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[MIS30-22] 石灰質ナンノ化石からみた中新世~鮮新世の琉球列島の古海洋環境
キーワード:石灰質ナンノ化石, 中新世, 更新世, 琉球列島, 島尻層群
琉球列島沖縄本島には,中新統~更新統の島尻層群,更新統の知念層および琉球層群が分布する.島尻層群は主に泥岩と砂岩からなり,琉球層群は主にサンゴ礁およびその周辺海域で形成された石灰岩からなる.両者の間に位置する知念層は,島尻層群と琉球層群との中間的な岩相を示す.この「泥海(島尻層群)」から「サンゴ海(琉球層群)」への岩相変化は,琉球列島の背弧海盆すなわち沖縄トラフの形成により,黒潮が背弧側へ流入したことに関連していると考えられている.我々は,沖縄本島南部で掘削された「南城R1(堀止深度2119.49 m)」の試料を用いて,島尻層群(豊見城層・与那原層)の石灰質ナンノ化石生層序の確立と石灰質ナンノ化石群集解析と岩相層序に基づいた後期中新世から後期鮮新世の古海洋環境復元を目的に研究を行った.その結果,4つの化石基準面が認定され,豊見城層は上部中新統(NN11~NN12;CN9a~CN10a–CN10b)に,与那原層は上部中新統から上部鮮新統(NN12~NN16;CN10a–CN10b~CN12)に対比されることが判明した.豊見城層および与那原層下部堆積時(>8.3~5.3 Ma)は,低いコッコリス生産量とSphenolithus abiesの多産から,貧栄養環境であったと推定される.与那原層中部堆積時(5.3~3.5 Ma)は,コッコリス生産量の増加およびsmall Reticulofenestra spp. の多産から,富栄養環境への変化が想定される.与那原層上部堆積時(3.5~2.9 Ma)は石灰質ナンノ化石の産出頻度が低いことより,再び貧栄養環境へ戻ったと考えられる.島尻層群の堆積相および底生有孔虫に関する先行研究の結果を併せて考察すると,以上の海洋環境の変化は堆積盆地の浅海化に起因すると結論される.これに加え,2013年8月から沖縄本島那覇市奥武山および南城市大里の2地点で実施された地下埋蔵天然ガス試掘調査で取得したカッティング試料の石灰質ナンノ化石群集を検討する機会をえたので,その成果を併せて報告する.