日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS35_2PM2] ジオパーク

2014年5月2日(金) 16:15 〜 17:30 211 (2F)

コンビーナ:*目代 邦康(自然保護助成基金)、有馬 貴之(首都大学東京都市環境科学研究科)、大野 希一(島原半島ジオパーク推進連絡協議会)、平松 良浩(金沢大学理工研究域自然システム学系)、尾方 隆幸(琉球大学教育学部)、渡辺 真人(産業技術総合研究所地質情報研究部門)、座長:大野 希一(島原半島ジオパーク推進連絡協議会)

16:45 〜 17:00

[MIS35-17] 三島村ジオパーク計画の現状とこれから

*大岩根 尚1 (1.鹿児島県三島村)

キーワード:ジオパーク, 鬼界カルデラ

鹿児島県三島村は、特異な自然・歴史・文化的背景をもち、これらを活かした地域づくりの目標として日本ジオパークへの認定を目指している。本村の観光素材になり得る地質学的な背景として硫黄島を例にとると、7300年前の大噴火で形成された鬼界カルデラのカルデラ壁が島内を通過している点、その活発な熱水活動による変色海水が島の周囲いたるところに見られる点、活火山である硫黄岳を有し活発な噴気活動、硫黄の析出が見られる点などが挙げられる。このような地質学的背景に関連して、変色海水中にサンゴの生育が見られる点、噴気から析出する硫黄が採掘され1000年ほど前から中国との交易が行われてきた点、さらに平家物語の舞台となってきた点など、生態的、歴史的背景を有す。さらに、文化的背景としては、硫黄島が歌舞伎「俊寛」の舞台でもあり十八代目中村勘三郎丈が来島講演を行ったり、高名なジャンベ奏者とジャンベを通じた国際交流をしたりといった稀有な素材を有している。しかしこのような複数の分野での素晴らしい観光素材を備えていながら、本村はこれらを有機的に結びつけたツアーや情報発信を行ってこなかった。そこで現在、これらを活用した観光化の目標として日本ジオパークへの認定を目指している。本村のジオパーク計画において問題となっているのは、人口の少なさである。村の総人口は350人ほどであるが、3島に分かれているために各島の人が100人程度である上に高齢化もあり、実際に活動できる人員は数十人である。さらに島民は各自の職務やコミュニティ維持のために必要な地区の行事に時間を割くため、観光客に対応する時間を十分には確保できない。このため、これまで三島村へのツアーを催行する際には、島外の講師をガイドとして招いて対応してきた。しかしこの場合、村との深い関わりのないツアーガイドでもあるため、村のもつ魅力を充分に伝えきれないことがあった。また、この仕組みでは自立的・持続的な観光ツアーには発展しにくいという問題があった。これを解決するため本村では、地質学の研究者である専門職員を雇用し、業務の一つとしてツアーガイドを行うことにした。専門職員は、島民に聞き込みを行って観光素材の収集をし、一方でこれまでに行われてきた学術研究を整理し、両者を結びつけた新しいツアーの構築を図っている。また、本村での独自の試みとして、島へ渡るための定期航路上の4時間を利用して、三島村の自然、歴史、文化の解説や、航路上から見える霧島、桜島、錦江湾といった沿岸地域の解説を行うようにしている。ツアーは大変好評で、キャンセル待ちが出るほどになってきている。今後、定期的にツアーを行って交流人口を増やし、船の出る鹿児島市内からのツアーガイドの育成を計画している。これにより、実質的な島民の負担が少ない形でのツアーを催行し、人口の少なさを補ってゆくことを目標としている。