日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS30_29AM1] 古気候・古海洋変動

2014年4月29日(火) 09:00 〜 10:45 501 (5F)

コンビーナ:*山田 和芳(早稲田大学人間科学学術院)、池原 実(高知大学海洋コア総合研究センター)、入野 智久(北海道大学 大学院地球環境科学研究院)、岡崎 裕典(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、北場 育子(神戸大学内海域環境教育研究センター)、北村 晃寿(静岡大学理学部地球科学教室)、佐野 雅規(総合地球環境学研究所)、多田 隆治(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、吉森 正和(東京大学大気海洋研究所)、座長:吉森 正和(東京大学大気海洋研究所)

09:30 〜 09:45

[MIS30-26] 珪藻化石群集変動解析による北西太平洋およびベーリング海における鮮新世-更新世古海洋環境復元

*加藤 悠爾1小野寺 丈尚太郎2須藤 斎1寺石 瑛人3高橋 孝三4 (1.名古屋大学大学院 環境学研究科、2.海洋研究開発機構 地球環境変動領域、3.NTTコムウェア、4.北星学園大学 社会福祉学部)

キーワード:珪藻, 古海洋, 亜寒帯太平洋, ベーリング海, IODP Expedition 323, ODP Leg 145

1.はじめに本研究では,北西太平洋域の堆積物試料(ODP Leg 145 Hole 884B)に含まれる珪藻化石の種構成の変化を2.5-0 Maについて分析し,本海域における古海洋環境の復元を試みた.さらに,ベーリング海の堆積物試料(IODP Exp. 323 Holes U1341B, U1343E)に含まれる珪藻化石分析結果(Onodera et al., in press; Teraishi et al., in press)との比較を行い,ベーリング海・亜寒帯太平洋域全体の海洋環境の変化について考察した.2.研究方法Hole 884Bでは,2.5-0 Maの層準について3 mごと(解像度:~40 kyr)にサンプリングを行い,各サンプルにつき珪藻殻が計100殻になるまで計数した.古環境推定にあたっては,Sancetta (1982)などを参照しながら,環境指標種をCold-water(冷水種), Sea-ice related(海氷関連種), Temperate-water(温水種), Neritic(沿岸種), Open-ocean(外洋種)の5つに分類し,2.5-0 Maにおける各環境指標種の産出数比の変化を調べた.年代モデルには,珪藻化石および古地磁気のdatumを用いた.3.北西太平洋亜寒帯域(Site 884)の古海洋全体として冷水種・外洋種が多く,一方で海氷種はほとんど産出しないことから,本海域は,海氷は張らないものの寒冷で,かつ沿岸水との混合があまりない海洋環境であったと推定される.また,約2.2 Maにおける温水種の急減は,Koizumi (1985) などで報告された寒冷化イベントを,約2.3 Maから見られた海氷種や沿岸種の散発的な産出は,亜寒帯水塊の段階的な発達(Sancetta and Silvestri, 1986)を反映していると考えられる. 4.ベーリング海(Sites U1341, U1343)との比較全てのサイトで,温水種の急減が見られたが(約2 Ma),そのタイミングは三者で異なり,南に位置するSite 884で最も早く(2.2 Ma),Site U1341 (2.1 Ma) とU1343 (1.9 Ma) がそれに続いた.この差異は,寒冷化に伴う亜寒帯循環の強化によるものと考えられる.具体的には,1) 東カムチャツカ海流によるSite 884への寒冷水供給が強化,2) 一方で,比較的温暖なアラスカンストリーム起源の海水供給が減少,3) Site U1341へのNear Strait経由の温暖水供給が減少,というシナリオを考えている.