18:15 〜 19:30
[MIS35-P03] 銚子ジオパークの屏風ヶ浦ジオサイトを利用した体験型の理科・環境教育の効果
キーワード:ジオパーク, 銚子, 理科教育, テフラ, 屏風ヶ浦, ライフサイクル思考
1.本研究の教育モデル:地域へのライフサイクル思考の導入
本研究では、銚子ジオパークを利用して、そこに「ライフサイクル思考」の考え方を取り入れた独自の「理科・環境教育プログラム」の開発を目指している。ここで、「ライフサイクル思考」とは、「目の前の「つかう(現在)」段階の環境負荷だけでなく、「つくる(過去)」段階や「すてる(未来)」段階での環境影響も追跡し、システム全体の環境負荷をも考慮する思考法である。
ライフサイクル思考を地域に導入する場合、過去の「地質学的な土地の成り立ち」と、現在の「特産物の生産などの土地利用」、そして未来の「地域環境の持続的な保全」を考える。著者は、これまで現在の土地利用の例として、地域の自然環境と関係の深い特産物について、それらの環境負荷(GHG排出量)をライフサイクルアセスメント(LCA)の手法に基づいて定量的に評価する「環境教育プログラム」を開発し、実践し、高い環境教育効果を確認した。本研究では、ここに過去の「地質学的な土地の成り立ち」に関する「理科教育プログラム」を付加することで、地元の自然環境を理解し、地元への愛着を醸成し、その環境を守る意識による具体的な環境配慮行動の発現を目指している。そして、銚子ジオパークは、この理科・環境教育プログラムの実践の場として位置づけている。
本研究では、地域へライフサイクル思考を拡張した場合の(1)「つくる(地域の成り立ち)」段階に相当する理科教育プログラムの内容を紹介し、(2)地元の中学1年生に対して実施した結果を報告し、(3)プログラムの実施前後の質問紙調査と実施後の自由記述文の分析から明らかとなった効果と課題について報告する。
2.「つくる(地域の成り立ち)」段階の理科教育プログラムの内容と実施方法
本プログラムでは、平成24年度から改訂された新学習指導要領の中学校理科における「地層」の単元の学習内容に正確に則りつつ、今まで実施が難しかった地層の野外観察や、教室における火山灰等の標本観察などを取り入れた内容を1日で行う(以後、「1日型の」)理科学習プログラムとした。
2.1 1日型の理科学習プログラムの実施概要
1日型の理科学習プログラムの実践は、銚子市立第三中学校(千葉県銚子市東小川町2348)の1年生2クラス(54名)に対して、2013年7月2日に行った。講師は著者が担当し、補助として大学生4名と銚子ジオパーク推進市民の会の一般会員5名が参加した。午前中に屏風ヶ浦ジオサイトを構成する地層の野外見学は実施した。現地では、ワークシートを配布し、露頭全体のスケッチ(露頭図)、地層のスケッチ(柱状図)を作成し、少量の火山灰の地層を採取した。その後、屏風ヶ浦遊歩道を銚子マリーナ海水浴場の駐車場まで歩きながら、数カ所の観察地点で、土地の成り立ちや地域環境問題についての説明を行った。午後は、銚子市青少年文化会館に移動し、書き込み式の資料を配付して、屏風ヶ浦の成り立ちに関する講義と、採取した火山灰の実体顕微鏡での観察、地元を作る堆積岩や化石標本の観察を行い、最後にまとめを行った。
さらに、本プログラムを実施した翌週の理科の授業(3校時分)では、受講内容や感想等をA1版のポスターにまとめた。このポスターは、銚子市青少年文化会館に展示した。
2.2 質問紙調査と感想文
本研究では、地元の中学生に、銚子ジオパークを周知し、その地質学的な価値を理解させることで、郷土愛を育むことを目指した。このため、質問紙調査では本理科教育プログラムの実施前後で、銚子ジオパークへの関心やイメージがどのように変化したかに注目した。さらに、本プログラム実施後には、授業理解と印象に残った点、不明だった点、その他の感想について、自由記述の「感想」文の提出を求めた。
3.主な結果
本プログラム実施後に行った自由記述の「感想」文のキーワード分析からは、本プログラムが、(1)半数を超える生徒にとって十分に理解可能であり、(2)学習内容(地層、堆積岩、化石など)が効果的に生徒の印象に残る内容であることが明らかとなった。加えて、本プログラム実施前後の質問紙調査結果からは、(3)ジオパークへの興味が増すと共に、ジオパークの活動への参加意図が高まり、(4)屏風ヶ浦などのジオサイトをより身近で、地元の誇りとなるような対象として感じるようになり、(5)銚子ジオパークに対する関心や、よいイメージを高まることが示された。その結果、地域への愛着が増進される可能性が示唆された。
