日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS31_2AM1] 分野横断的連携による総合的な地球温暖化研究に向けて

2014年5月2日(金) 09:00 〜 10:45 511 (5F)

コンビーナ:*立入 郁(海洋研究開発機構)、河宮 未知生(海洋研究開発機構)、筒井 純一(電力中央研究所)、座長:河宮 未知生(海洋研究開発機構)

09:15 〜 09:30

[MIS31-02] 気候変動研究における気候・影響・社会経済の並行プロセスと統合プロセス

*江守 正多1 (1.国立環境研究所)

国連気候変動枠組条約における国際交渉では、温暖化対策の長期目標として「産業化前を基準に世界の平均気温上昇を2℃以内に抑える観点から対策を行う必要がある」という認識が合意されている。昨年9月に発表されたIPCC第1作業部会の第5次評価報告書によれば、この目標を50%の可能性で達成するためには、人類が今から将来にわたって排出する二酸化炭素の総量を300 GtC程度に抑える必要がある。現在の世界の排出量は年間10 GtC程度であるので、仮に現在の排出量が毎年続くとした場合で、わずか30年でこの制限に達してしまう。「2℃以内」の目標を本気で目指すのであれば、世界の二酸化炭素排出量をできるだけ速やかに減少に転じさせ、今世紀末を目途にゼロに近づけていかねばならない。温暖化の影響についても対策についても多くの研究があるが、それらの全体像には大きな不確実性がある。世界平均気温で「2℃」を超える温暖化が人間社会や生態系にどんなリスクをもたらすかも、徹底的な排出削減対策が社会経済にどんなリスクをもたらすのかも、現時点で正確に把握できる人はいない。また、そのようなリスクの発現の仕方は国、地域、世代や様々な社会属性によって異なり、温暖化を放置したとしても、徹底的に対策をしたとしても、それぞれの場合で「得をする」人と「損をする」人が生じるだろう。さらに、温暖化の影響をどう捉えるかは単なる損得の問題ではなく、生態系や途上国や将来世代に押し付けられたリスクにどの程度心を痛めるかといった、人によって異なる価値判断が関わってくる。気候変動の科学は、このような不確実で、複雑で、曖昧なリスク問題についての社会の意思決定に必要な科学的情報を提供する役目がある。これに向けて、気候、影響、社会経済の3つの研究コミュニティー(IPCCの第一、第二、第三作業部会にそれぞれ対応)で相互連携を図ろうとする流れが、数年前より国際的に本格化してきている。2010年ごろにRCP(代表的濃度経路)の議論を通して企図された3つのコミュニティーの並行プロセスと統合プロセスというアイデアを、IPCC 第5次評価報告書が発表された現時点から振り返り、プロセスの達成度と今後の展望を議論する。