日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS32_30PM1] 地球掘削科学

2014年4月30日(水) 14:15 〜 16:00 416 (4F)

コンビーナ:*斎藤 実篤(独立行政法人海洋研究開発機構)、池原 研(産業技術総合研究所地質情報研究部門)、廣野 哲朗(大阪大学 大学院 理学研究科 宇宙地球科学専攻)、梅津 慶太(独立行政法人海洋研究開発機構)、座長:池原 研(産業技術総合研究所地質情報研究部門)、阿部 なつ江(独立行政法人海洋研究開発機構地球内部ダイナミクス領域)

14:45 〜 15:00

[MIS32-17] アラスカ湾堆積物から探る北米氷床の消長と海洋環境動態‐IODP第341次アラスカ湾掘削の船上分析結果概要

*須藤 斎1朝日 博史2福村 朱美3喜岡 新4今野 進5松崎 賢史6中村 淳路4小嶋 孝徳7Expedition 341 Scientists 8 (1.名古屋大学大学院・環境学研究科、2.釜山大学・海洋学部、3.北海道大学大学院・理学研究院、4.東京大学大学院・理学系研究科、5.九州大学大学院・理学研究院、6.東北大学・学術資源研究公開センター、7.東京大学大学院・新領域創成科学研究科、8.(none))

キーワード:IODP Exp. 341, アラスカ湾, 陸上・海洋古環境, 氷床

アラスカ湾周辺域はプレートの沈み込み帯にあり,活発な造山運動や巨大な氷河の存在で良く知られている地域である.造山活動や氷河により削剥された多量の陸上堆積物は,海洋に栄養塩を供給し,珪質・炭酸塩殻を持つ植物・動物プランクトン(本海域の主要な基礎生産者である珪藻や放散虫,有孔虫など)が多く生息し,アラスカ湾の豊かな生態系を支えている. 約300万年前以降,北米大陸には大規模な氷床が形成され始め,その地域環境やその後の全球的な寒冷化へ強く影響を与えてきたと考えられている.一方で,北米氷床の一つであるアラスカ湾辺縁部を覆うコルディレラ氷床や氷河によって削剥された陸上物質は,陸域の堆積・運搬・供給システムにほとんど影響を受けずに沿岸域に供給される.したがって,アラスカ湾沿岸域の堆積物は,コルディレラ氷床の変動史を直接記録していると予想される.これまでに得られた海底堆積物試料は,アラスカ湾沿岸域の堆積速度が極めて速かったため,最終氷期以降のものに留まっていた.北米大陸氷床の消長と海洋環境変動,そして全球気候変動の関係を地質学的・古海洋学的見地から明らかにするためには,少なくとも氷期‐間氷期スケールの変動を捕らえる時系列データが不足している問題がある. このような背景から,2013年5月から7月に行われたIODP第341次航海では,アラスカ南方陸棚を横切るセクションにおいて後期新生代の高解像度堆積物記録から,テクトニックに駆動される造山運動のプロセスや氷河プロセス,そしてそれらとの北太平洋や全球的な気候変動との関連性を調査する目的で,陸棚から陸上氷河の縁辺部まで横断的に掘削が行われた.現在,これらから得られた堆積物コアを用いて,新第三紀におけるコルディレラ氷床の発達史の立証や,陸棚縁辺堆積物の堆積史と氷河記録の解明,永年変化と地磁気極性の反転をコントロールするプロセスの評価と高時間分解能による地球磁場の挙動の解明などを目的として分析が進められている. 本発表では,まだモラトリアム中であるために詳細は述べられないが,船上分析結果の概要を紹介する.まず,本掘削により,不完全ではあるが珪藻と放散虫化石生層序年代の決定,及び古地磁気年代との対比がなされ,数百万年間の,もしくは氷期-間氷期スケールの変動を補えることができると期待される堆積物試料を採取できたことが分かっている.本掘削で得られた多くの堆積物試料は,極めて速い堆積速度を記録しており,本掘削での最大の成果の一つであると言えよう.さらに,物性測定や検鏡によって,多くの氷河成堆積物(漂流岩屑,Ice-rafted debris:IRDなど)が含まれていること,有機・無機化学分析によって,氷床の発達に応じて大量の陸源砕屑物が運搬されてきていることなども明らかとなった. また,一般的な北太平洋高緯度の堆積物中の化石保存傾向から,本海域には炭酸塩堆積物はあまり保存されていないと予想されていたが,本航海で得られた堆積物試料中には,有孔虫化石が多量かつ連続的に含まれていた.このことにより,これまで北太平洋高緯度域において掘削された堆積物試料中の有孔虫化石産出が少なかったために,酸素同位体比変動の連続データが決定的に不足していたという問題点を解決できると期待される.さらに,氷期‐間氷期スケールの海洋・陸上環境変動復元を行う上で最も重要な堆積物試料の年代軸を正確に構築するための有孔虫殻の酸素同位体比曲線を,北太平洋亜寒帯域で初めて連続的に得られる可能性がある.ここで得られた「北太平洋酸素同位体比曲線」を,珪質微化石生層序や古地磁気層序の結果と組み合わせることにより,より正確な年代の決定を行うことができるであろう.今後,これらから構築された年代軸を元に堆積物試料の分析を進め,アラスカ湾近傍に発達するプレートの沈み込みに伴う造山運動に影響を受ける北米大陸氷床の変動史を明らかにし,氷床により削剥された陸上堆積物の海洋への供給量変動や,その海洋生態系への影響と変遷史の詳細な復元を行う予定である.