日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS30_28AM1] 古気候・古海洋変動

2014年4月28日(月) 09:00 〜 10:45 501 (5F)

コンビーナ:*山田 和芳(早稲田大学人間科学学術院)、池原 実(高知大学海洋コア総合研究センター)、入野 智久(北海道大学 大学院地球環境科学研究院)、岡崎 裕典(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、北場 育子(神戸大学内海域環境教育研究センター)、北村 晃寿(静岡大学理学部地球科学教室)、佐野 雅規(総合地球環境学研究所)、多田 隆治(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、吉森 正和(東京大学大気海洋研究所)、座長:山田 和芳(早稲田大学人間科学学術院)

09:30 〜 09:45

[MIS30-03] 島根県東部,宍道湖における近年の堆積環境の変化

*瀬戸 浩二1池田 洋子2山口 啓子3倉田 健悟3 (1.島根大学汽水域研究センター、2.島根大学総合理工学部地球資源環境学科、3.島根大学生物資源科学部)

キーワード:宍道湖, 表層堆積物, 全有機炭素濃度, 全イオウ濃度, 粒度分析

宍道湖は,島根県東部に位置する低鹹汽水湖である.面積は79.1km2で東西に長く,水深が6m未満の湖盆状の形状を示している.湖水は,低塩分の表層水と中塩分の密度躍層及び底層水に区分されるような成層構造を示している.近年,宍道湖では,アオコの大量発生,水草の異常繁茂,ヤマトシジミの漁獲量の低下など,環境異変が起きている.本研究では,宍道湖において2006年と2013年の同時期に行った表層堆積物の広域調査と比較したうえで,2010年から毎月行われているモニタリング調査の結果も含め,この間の堆積環境の変化を明らかすることを目的としている. 2006年の宍道湖の表層堆積物は,3.5m以浅では砂質,それ以深では泥質堆積物であった.3.5m以深の平均粒径は,深度が深くなるほど細粒になる傾向があり,最深部付近では7.5φを示す.3.5m以浅では,2φ前後の細粒?中粒砂が主体である.全有機炭素(TOC)濃度は,4%以下であった.平均粒径とは,相関係数0.85の高い正の相関が認められ,広域的なTOC濃度の分布は,粒径に大きく依存している.全イオウ(TS)濃度は,1%以下であり,深度が深くなるほど高くなる傾向にある.しかし,水深4.5m以浅では0.2%以下であり,それ以深で急速に増加する. 2013年の表層堆積物は,3.5m以浅では砂質,それ以深では泥質堆積物であった.平均粒径は,2006年と同様であった.TOC濃度は,泥質堆積物において6?8%で,TS濃度は,2%以下であり,深度が深くなるほど高くなる傾向にある.TS濃度は,水深3m以浅で0.2%以下であり,その深度は2006年より明らかに浅くなっている. 2010年からモニタリング地点(宍道湖湖心:SJ01地点)の表層堆積物のTOC濃度は4%?10%の範囲で大きく変化し,夏季に低く,冬季に高い傾向がある.この傾向は,冬季に植物プランクトンの生産性が増加すると考えるより,夏季の降雨に伴う無機砕屑物による希釈効果に起因するものと思われる.さらにTOC濃度は,2010から2013年の間に増加する傾向が見られた. TS濃度は,0.5?2.0%の範囲で変化し,夏季に高く,冬季に低い傾向を示し,TOC濃度と同様に年々増加する傾向が認められた.これらの変化は,塩分の流入と溶存酸素量の低下の継続によってTS濃度が高くなることを示唆している. これらの結果から,2006年以降,水質では目立った変化は見られないが,湖底の表層堆積物ではTOC濃度,TS濃度が倍化している.TOC濃度の変化は,富栄養化による植物プランクトンの増加または河川から供給される無機砕屑物の減少が考えられる.TS濃度の変化は,大橋川からの中塩分水の流入の増加とそれらに伴う無?貧酸素環境の長期化に起因していると考えられる.中塩分水の流入の増加は,斐伊川から流入している淡水の減少,日本海の海水準の上昇,大橋川の河床の穿掘による深化などが考えられる.