日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS32_30PM1] 地球掘削科学

2014年4月30日(水) 14:15 〜 16:00 416 (4F)

コンビーナ:*斎藤 実篤(独立行政法人海洋研究開発機構)、池原 研(産業技術総合研究所地質情報研究部門)、廣野 哲朗(大阪大学 大学院 理学研究科 宇宙地球科学専攻)、梅津 慶太(独立行政法人海洋研究開発機構)、座長:池原 研(産業技術総合研究所地質情報研究部門)、阿部 なつ江(独立行政法人海洋研究開発機構地球内部ダイナミクス領域)

15:45 〜 16:00

[MIS32-P01_PG] IODP Exp.337下北半島沖三陸沖堆積盆地試料の水理特性と間隙構造

ポスター講演3分口頭発表枠

*谷川 亘1多田井 修2稲垣 史生1Kai-Uwe Hinrichs3久保 雄介4大友 陽子1 (1.海洋研究開発機構高知コア研究所、2.株式会社マリンワークジャパン、3.University of Bremen、4.海洋研究開発機構)

キーワード:透水係数, 水ポテンシャル, 水分活性, 三陸沖盆地, IODP expedition 337, biomass

海底下深部堆積物中の微生物のバイオマスは物理的、化学的、生物的要因によって支配される。地下深部環境ほど微生物の数は減少し、その変動量や微生物生息限界深度はこうした要因により規制される。地下深部では堆積物は圧密・固化作用を受けるため、堆積物の間隙率、透水性、間隙径は減少するが、これら物理的要因と地下生物圏バイオマスとの関係はわかっていない。そこで本研究では、国際統合掘削計画(IODP)第337次研究航海および「ちきゅう」慣熟航海(CK06-06)によって採取された下北半島沖の三陸沖堆積盆地深部の堆積物の水理学的な物性測定(水ポテンシャル、透水係数、間隙率)を行い、物性の深度分布を評価した。特に、水ポテンシャルが地下生物圏バイオマスの指標になるか検討を行った。
水ポテンシャルの測定は市販の水分活性装置(Novasina社:LabTouch-aw、Dekagon社:WT4T)を用いて測定した。高知コアセンターのコア保管庫から採取した直後、およびその試料を塩水(35‰)で再飽和した環境下でコア試料の水ポテンシャルを測定した。海底下深度500mより浅い水ポテンシャルは-2.7~-4.1 MPa(水分活性Aw=0.97~0.98)を示し、また1200m以深では-2.7~-5.5 MPa(Aw=0.96~0.98)のやや幅広い値を示した。水ポテンシャルと間隙率もしくは深度は強い相関は認められなかったが、間隙率が低い、もしくは深度が深い試料は水ポテンシャルが小さくなる傾向が認められた。
コア試料を円柱形(外径20mm、長さ5~20mm)に整形して、封圧1-42MPa(水圧1-2 MPa)で室温下において透水係数の測定を行った。間隙流体は蒸留水を用いて試料下流側を1MPaの一定圧に制御して、試料上流側を1.2-1.8MPaに制御して測定を行った。いずれの試料も有効圧の増加とともに透水係数が減少し、その変化量は有効圧の増加とともに小さくなった。また、減圧時の透水係数の変化は非常に小さかった。砂岩は泥岩と比較して1~2桁低い値を示し、泥岩については堆積深度の大きい試料が低い透水係数を示した。また、有効圧10MPaほどで頁岩の透水係数の変化がほとんど認められなくなった。
現段階では、水ポテンシャルとバイオマスの関係は明らかではない。水ポテンシャルは間隙構造や堆積物表面の吸着特性とも関係することが考えられるため、今後、間隙分布と粘土鉱物含有量の測定を通して、海底下深部微生物のバイオマスと物理的環境との関係を明らかにしたい。