM emissions”, Physics and Chemistry of the Earth 31. pp.389-396. (2006)
2) Y.Orihara, M.Kamogawa, T.Nagao, S.Uyeda, “Preseismic anomalous telluric current signals observed in Kozu-shima Island, Japan”, Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.109 No.47 pp.19125-19128. (2012)