日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS30_28AM1] 古気候・古海洋変動

2014年4月28日(月) 09:00 〜 10:45 501 (5F)

コンビーナ:*山田 和芳(早稲田大学人間科学学術院)、池原 実(高知大学海洋コア総合研究センター)、入野 智久(北海道大学 大学院地球環境科学研究院)、岡崎 裕典(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、北場 育子(神戸大学内海域環境教育研究センター)、北村 晃寿(静岡大学理学部地球科学教室)、佐野 雅規(総合地球環境学研究所)、多田 隆治(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、吉森 正和(東京大学大気海洋研究所)、座長:山田 和芳(早稲田大学人間科学学術院)

09:15 〜 09:30

[MIS30-02] マイワシ魚鱗記録から見つかった様態の異なる二つのレジームシフト

*加 三千宣1山本 正伸1杉本 隆成2武岡 英隆3 (1.北大地球環境、2.東海大文明研究所、3.愛媛大CMES)

キーワード:レジームシフト, 海洋生態系, マイワシ魚鱗記録, 太平洋, 別府湾

気候・海洋生態系に認められるレジームシフトは、今後数十年間の水産資源や海洋生態系の急激な変化を占う重要な現象である。レジームシフトは、数十年間続く準安定モード(レジーム)間の急激な遷移と定義付けられ(Minobe 1997; King 2005)、太平洋ではPDOやアリューシャン低気圧指数、マイワシ・カタクチイワシの魚種交替に顕著に現れる。これまで海洋からの高解像度の長期記録がほとんどなかったため、太平洋のレジームシフトが長期的にその様態がどのように変化するかについて詳しく議論がなされることはなかった。本研究では、日本周辺を回遊するマイワシのレジームの始まりと終わりが太平洋におけるレジームシフトのタイミングとほぼ同じであることに着目し、マイワシの過去2900年間のアバンダンス記録から海洋生態系レジームシフトの変遷過程を明らかにした。その結果、様態の異なる二つのレジームシフトが存在することがわかった。一つは、20世紀に見られる通常のレジームシフトで、20-30年程度でマイワシレジームの出現・消失を繰り返すレジームシフトである。もう一つは、マイワシアバンダンスの数百年スケール変動に伴ったレジームシフトである。後者のレジームシフトがひとたび起こると、その後100年スケールの低水準期(あるいは高水準期)が続く。マイワシアバンダンス記録に基づくと、低水準期のマイワシレジームの最大値は1980年代におけるマイワシレジームの最大値の4分の1から10分の1まで低下する。こうした数百年スケール変動に伴うレジームシフトはカリフォルニア沖やチリ沖のマイワシ、北米の復元PDO指数や東アジアの積雪異常指数にも認められ、日本マイワシに認められたレジームシフトは太平洋の気候・海洋生態系レジームシフトとの関連が示唆される。現代の高水準期は、すでに200年経過しており、低水準期への移行が懸念される。1990年頃に起こった最後のレジームシフトが後者のレジームシフトであったかどうかについてのより詳細な研究が今後の気候や魚類資源変動予測にとって重要であろう。