しかし、その一方で、自由記述の「感想」文からは、野外見学や露頭の観察に十分な時間を確保する必要があることや、外部講師(大学教員や一般市民)が説明や授業を行う場合には、特に授業の進行速度に注意を払い、十分な理解が得られるように心がける必要があることが示された。
本研究では、銚子ジオパークを利用して、そこに「ライフサイクル思考」の考え方を取り入れた独自の「理科・環境教育プログラム」の開発を目指している。ここで、「ライフサイクル思考」とは、「目の前の「つかう(現在)」段階の環境負荷だけでなく、「つくる(過去)」段階や「すてる(未来)」段階での環境影響も追跡し、システム全体の環境負荷をも考慮する思考法である。
ライフサイクル思考を地域に導入する場合、過去の「地質学的な土地の成り立ち」と、現在の「特産物の生産などの土地利用」、そして未来の「地域環境の持続的な保全」を考える。著者は、これまで現在の土地利用の例として、地域の自然環境と関係の深い特産物について、それらの環境負荷(GHG排出量)をライフサイクルアセスメント(LCA)の手法に基づいて定量的に評価する「環境教育プログラム」を開発し、実践し、高い環境教育効果を確認した。本研究では、ここに過去の「地質学的な土地の成り立ち」に関する「理科教育プログラム」を付加することで、地元の自然環境を理解し、地元への愛着を醸成し、その環境を守る意識による具体的な環境配慮行動の発現を目指している。そして、銚子ジオパークは、この理科・環境教育プログラムの実践の場として位置づけている。
本研究では、地域へライフサイクル思考を拡張した場合の(1)「つくる(地域の成り立ち)」段階に相当する理科教育プログラムの内容を紹介し、(2)地元の中学1年生に対して実施した結果を報告し、(3)プログラムの実施前後の質問紙調査と実施後の自由記述文の分析から明らかとなった効果と課題について報告する。
2.「つくる(地域の成り立ち)」段階の理科教育プログラムの内容と実施方法
本プログラムでは、平成24年度から改訂された新学習指導要領の中学校理科における「地層」の単元の学習内容に正確に則りつつ、今まで実施が難しかった地層の野外観察や、教室における火山灰等の標本観察などを取り入れた内容を1日で行う(以後、「1日型の」)理科学習プログラムとした。
2.1 1日型の理科学習プログラムの実施概要
1日型の理科学習プログラムの実践は、銚子市立第三中学校(千葉県銚子市東小川町2348)の1年生2クラス(54名)に対して、2013年7月2日に行った。講師は著者が担当し、補助として大学生4名と銚子ジオパーク推進市民の会の一般会員5名が参加した。午前中に屏風ヶ浦ジオサイトを構成する地層の野外見学は実施した。現地では、ワークシートを配布し、露頭全体のスケッチ(露頭図)、地層のスケッチ(柱状図)を作成し、少量の火山灰の地層を採取した。その後、屏風ヶ浦遊歩道を銚子マリーナ海水浴場の駐車場まで歩きながら、数カ所の観察地点で、土地の成り立ちや地域環境問題についての説明を行った。午後は、銚子市青少年文化会館に移動し、書き込み式の資料を配付して、屏風ヶ浦の成り立ちに関する講義と、採取した火山灰の実体顕微鏡での観察、地元を作る堆積岩や化石標本の観察を行い、最後にまとめを行った。
さらに、本プログラムを実施した翌週の理科の授業(3校時分)では、受講内容や感想等をA1版のポスターにまとめた。このポスターは、銚子市青少年文化会館に展示した。
2.2 質問紙調査と感想文
本研究では、地元の中学生に、銚子ジオパークを周知し、その地質学的な価値を理解させることで、郷土愛を育むことを目指した。このため、質問紙調査では本理科教育プログラムの実施前後で、銚子ジオパークへの関心やイメージがどのように変化したかに注目した。さらに、本プログラム実施後には、授業理解と印象に残った点、不明だった点、その他の感想について、自由記述の「感想」文の提出を求めた。
3.主な結果
本プログラム実施後に行った自由記述の「感想」文のキーワード分析からは、本プログラムが、(1)半数を超える生徒にとって十分に理解可能であり、(2)学習内容(地層、堆積岩、化石など)が効果的に生徒の印象に残る内容であることが明らかとなった。加えて、本プログラム実施前後の質問紙調査結果からは、(3)ジオパークへの興味が増すと共に、ジオパークの活動への参加意図が高まり、(4)屏風ヶ浦などのジオサイトをより身近で、地元の誇りとなるような対象として感じるようになり、(5)銚子ジオパークに対する関心や、よいイメージを高まることが示された。その結果、地域への愛着が増進される可能性が示唆された。
しかし、その一方で、自由記述の「感想」文からは、野外見学や露頭の観察に十分な時間を確保する必要があることや、外部講師(大学教員や一般市民)が説明や授業を行う場合には、特に授業の進行速度に注意を払い、十分な理解が得られるように心がける必要があることが示された。